「アイデアが思いつかない…」
レポートを書く時や提案書を作る時、誰しも一度は直面したことのある悩みだと思います。しかし、机の上で唸っていても、アイデアが湧いてくるわけではありません。
今回は、秀逸な発明に学ぶ「アイデア発想の秘訣」をご紹介します。偉大な先人たちの「ひらめき」に学び、私たちも斬新なアイデアをものにしてしまいましょう。
1.小さな負を見逃すな! 「曲がるストロー」
「曲がるストロー」が日本人によって発明されたこと、ご存知でしたか? 発明者は、この他にもさまざまな発明を考え出し、「浪速のエジソン」と呼ばれた坂田多賀夫氏です。
「曲がるストロー」の発明のきっかけとなったのは、日常の観察でした。
渡航先のある病院で、坂田はある光景に目を止めた。寝たきりの病人がコップの水をゴムのチューブで飲もうとしていた姿である。坂田は思った。「なるほど、ストローでは体をおこさなければいかないのか。でも、もしストローが曲がったら、起き上らなくてもいいんじゃないか。ストローが曲がったら便利だろうな」曲がるストローは、この瞬間から坂田によって作られる運命になったのである。
坂田さんは、日常における小さな「負」を敏感に察知し、発明を始めました。
アイデアは、日頃の何気ない気づき、発見から生まれるのですね。身の回りで困ったことはないか、不便なものはないか。アンテナを張って生活してみましょう。
2.組み合わせが革命を生む! 「ティッシュペーパー」
日常生活で必要不可欠なもののひとつが「ティッシュペーパー」。何気なく使っているとわかりませんが、1枚取り出すともう1枚くっついて出てくるあの仕組み、かなり秀逸だとは思いませんか?
あの仕組みは、「ポップアップ方式」と呼ばれるもので、ティッシュペーパーの有名ブランドであるクリネックスが始めたものだといいます。
シカゴの発明家がポテトチップスを食べている時に、偶然ティッシュがくっついて出てきた時に思いついたのがきっかけでした。それをクリネックスが採用したところ、爆発的に売れるようになったそうです。
(引用:Spot light|ティッシュが2枚重ねなのはどうしてなのか?いろいろあるティッシュの豆知識)
ポテトチップスがティッシュペーパーの発明のきっかけになっているなんて驚きですね。しかし、全く別のものを組み合わせて、新たなものを生み出す…というプロセスは、多くの発明品に見られます。
みなさんも自分の専門分野だけでなく、様々な業界・分野の知識をインプットしてみましょう。何か気づきがあるかもしれませんよ。
3.現状を疑え!「プルタブ」
缶ジュースを飲むときや、ツナ缶を開ける時、私たちは手軽にプシュッと開けることができますよね。
缶についている穴を開けるための構造を「プルタブ」と呼びます。当初、「プルタブ」は、缶を開けると外れてしまったそうで、きちんと捨てる人は少なく、街中の至るところに金属の破片が散らばっている、という危険な状況だったんだとか。
第1の問題は、飲み口が開いた後にプルタブが缶本体から分離してしまい、最終的にはゴミとなってしまうという問題である。この問題によって、プルタブは所構わず不注意に捨てられていたのである。 (中略)第2の問題は、缶本体から分離されたプルタブの切り口縁部にはバリが発生して、いわゆるシャープエッジを形成しているとともに、プルタブの切り口自体も細くて人体に大変危険であったという問題である。缶本体から分離されたプルタブを触って指を切ったり、素足で浜辺を歩いていたときに足を切ったりした経験をお持ちの方も多いのではなかろうか。
(引用:日本弁理士会 東海支部|特許公報から学ぶ発明物語「プルタブ編」)
この状況を変えたのが米国のアルミメーカーに勤務していたD.F.カドツィック氏。 彼は「飲み口が開いた後に缶本体から分離せず、飲み口縁部による人体に対する危険もなく、この原理を利用して簡単に飲み口を開口できるプルタブ」を開発し、絶大な評価を受けました。
後からみれば、この発明が生まれたのは必然だと思うかもしれませんが、当時は「危険なゴミになるプルタブ」が当たり前だったのです。その状況を疑い、「もっと安全で手軽なプルタブはできないか」と考え抜いたカドツィック。新たな当たり前を作り出した彼の功績は、「現状を疑う」ところから始まったのでしょう
今感じている不便を「当たり前」、「仕方ないもの」と思わずに、解消できないか、と疑ってみましょう。ひょっとしたら、現状を打破するアイデアが生まれるかもしれません。
4.偶然を掴み取れ! 「電子レンジ」
ただ温めるだけでなく、調理するツールのひとつとしても今や料理に欠かせない存在となった「電子レンジ」。この発明のきっかけが「偶然」によるものだったこと、ご存知ですか?
