同僚や部下が悩んでいるときに、うまく力になれずにもどかしい思いをしたことはありませんか? 相手の悩みを聞くときには何か良いアドバイスや意見を言わなければいけない、と考えている方もいるかもしれません。しかし、「聞き役に徹する」ということもまた、極めて重要な聞く技術のひとつなのです。今回は、とにかく聞き役に徹する「傾聴」の技術やコツを紹介していきます。

傾聴とは

「傾聴」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。言葉自体は知っているけれど、普通に話を聞くことと具体的にどこが違うのか、いまいちピンとこない方も多いかもしれませんね。

傾聴とは、以下のようなことを指します。

人の話をただ聞くのではなく、注意を払って、より深く、丁寧に耳を傾けること。自分の訊きたいことを訊くのではなく、相手が話したいこと、伝えたいことを、受容的・共感的な態度で真摯に“聴く”行為や技法を指します。

(引用元:Weblio辞書|人事労務用語辞典 傾聴

普通に話を聞くこととの違いは、「より聞き手という立場に徹していること」「自分の意見やアイデアは特に述べないこと」にあると言えそうです。

傾聴には主にふたつの狙いがあります。ひとつは、聞き手が話し手である相手のことを深く理解するというもの。そしてもうひとつは、相手が自分の力で解決策や取るべき行動を見つける助けとなるというものです。前者についてはわかりやすいですね。では後者の、「相手が解決策や取るべき行動を見つけるための助けとなる」とはどういうことなのでしょう。これについて、研究結果を紹介しながら詳しく解説します。

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傾聴は相手自身の理解を促すために重要

イスラエルにあるオノ・アカデミック・カレッジ経営管理学部講師のガイ・イツチャコフ氏らが行なった、傾聴に関する次のような実験があります。その実験では、ビジネススクールの学生114人を無作為に「良い聞き手」「普通の聞き手」「悪い聞き手」と組み合わせ、マネージャーとしての適性についての話をさせました。ここでのそれぞれの聞き手の定義は以下の通りです。

良い聞き手(グループ1):傾聴の技術を身につけたソーシャルワーカーやマネジメントコーチ
普通の聞き手(グループ2):特別な技術を持たない普通のビジネススクールの学生
悪い聞き手(グループ3):気が散っている振りをするよう指示された演劇部の学生

3種類の聞き手のいずれかと話した学生に、その後自身のマネージャーとしての適性についての自己評価を話してもらいました。すると、グループ3の悪い聞き手と組み合わせられた学生は、自分の強みばかりを認識して弱みに気づくことができなかったそう。一方で、グループ1の良い聞き手と組み合わせられた学生は、自分の強みと弱みの両方を認識することができました。この結果からは、聞き手による話の聞き方は、話し手の考え方や認識に大きな影響を与えるということがわかります。

また、エルサレム・ヘブライ大学ビジネススクールの組織行動学教授、アブラハム・N・クルーガー氏が行なった実験では、次のことが報告されました。それは、相手の行動に関して何らかの意見を与える行為は、その意見の内容に関係なく「自分の行動の決定権は、意見を与えた人の側にある」という印象を相手に与える恐れがある、というもの。つまり、聞き手は必ずしも助言を与えるべきではないということなのです。

誰かに何らかの相談をされると、聞き手はつい適切な助言を与えることを重視してしまいがち。しかし、本来なら、相談事の当事者=話し手自身が、自分の取るべき行動とは何なのかを自ら考え行動したほうが、問題は解決するはずですよね。上で紹介した研究結果からわかるように、困り事を抱えた話し手が、自身の状況を理解し自発的に行動できるようにするためには、相手の話を深く丁寧に聴く傾聴の技術がとても重要なのです。

傾聴のポイント

では、実際に傾聴を実践するにあたってのポイントをご紹介します。

1. 相手の考えていることに寄り添う

相手の話を聞いていると「いや、それは違うのではないか」「僕はこう思うけどなぁ」などと考えてしまうことがあると思います。しかし、そのときは自分自身に意識が向けられてしまっていて、相手の気持ちに十分に寄り添えているとは言えません。

何も意識せずにいると、私たちの意識はついつい自分の考えに向けられてしまうものです。ですので、相手の話の内容だけでなく、声のトーンや仕草にも意識を向け、話し手の様子をよく観察しながら相手の考えを理解しようと努めてみてください。そしてその考えを受け入れることが、相手の気持ちに寄り添うためには大切です。

2. 相手の発言を繰り返す

話し手:「最近、どうも仕事がうまくいかないんだ」
聞き手:「そうか、仕事がうまくいかないんだね」

といったように、相手の話したことのキーワードや内容を繰り返してみましょう。そうすると、相手に「話を聞いてもらえている」「理解してくれている」と感じさせることができ、相手にとって話しやすい雰囲気を作ることができます。

3. 相手の発言を要約する

相手が多くのことを話してくれた場合は、その内容を「なるほど、○○ということ?」などのように要約してみることも良い効果があります。相手は話した内容を整理することができ、相手自身で答えを出す助けとなるのです。

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コミュニケーションは話すことだけで成り立っているのではありません。聞くこともまた、コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているのです。悩んでいる周りの人の力になりたいと思っている方は、ぜひ今回紹介したポイントを意識して、相手の話を聞いてみてください。

(参考)
Weblio辞書|人事労務用語辞典 傾聴
ハーバード・ビジネス・レビュー|上司が部下の話に耳を傾けるだけで、自発的な改善が促される
実践心理学講座|傾聴とは
しごとのみらい|話を聞く効果を最大化する2つの傾聴技法と6つのポイント
しごとのみらい|傾聴とは相手に意識を100%向けて理解しようとすること