“上司に叱られたくない……。” これは多くの若手ビジネスパーソンが切実に思っていることではないでしょうか。
もちろん私たちは叱られないために仕事をするのではありませんよね。自らが持つスキルを存分に活かして社会に貢献したい、あるいは掲げた目標を達成してさらなるキャリアアップを図りたい、など仕事に対して大きな意気込みを抱いている人もたくさんいるはず。だからこそ、「叱られたくない」というネガティブな感情にとらわれるあまり意欲が削がれ、行動の幅が狭まってしまってはいけませんよね。
そこで今回は、叱られずに自由度高く仕事をするためのコツについて紹介します。上司が部下を叱る理由を探り、そこから新しい行動の仕方を考えることで、仕事をまわしていく理想的な方法が浮かびあがってきます。
なぜ部下は仕事で叱られるのか?
若手ビジネスパーソンが仕事で叱られる原因として、“「報告・連絡・相談」を怠っているから”というのがよく挙げられます。この通称「ホウ・レン・ソウ」は、組織における上司と部下の間でのコミュニケーションの際には欠かすことのできないものであり、若手ビジネスパーソンが絶対に身につけておくべき基本スキルであることはいうまでもありませんね。
しかしこのホウ・レン・ソウ、きちんと実行するのは意外と難しいもの。そしてこれらを怠ってしまうと、例えば次のように様々な問題が発生してしまいます。
・指示された業務の進捗を部下が報告しない→上司が不安に陥り、管理コストがかかる
・プロジェクトの変更点を部下が連絡していない→上司との認識にズレが生じ、あとで手直しが必要になってくる
・部下が誰にも相談せずにひとりでプロジェクトを進めた→クオリティが低下し、最終的に修正する必要が出てくる
心当たりのある人も多いのではないでしょうか。部下がホウ・レン・ソウをおろそかにすると、会社にはムダな時間や労力、お金がかかってしまうのです。上司はそのムダを叱っているのです。
「ホウ・レン・ソウ」に提案を加えよう
ホウ・レン・ソウの重要性はよくわかりましたね。しかし、それではホウ・レン・ソウさえ徹底しておけばよいのかというと、決してそうではありません。なぜならば、場合によっては会社に別のコストをかけてしまうこともあるからです。
例えば、あなたが報告や連絡、相談“しか”しない部下だとしましょう。コミュニケーションは毎日きちんと取れている、指示されたタスクも毎回間違いのないように仕上げてくれる。一見すると上司にとって完璧な部下のようにも思えますが、じつはその裏側で、上司が都度都度あなたの次の仕事を用意してあげていることに気づいているでしょうか?
上司は上司で別の仕事があるため、あなたよりもずっと忙しいはず。部下をマネジメントするのも上司の仕事とはいえ、普段の忙しさの中に、あなたに対する“必要以上に細かすぎる”マネジメント業務が加わったらどうなるでしょう。上司が自分の時間を消費してまで、毎回あなたの次の仕事を決めていたら、それはすなわち会社にとってのコストにもなってしまうのです。
株式会社LINEの元CEOである森川亮氏も、著書『シンプルに考える』の中で、「仕事は自分の意志で取りに行くものであり、与えられるものではない」と、活躍する人の仕事観について語っています。
だからあなたも、報告・連絡・相談で終わらせるのではなく、自分にできる仕事、やりたい仕事を普段から職場で探してみてはいかがでしょうか。つまり上司に「自分はこうするべきだと思いますが、いかがでしょうか」といった提案をつけ加えるべきなのです。そうすれば上司も、あなたがこれから何をしようとしているかを把握できるので不安にならず、フィードバックもしてあげられますよね。さしずめ「ホウ・レン・ソウ・テイ」といったところでしょうか。
「報告、連絡、相談」→「提案」→「報告、連絡、相談」→「提案」→「報告、連絡、相談」→ ……
このサイクルを繰り返していくのです。自分のやりたいことを提案しつつ、勝手に仕事を進めてまわりに迷惑をかけないように、大事なところで上司に報告・連絡・相談をする。これこそが、叱られずに自由度高く仕事をする有効な方法ではないでしょうか。
「ホウ・レン・ソウ・テイ」を実践するには
では最後に、ホウ・レン・ソウ・テイを実践するコツを紹介します。ポイントは、報告や連絡、相談のあとに「で、どうするの?」と上司に聞かれた場合を想像することです。つまりホウ・レン・ソウを行う問題に対して、対案や自分の見解を示すのです。例えば以下のような例が挙げられます。
×:クライアントに依頼を断られたことを上司に連絡する。 ○:クライアントに依頼を断られたことを上司に連絡する。+ 改めて合意を得られそうな条件を考えて伝える。合意を得られる見込みが薄い場合、ほかにあたるべき相手を考えて伝える。
×:都合が悪くなり社内会議に出席できなくなった旨を上司に連絡する。 ○:都合が悪くなり社内会議に出席できなくなった旨を上司に連絡する。+ どうしても自分が出席する必要があれば代替の候補日を提案する。出席する必要がなければ自分抜きで進めてもらう。
×:提出する企画の内容を上司に相談する。 ○:提出する企画の内容を上司に相談する。+ 検討中の方向性を伝える。
問題を投げっぱなしにして終わるのではなく、その問題を自分がどうとらえ、今後どうすべきかを伝えるところまでがワンセットです。上司がするであろう反応を予測し、提案という形で先まわりして答えてあげましょう。
*** 「ホウ・レン・ソウ」は当たり前、その一歩先の「ホウ・レン・ソウ・テイ」を意識してみましょう。上司に叱られなくなるのはもちろん、自由度高く上手に仕事をまわせるようになるはずですよ!
(参考) 森川亮著(2015),『シンプルに考える』, ダイヤモンド社 株式会社LIG|きちんと理解しておきたい報連相の重要性とポイントまとめ ダイヤモンド・オンライン|提案が通る人はここが違う! 上司が協力してくれる相談のテクニック NIKKEI STYLE|第1回 ストレスのタネ「報告」を改善、デキる部下・上司を目指す