言葉は時代によって変化しうるもの。 とはいうものの、正式な文章を書くときやビジネスシーンではそんなことは言い訳にはなりません。SNSやメールの発達の為か、最近では話し言葉をそのまま書いてしまうことが多いように感じます。
ということで、今回は話し言葉と書き言葉の区別について、助詞の正しい使い方をテーマにお話をしましょう。
助詞の脱落に要注意
助詞の脱落というと、「僕これ欲しい」などの「てにをは」のないあからさまな幼稚言葉が思い浮かぶので、自分は大丈夫と思っている方も多いのではないでしょうか?
では、以下の例を見てください。
「私、今日、買い物行くの」「君、中国語得意?」
このような言葉遣いをする人は多いでしょうし、口に出す分にはまったく違和感はありませんよね。しかし、文章に起こすと、読点が多用され漢字が連続するので、とても奇妙で読みづらく感じます。
助詞を補うと 「私は今日は買い物へ(をしに)行きます」「君は中国語が得意ですか?」 となります。
話し言葉は、より話しやすいように簡略化する傾向にあるので、助詞が脱落するのは当然と言えるでしょう。その話し言葉がそのまま書かれてしまう原因の一つは、メールの発達により短い単文による会話調での文章のやり取りが増えたからだと考えられます。
いざというときに正しい文章を書けるようにしておくために、LINEのやりとりを書き言葉にしてみるのも良いかもしれませんね。
ビジネスでの助詞の誤用はご法度
「涙に頬を濡らす」「京の町に遊ぶ」
誰もが一度は目にしたことがある、小説では鉄板の表現でしょう。しかし、この文章には助詞の誤用が含まれています。
正しくは「涙で頬を濡らす」「京の町で遊ぶ」。
小説やキャッチコピーでは情感を出すためにあえてこういった誤用をすることがありますが、ビジネス文書などではもちろんご法度。注意しましょう。
助詞の使い方で意味が変わる
上で述べたような助詞の脱落や誤用による弊害とも、日本語の妙とも言えますが、助詞の使い方は文章全体の意味すらも左右してしまうものです。
例えば、「今日は暖かい」と「今日も暖かい」、「これでいいです」と「これがいいです」。
どちらも助詞1文字の違いしかありませんが、この1文字の違いによって、前者の例ではここ数日の気候がどうであったか説明でき、後者の例では自分の意思を明確に示すことができます。
この他にも、 「は」は既知、「が」は未知の情報を示す。 例:「映画は完成しました」「映画が完成しました」
「に」は動作の到達点、「へ」は動作の方向を示す。 例:「私はアメリカに行く」「私はアメリカへ行く」
といった助詞によるニュアンスの使い分けがされます。
「に」と「へ」の例のように入れ替えてもほぼ同義であるものもありますし、助詞にはさまざまな意味があります。助詞の使い分けには普段からの意識と練習が必要です。
*** ちなみに、StudyHackerに限らずコラムなどでは会話調のものが多くあります。その理由は、堅苦しい文章だと読みづらいので親しみやすくするため。ですから、インターネット上で書かれている文章だからといって、必ずしも文法的に正式な書き言葉というわけではない場合もあります。今読んでいる文章が話し言葉なのか書き言葉なのか常に意識しておくことが、正しいビジネス文章を書く第一歩と言えるでしょう。
(参考) 木下是雄著(2009),『日本語の思考法』,中央公論新社. 日経ウーマンオンライン|大人女子の教養講座「てにをは」は意外に間違えやすい! 前田昭彦(1998),「日常会話における助詞の省略」,長崎大学留学生センター紀要, vol.6, pp.43-70. 三省堂 Web Dictionary|15,助詞の使い方に注意 東京外国語大学言語モジュール|文法モジュール 解説 格助詞