第一印象は香りで変わる。「もう一度会いたい」と思わせる香りのテクニック

営業職に就くビジネスパーソンの方々は、身なりや言葉づかいなど、印象をよくするための努力を重ねていることでしょう。そこで今回は、また別のテクニックとして「印象力を高める香り」についてご紹介します。“におい”は想像以上に速く強く、相手に印象づくものなのです!

“におい”は本能や感情に作用する

嗅覚研究所代表の外崎肇一氏によれば、嗅覚は五感の中でもっとも原始的なシステムなのだとか。なぜならば、嗅覚は他の五感と違い、ダイレクトに脳の大脳辺縁系に到達するから。大脳辺縁系は、本能的な行動や感情に関わる場所です。

一方、嗅覚以外の五感(視覚・聴覚・味覚・触覚)は、脳のほぼ中央に位置する視床を経由し、大脳皮質に送られ、ある程度整理・統合されたうえで大脳辺縁系へと送られます。大脳皮質は、知覚、随意運動、思考、推理、記憶など、脳の高次機能を司る場所。

この対比から分かるように、“におい”は、見たものや聞こえてくる情報よりも速く、本能や感情に作用します。

“におい”を解釈するメカニズム

私たちが“におい”を解釈するメカニズムは、どのようなものでしょう。

コロンビア大学のリチャード・アクセル博士と、フレッド・ハッチンソン・癌研究センター のリンダ・B・バック博士は、“におい”がどう識別され、どう脳に伝わるかを証明し、2004年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。

その研究によれば、何かの“におい”を嗅ぐと、鼻の奥にある受容体(タンパク質/レセプター)が特定の分子に反応して活性化(興奮)し、それが脳に伝わるのだとか。つまり、やってきた“におい”成分が、ピッタリとフィットする受容体だけが活性化するわけです。そして脳は、どの受容体が活性化したかにより、“におい”を解釈します。

こうしてダイレクトに伝わる感覚は、太古の時代を生きた祖先と同じなのだとか。そして、嗅覚は整理・統合されていない「生」の情報だけに、鮮明な印象が残りやすいそうです。アロマセラピストの和田文緒さんも自身の著書で、「嗅覚は本能や感情を揺さぶる力が強く、反応が速い」と記しています。

なお、嗅覚も最終的には大脳皮質(嗅覚野)で処理され、過去の記憶と照らし合わせて何の香りか認識するそうです。

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「香り」が興味関心を高める

日本心理学会第77回大会(2013年)で発表された研究『香りによる人物の印象が瞳孔径の変化に及ぼす影響』によれば、「香り」は相手への興味関心を高めるとのこと。なおかつ、香りと人物のイメージが一致しているほど強まるそうです。

その研究では、女性60名に対し、香料を漂わせ女性の顔写真を見せて、瞳孔の変化を測定したとのこと。瞳孔は自律神経の支配を受けて拡張・縮小するため、拡張すれば興味関心が高まっていることになります。その際、香りで瞳孔は変化しましたが、写真だけでは変化しなかったそう。香りに少し気をつかうだけで、第一印象が大きく変わるのは間違いありませんね。

効果別「香り」の種類

では、ここで、さまざまな香りの種類と効果を紹介します。香水には5つの代表的な香りが、アロマテラピーには7つのグループがあります。

香水の種類

・フローラル系 ――花の香りが基調。大人っぽく、エレガントな雰囲気を印象づけたいとき ・オリエンタル系――動物性の香料が効いたもの。謎めいた雰囲気を印象づけたいとき ・シプレ系――柑橘系と樹木系。心地よく爽やかで、透明感のある雰囲気を印象づけたいとき ・フゼア系――男性的な香り。フォーマルな華やかさを印象づけたいとき ・シトラス系――柑橘系。フレッシュで親しみやすい、元気な印象を与えたいとき

アロマテラピーの種類

【樹木系】落ちついた・ゆったりとした雰囲気を印象づけたいとき――サイプレス、シダーウッド、パイン・ニードルなど 【ハーブ系】清涼感・スッキリした印象を与えたいとき―― ペパーミント、ローズマリー、タイム、マージョラムなど 【柑橘系】親しみやすく、明るい印象を与えたいとき―― スイートオレンジ、グレープフルーツ、ベルガモット、レモンなど 【フローラル系】エレガントでやわらかい印象を与えたいとき――ラベンダー、ローズ、ゼラニウム、ネロリ、カモミールなど 【エキゾチック系】心を落ちつかせてくれる、安心感のある印象を与えたいとき――イランイラン、パチュリ、サンダルウッド 【樹脂系】親近感のある印象を与えたいとき――フランキンセンス、ベンゾイン 【スパイス系】個性的で刺激的な印象を与えたいとき――シナモン、ジンジャー、クローブなど

以上、判断基準のひとつとしてご紹介しましたが、ビジネスパーソンが印象力を高めるために香りを選ぶポイントは、「相手に好印象であるか」「自分の雰囲気に合っているかです。好き嫌いがハッキリ分かれるような香りは選ばないほうがいいでしょう。柑橘系やフローラル系などが無難ですが、購入先で人気の香りを教えてもらうのもいいですね。なお、アロマオイルによっては禁忌事項があるので、必ず購入先にご確認を。

香りと上手に付き合い、印象力を高めるには

「香り」には注意も必要です。2017年にマイナビが現役社会人に「男性は香水を付けるべきか・付けないべきか」を尋ねたところ、回答は以下のとおりだったそう。

つけるべき 42人(18.8%) つけないほうがいい 181人(81.2%)

「つけないほうがいい」と答えた人は、「香水に不快感を持つ人もいるかもしれない」「“におい”には好き嫌いがある」「香水の“におい”がきついと、まわりにいるのがつらい」と理由を説明しています。

これらを踏まえると、ビジネスパーソンが「香り」と上手に付き合い、印象力を高めるには、好まれやすい香りを選び、ほんの少しだけ香らせることがポイントといえます。体や服にはつけず、ハンカチや名刺などに少しつけるくらいが丁度いいはずです。

*** ほのかな「香り」で印象力を高め、同時に営業力も高めましょう!

(参考) 朝日新聞デジタル&M|- おとなの嗅活 -|(1)感情は“におい”でコントロールできる―基礎編1 WIRED.jp|嗅覚の解明にノーベル医学生理学賞 NIKKEI STYLE|人格がわかる? なぜか生理的に響く「におい」の秘密 日本香堂|フレグラボ|「香り」で第一印象が変わる理由。 フレッシャーズ マイナビ 学生の窓口|社会人男性は香水を付けるべき? 社会人の81.2%が「つけないほうがいい」と意見 アロマテラピーショップ夢香房|アロマオイル(精油)通販 FELICE(フェリーチェ)|香りの種類とそれぞれの効果って?シチュエーション別おすすめの香りをご紹介 肌らぶ|香水の種類~香りまでの全てを徹底解説! 神田光栄・坂井信之(2013),「香りによる人物の印象が瞳孔径の変化に及ぼす影響」(研究発表論文),日心第77回大会. 和田文緒著(2008),『アロマテラピーの教科書』,新星出版社.

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