みなさんは最近、ストレスがたまったり、暗い気持ちになったりしていませんか? 些細なイライラや、失敗による落ち込み……。ネガティブになるのはよくないとわかっていても、やはり感情のコントロールって難しいですよね。
そんなみなさんのネガティブな感情、もしかしたら、周囲の人の生産性まで下げてしまっている可能性が。実は、ストレスや不安感などは感染してしまうのです。最近、イライラしている人が身のまわりに多いなと感じたら注意してください。あなたの周りでは、負の感情によるパンデミックが起こりかけているのかもしれませんよ。
今回は、感情の感染について考えてみたいと思います。
ミラーニューロンは負の感情も共感させる
感情はどのようにして感染するのでしょうか?
その原因となっているのは、脳の中にあるミラーニューロンという神経細胞です。聞いたことがあるという方も多いかもしれませんね。
ミラーニューロンには、他人の真似を促す働きがあるといいます。「学ぶは真似ぶ」と言うことがありますが、この細胞のおかげで、私たちは真似するという行為から学ぶことができるそう。共感や学習などは、私たちが社会を作り上げるために必要な能力ですから、ミラーニューロンがあるおかげで今の社会があるのかもしれませんね。
人間が社会生活を送るうえで必須ともいえるミラーニューロンですが、プラスの感情だけを伝播させるわけではありません。ストレスなどのネガティブな感情も、人々に共感させてしまいます。さらに、ネガティブな感情はポジティブな感情よりも影響力が強いため、まるで流行の感染症のように、多くの人たちにネガティブな感情が広がってしまうのです。
負の感情の感染に対する予防接種をしよう
私たちは病気にかからないために様々な予防をしますよね。人混みに近づかないようにしたり、手洗い・うがいを徹底して行ったり、予防接種をすることもあります。負の感情も風邪などと同じように感染してしまうのであれば、予防しなくてはなりません。そのためにはどうしたらよいのでしょうか?
2013年ハワイ大学で行われた実験に、他人の感情を見るとき、自分・相手・第三者の誰になったつもりで観察したら一番感染度が強くなるかを調査したものがあります。
実験の参加者が人生で一番嬉しかった瞬間と悲しかった瞬間のことを語っているビデオを、別の実験参加者に見せました。その時、ビデオを見る参加者には、次の3パターンのいずれかの立場を取らせたうえでビデオを見せたのです。
1. ビデオの相手の感情を理解しようと努める 2. ビデオの相手になったつもりで見る 3. あくまでも外部の観察者として見る
(引用元:Buzz Plus News|【必見】他人のネガティブな感情に巻き込まれないための心理法)
結果としては、全体的に悲しみのほうが感染度が強く、3番目の立場に立った人はビデオの影響を受けなかったそうです。
私たちは自分のことを客観的に見ることで、自分の感情も制御しやすくなるといいます。起こっていることの事実だけを受け止めるようにすれば、自分の感情をコントロールできるだけでなく、他人からの情動感染も防げて、一石二鳥ですね。
ポジティブな人を集めよう
ポジティブな人を周りに集めることでも、ネガティブな感情の感染を防ぐことができますよ。
実際の感染症対策に、「集団免疫効果」という言葉があります。これはある集団中に予防接種をした人がいると、予防接種していない人も病気に感染しにくくなるという効果で、予防接種をうつことのできない人たちを守ることにつながるのだそう。
インフルエンザの伝播に大きな役割を果たす小児に予防接種を行えば、ハイリスク者を含む集団全体の感染を抑制できると考えられている。カナダMcMaster大学のMark Loeb氏らは、この仮説を検証するために無作為化試験を行い、小児への予防接種によって、実際に集団内の非接種者の感染が有意に減ることを示した。
(引用元:日経メディカル|小児へのインフルエンザ予防接種の集団免疫効果を実証)
この効果で重要な部分は、免疫を持たない人も感染しにくくなるということ。つまり、ポジティブ思考がなかなかできない人でも、ポジティブな人が周りにいると、ほかの人から負の感情をもらいにくくなる可能性があるのです。
また、ネガティブな感情のほうが感染しやすいだけで、ポジティブな感情も伝染します。ポジティブな人にプラス思考を感染させてもらえれば、ネガティブな感情とお別れして、楽しい生活を送れるようになるかもしれませんね。
(参考) マイナビウーマン|相手の気持ちが移ってくる「情動感染」とは?―より伝わりやすいのは負の感情 WIRED|「ミラーニューロン」は何の役に立つのか? Buzz Plus News|【必見】他人のネガティブな感情に巻き込まれないための心理法 日経メディカル|小児へのインフルエンザ予防接種の集団免疫効果を実証