意見がかみ合わず、仕事が進めにくいと感じたとき、「あーあ、同じ意見の人と仕事できれば効率がいいし、成果も上げられるのに……」と考えてしまうかもしれません。でも、実は、意見の不一致こそが成果をあげる要因なのです。

意見の不一致は必ずある

例えば10人ほどの会議で「何か意見がある方は?」と聞かれ、「ハイあります」「わたしも意見あります!」と発言を競い合う風景は、あまり見られないかもしれません。しかし、全員がまったく同じ意見ということはないはずです。

多くの場合「衝突は避けたい」「何もなければ会議を早く終えられる」「説得力のある発言をする自信がない」といった理由で、数々の意見は押し隠されてしまいます。

もちろん、自分の意見に異論を唱えられたら、あまりいい気はしません。また、人と違う意見を言えば、その人に嫌われてしまうかもと思うでしょう。でも、このままでは適切に検討することも、最適なアプローチも行えず、学びも得ることができないのです。

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多様な意見を聴きパラダイムを修正

スティーブン・R・コヴィー氏が著した『7つの習慣』には、パラダイムというキーワードがでてきます。パラダイムとは物の見方・考え方のこと。例えば休憩時間が終わるまでの残り10分を、ある人は「まだ10分もある」と考え、ある人は「もう10分しかない」と考える違いがあるように、人には十人十色のパラダイムが存在します。

元東レ取締役の佐々木常夫氏は、著書『ひと目でわかる! 誰でもできる! 7つの習慣』の中に、コヴィー氏の「正しいパラダイムを持たないと、人は決して成功を手に入れることはできない」という言葉を記し、そのためにも異なる意見を聴く必要があると述べています。

なぜならば、他者の意見を聴かない限り、私たちは、自分自身のパラダイムを俯瞰できないから。そのため、佐々木氏は東レ時代、できるだけ会議で自分の意見に反論しそうな人物に意見を述べてもらうようにしていたそう。この心がけが「偏ったパラダイム」を「バランスのとれたパラダイム」へと修正してくれるのだとか。

多様な意見が生まれる現場は、そのほかにも、色々な効果をもたらしてくれます。

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異なる意見のぶつけ合いがもたらす効果

ハーバード・ビジネス・レビューの寄稿編集者、エイミー・ギャロ氏は、経営コンサルトとして働いていたとき、意見がかみ合わず扱いにくいと感じていたクライアントの不満を、よく同僚にもらしていたそうです。しかし、たまたまその不満が本人に伝わってしまったとき、その人は「意見の違いは必ずあるものだから、今後は直接言ってほしい」と寛大かつ有益な言葉をくれたといいます。

それでギャロ氏は、自分の経験不足を認識したのだとか。そして、その後いかに多くの人が「異論を唱えることを躊躇」しており、いかに「異論を述べる方法を知らない」かを知ったそうです。そのギャロ氏が、異なる意見のぶつけ合いがもたらす効果として、以下の5つを挙げています。

1.仕事の成果が向上する
意見が対立すれば、その意見ごとに長短を検討せざるを得ないので、その結果、最適なかたちで課題を解決できる。

2.学びを得て成長できる
自分の意見に反論されたり、疑問を呈されたりするのは不快だが、それを取り入れることによって学び、経験も増やせる。

3.人間関係を改善できる
意見をかみ殺したままでは表面上の付き合いになるが、衝突とともに乗り切ればグッと親しくなれる。

4.職場の満足度UP
建設的に意見をぶつけ合える職場環境であれば、仕事に行くのも楽しくなってくる。これは、米キーン大学の「米国人社員と中国人社員に関する研究」でも裏づけられている。

5.仕事現場がより包括的になる
皆が衝突を恐れ、意見を押し隠せばエクスクルーシブ(排他的・閉鎖的)な仕事環境に。しかし、異なる意見をぶつけ合い、それが摩擦につながらなければインクルーシブ(包括的)な仕事環境になる。

ちなみに、『ロットマン・マネージメント』誌の記事には、「等質な集団のほうがパフォーマンスに自信を持っているが、多様性のあるグループのほうが、実際に仕事を完成させることが多い」と書かれているそうです。

自分の意見を言い、異なる意見を受け入れるコツ

そうは言っても、自分の意見を堂々と述べるのは、なかなか難しいですよね。また、自分の考えを他者に否定されたら、不快になってしまうのは仕方ないことです。でも、そんな気持ちをリセットできる、いい言葉があるんですよ。それは、「すべての人間は対等な関係にある」ということ。

『嫌われる勇気』の著者、岸見一郎氏は、オーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーによる心理学の特徴は「あらゆる対人関係は『縦』ではなく『横』の関係にあり、人と人とは対等である」ということだと説明しています。つまり、男性も女性も、先輩も後輩も、上司も部下も、客も店員も、親も子も対等なのです。

例えば同じ学校・仕事・収入など、“明らかに対等な相手”に対し、あなたはどう接するでしょう? 相手に敬意を払いながら、臆せず発言するのではないでしょうか。その心もちを、誰に対しても持てばよいわけです。「仲良く過ごしたければ、互いを対等の人格として扱うべき」とアドラーは主張しています。相手が上司だからといって臆することも、相手が後輩だからといって威張ることも、相手が子供だからといって大人ぶる必要も一切ありません。

それをビジネスの現場に置き換えると、必要なのは、「対等という意識」と「目的が何かという意識」を持つことです。目的を達成するために、もっとも自分が有効だと思う意見を述べ、自分の意見よりも有効かもしれない他者の意見も受け入れましょう。

なお、エイミー・ギャロ氏が伝える「衝突を恐れない気持ちを手に入れる方法」は次のとおりです。

衝突を恐れない気持ちを手に入れる方法

・好かれたいという気持ちを捨てる
――相手に敬意を払いながら意見を述べ、相手の意見も理解しようとすれば、敬意を得られる。大切なのは好感度より敬意。

・全体像を見て把握する
――組織やチーム、取り組んでいるプロジェクトに、どの意見がベストかを最優先することが重要。

・異論を唱えることは「攻撃」や「冷たさ」ではない
――思慮深く、敬意をもって発言すれば、人は違う意見にも耳を傾けるはず。

・模範となる人物を見つける
――自信がなければ、相手の気持ちを害することなく上手に自分の意見を述べ、また人の意見も受け入れられる人をよく観察し、それを自分ができるようになるまで真似る。

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誰と接するにしても、その関係は対等です。そもそも対等でなければ、いい関係は築けないはず。何のために意見を交わすのかを認識し、相手に敬意を払い自分の意見をハッキリと述べ、異なる意見も受け入れられるようになるといいですね。

(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|仕事における意見の不一致は、なぜそこまで重要なのか
佐々木 常夫著,‎フランクリン・コヴィー・ジャパン監修(2015),『ひと目でわかる! 誰でもできる! 7つの習慣』,PHP研究所.
岸見 一郎著(2016),『アドラー「人生の意味の心理学」』,NHK出版.