一昔前までは手紙と電話が主な伝達手段でしたが、近年は電子メールやLINEなど、手書きすることなく他人に情報を送る手段がたくさんあるため、手書きをする機会が少なくなっていますよね。
また、ちょっとしたメモであってもスマホのノート機能を使う人も多いのではないでしょうか? 手書きをせずとも1週間は過ごせるだろう、と思わせるような社会ですが、手書きにはさまざまなメリットがあるのです。
内容理解度はタイピングより手書き
タイピングと手書きとでは、どちらが楽ですか? タイピングの方が楽だと思う人の方が多いのではないでしょうか?
手書きをする場合、ペンを握って紙に押し当てるという操作が必要で、これは長時間続くと結構な負担になります。一方、タイピングはキーボードを押すという単純な作業で済むので疲れにくく、長時間の作業もそこまで負担にはなりませんよね。
また、書く内容を間違えた場合、手書きだと消しゴムで消すという作業が必要ですが、タイピングはキーをひとつ押すだけで済み、とても簡単です。
しかし、手書きは負担が多い分、書いた内容の定着を図ることができます。雑誌「Psychologial Science」で発表された論文によると、ノートパソコンで講義のノートをとった生徒よりも、手書きでノートをとった生徒の方が内容理解度が高かったそう。これは、手書きをする際、書き手は一度内容を反芻するからだと結論づけられています。
つまり、手書きすることは「負担」といっても、「“為になる”負担」なのです。
漢字学習にも欠かせない
突然ですが、「募集」という字をきちんと書けますか?
「募」の字の下の部分は「刀」ではなく「力」です。こういう細かいところには、自分で実際書いてみないとなかなか注意が向きません。
パソコンやスマホは読み方さえ分かれば、正しい漢字をいつでも表示してくれます。ありがたいことですが、このせいで漢字を曖昧にしか覚えていないかもしれません。
たとえ手書きをする機会が少なくなっても、全く手書きしないことはないのが現状です。例えば、会議等でホワイトボードに課題や問題点を書くとき、その場にいる参加者全員があなたが書く文字に注目します。そういったときに間違った字を書いてしまうのは避けたいものですね。
奨学金や入学志望書などをわざわざ手書きで書かせるところもあります。日頃からきちんと手書きで文章を書けるようにしておくのがベストでしょう。
脳の活性化。発想力の強化に。
手書きという作業は、脳の多くの部分を活性化します。読む際に活性化される部分も手で文字を書いているときには反応しているのです。これは文字を打つ際には見られないこと。
これは、聡明な頭脳を維持するのに一役買います。歳をとるにつれ、思考力などは衰えていきがちですが、その防止に手書きを勧める医者も多くいるのです。
クイズやパズルなど、脳の体操としていろいろなことが推奨されていますが、単純にたくさん文字を書くことから始めるのはどうでしょうか?
また、ワシントン大学のVirginia Berninger教授の研究では、小学生の作文能力に差が出たと発表しています。キーボードを使って作文した子供よりも、自分の手で文字を書いた子供の方がより多くの考えを書き出したそう。
手書きをするというのは、発想力を培うことにも繋がるのです。いつもスマホでメモを取っている人は、ノートに手書きでメモを取ってみてください。新しいアイディアが浮かぶかもしれませんよ。
*** テクノロジーが進歩し、身の回りに便利な電子機器が増えるにつれ、実際に自分の手で文字を書くという機会は減っています。しかし、私たちが思っている以上に手書きには多くのメリットがあります。ぜひ、自分で文字を書くという作業を大事にしてくださいね。
(参考) The Guardian|Handwriting vs typing: is the pen still mightier than the keyboard? The Wall Street Journal|How Handwriting Trains the Brain Lifehack|7 Reasons Writing Is So Good for Our Brains