ネガティブな考えや発言をすると、「もっとポジティブに!」などと励まされることがあります。確かにポジティブに考えることは、ストレスを減らすことができるので健康に良いようです。では、ネガティブ思考はデメリットばかりなのかというと、そういうわけでもなさそうなのです。
今回は、ネガティブに考えることも悪くはないな、と思えるようなお話をしたいと思います。
勉強では無理にポジティブに考えない
テストでいい点数を取ったとき。たとえ満点を取ったとしても、人によってその受け取り方は違います。
一般にポジティブな性格だといわれている人は、「今回は満点が取れたし、次回も満点レベルの良い点数が取れるに違いない」と考えると思います。一方ネガティブな性格の人は、「今回は満点が取れたけど、次回はどうなるかわからない。下手をすると赤点をとってしまうかも」と考えるのではないでしょうか。
このように、大きく分けて二通りの考えがあるわけですが、実際に次回のテスト結果がどうなったのかを追跡調査した論文によると、どちらの思考をしたとしても、学業成績的にはあまり変わらなかったそう。つまりネガティブな人でも勉強で大成することは可能なのです。
さらに、もっと詳細に調査したところによれば、ネガティブな人が無理にポジティブになろうとしたり、ネガティブな感情を振り払らおうとしたりすると、なんと成績が下がる傾向があるのだとか。
そういうわけなので、ネガティブな人は、辛くてもとことんネガティブでいた方がいいみたいですね。(もちろん、もともとポジティブな人は、無理してネガティブになろうとする必要はありませんよ。)
ネガティブ思考は謙虚に、そして冷静になれる
何でもかんでも悪いほうに、ネガティブに考える人というのは、ある意味で臆病な人だと思います。臆病と聞くと、それこそネガティブなイメージですね。しかしよくよく考えてみると、臆病な性格というのは、謙虚さや冷静さにつながります。
サッカー日本代表で、現在プレミアリーグの首位チームでスタメンとして活躍している岡崎慎司選手も、過去のインタビューで次のように述べています。
僕は試合前にこんなことを考えている。 『試合、始まらんで欲しいなぁ……』 『相手のディフェンダー、ごっついやん』 怖い。試合が始まるのが怖い。 (中略)結局、僕はものすごく臆病なのだ。だから、最悪の事態を想像して、気持ちをなえさせておく。つまり、自分へのハードルを下げておく。そこまでして、なんとか試合に臨む。自分が臆病だとわかっているからこそ、謙虚に戦える。一見、僕は熱血漢に思えるかもしれないけれど、かなり冷めた部分を持って戦っているのだ
(引用元:SOCCERKING|ダサくてもいい、鈍足でもいい!日本で一番点を取れる男・岡崎慎司のネガティブ思考とは)
このように岡崎選手は、試合前にネガティブなことを考えてしまうことがむしろ、謙虚に冷静に戦えることにつながっていると言っているのです。
熱くなりすぎると周りが見えなくなってしまうこともあります。時にはネガティブに考えて、謙虚で冷静な判断をしたほうが良いでしょう。
ネガティブとポジティブは表裏一体
ネガティブな思考で成功を収めている経営者の一人が、ダイソーの社長である矢野博丈さん。矢野さんはダイソーの社長として成功するまでに、転職を9回も経験し、さらに多額の借金まであったそう。そのような経験からか、かなりネガティブな発言が多い社長として知られています。しかし、だからこそ成功したのではないかと思います。矢野さんの発言を見てみましょう。
最近は、「暗い時代だからこそ夢や希望を抱け」という人が多い。夢を描くことが努力につながるなら、それもいいかもしれない。ただ、私は無理して明るい展望を描くより、心の中から湧き上がってくる不安を大事にした方が、努力につながると思っています。
(引用元:名言DB|矢野博丈)
根がネガティブな人が無理に希望を抱こうとするよりも、自分がネガティブだということを認め、将来を存分に不安に思うことで努力することへとつなげていく。ネガティブな考えは、努力するためのモチベーションになるということですね。
この考え方、実は非常にポジティブな考え方ではないでしょうか。なるほど、とことんネガティブであれば、それはポジティブであることと同じに違いない、ということですね。ネガティブな人間だからといって、無理にポジティブを装う必要はないのです。ネガティブな自分を、ポジティブにとらえれば良いのです。
*** ネガティブ=悪、と考えないようにすることが重要なようです。 ネガティブな自分を肯定する。そして、ネガティブさを努力へとつなげたり、武器にしたりすることができれば、必ず成功へとたどり着くことができるはずです。
(参考) dot.|夜逃げ、火事…ダイソー社長の悲惨な過去 恐怖心で成功へ 名言DB|矢野博丈 SOCCERKING|ダサくてもいい、鈍足でもいい!日本で一番点を取れる男・岡崎慎司のネガティブ思考とは 外山美樹(2005),「認知的方略の違いがテスト対処方略と学業成績の関係に及ぼす影響 : 防衛的悲観主義と方略的楽観主義」,教育心理学研究 53(2), pp.220-229.