電子レンジの仕組みはいたって簡単。箱の中でマイクロ波と呼ばれる電磁波を発射、食品の中の水分子を細かく振動させることで、発熱させるというものです。
そもそも、電子レンジを開発したのは航空宇宙・軍事産業に専門をおく米国のレーセオンという会社。当時、レーセオン社の技術者だったスペンサー氏は、マイクロ航空機を感知するレーダーの開発を行っていました。その開発の途中、マイクロ波にはものを温める効果があることに気づいたのです。
彼がスイッチの入ったマグネトロン(注:マイクロ波レーダーの名称)の近くに立っていたとき,彼のポケットに入っていたキャンディが溶け始めました。「はっ」と思いついた彼は,マグネトロンの導波管の前にポップコーンの原料をおいてみました。そして,ポップコーンは見事にはじけたのです。(中略)マグネトロンを知っている科学者たちは,マイクロ波が熱作用をもたらすのに気がついていましたが,マイクロ波をレーダーに使うことしか考えてはいませんでした。だから,マイクロ波が調理に使えることを発見したのは,スペンサーが最初だったのです。
(引用:電子レンジの発明とレーセオン社)
彼のポケットに飴が入っていたのは、全くの偶然でしょう。しかし、彼はその偶然から見事な発明を生み出したのです。もし他の技術者だったら、飴が溶けてベトベトになった白衣を見ても何も思わず実験を続けたかもしれません。
偶然起こったことを注意深く観察し、どうして起きたのか、何か生かせないか考えて見ましょう。何かのきっかけになるかもしれませんよ。
5.不要なものなどない! 「対空レーダー」
「対空レーダー」とは、飛行機を探知するもの。飛行機が発明されて以来、人類の戦争は対空戦が大きな割合を占めるようになりました。敵の戦闘機を撃ち墜とし、自軍の戦闘機を一機でも多く生き残らせる。これが戦争の行方を決めることになったのです。
敵の戦闘機は何機あって、どこへ飛んでいるのか。これを感知したいと考えるのは当然ですが、その誕生のきっかけは意外なものでした。
1922年,アメリカの二人の科学者が短波の送信機と受信機を使った実験の最中に,自動車が横切り電波が乱れました。最初は実験の邪魔だと思っていたようです。しかし,ある時ふと,電波の乱れを逆に利用することを思いつき,まず港の船の運行管理に利用したそうです。その後,1934年にイギリスが軍事用対空レーダの開発に着手,第二次世界大戦前に完成させました。
(引用:富士通テン技報50号|巻頭言 対空レーダ発明のきっかけ)
人は、何か邪魔なものや不確定要素があると排除しようとします。それを逆に生かすことは、発明やアイデア発想において重要な考え方のひとつです。
しかし、「邪魔」や「不要」という感情は人間の主観的なもの。ピーマンが嫌いな子供がいる一方で、大好物と言う子供がいるように「いらない」と思ったものにこそ、何か役立つフィールドがあるかもしれません。
*** ただ机の前で唸っていても仕方ありません。こうした発想方法を思い浮かべながら日常に生かすため、常に頭に浮かべておくことが大切です。 一度リラックスしてみてください。何か思いつくかもしれません。
(参考) 老兵は黙って去りゆくのみ|じじぃの「人の生きざま_99_坂田・多賀夫」 Spot light|ティッシュが2枚重ねなのはどうしてなのか?いろいろあるティッシュの豆知識 日本弁理士会 東海支部|特許公報から学ぶ発明物語「プルタブ編」 電子レンジの発明とレーセオン社 富士通テン技報50号|巻頭言 対空レーダ発明のきっかけ