コミュニケーションに自信がないからと、職場で分からないことがあっても質問せずに、そのままやり過ごしてしまったことはありますか? そのせいで、後々トラブルへと発展してしまったら大変です。質問のエキスパートから知恵を借り、効果的な「質問法」を手に入れましょう。
なぜ質問法を身につけることが大切か
仕事でもプライベートでも、質問が必要になる場面はたくさんあるはず。しかし、タイミングや口調、言葉づかいなどに配慮せず質問してしまうと、場の雰囲気を壊してしまうことがあります。相手の感情が負に働けば、目的の「知りたい答え」を得られない場合もあるでしょう。
だからといって気をつかいすぎていると、要領を得ず質問の目的を果たせません。場の雰囲気を良好に保ちながら、的確に質問することが必要とされます。つまり、「質問法」は重要なコミュニケーションスキルのひとつなのです。そして、これを身につけることにより、アルバイトでも仕事でも、日常生活でも物事がスムーズに運びやすくなるというわけです。
では、まず「質問のコツ」から始めていきましょう。
質問のコツ
1.【できる範囲で調べてから質問】
スピーチコンサルタント・長崎大学准教授の矢野香氏は、自分なりに調べ、できることをやったうえで質問することをすすめています。そうしたほうが「熱心な人」という印象を与えられるからです。それに、調べることで質問内容も絞り込まれるはず。たとえば作業が終わって「先ほどのリストが完成しました。これ、どうしましょうか?」と大まかに質問をするよりも、まずは可能な範囲で調べ、
「先ほどのリストが完成しました。2つ確認させてください。データ名は他と同じように日付とタイトルでよろしいですか? あと、保管場所は同様のデータが入っている今月分のファイルの中でよろしいでしょうか?」
と質問したほうが、真面目でしっかりしていると評価され、かつ効率的に知りたい答えが返ってくるわけです。
2.【相手の状況を確認してから質問】
質問の際に気をつけなければならないのは、相手への配慮です。目に見える動作がなくても、待機中や思考中の場合もあるからです。質問を始めるまえに、必ず相手から承認を得るようにしましょう。大切なのは気持ちが伝わることなので、次のような言い回しを自分なりにアレンジしてみてください。
・いま、少しお時間よろしいですか? ・ひとつ確認させていただきたいのですが、いま大丈夫ですか? ・2点質問させていただきたいのですが、いまよろしいでしょうか?
エキスパートに学ぶ質問法
次に、質問のエキスパートによる「質問法」をご紹介します。前項のコツとともに実践してみてください。
【質問法1:逆ピラミッド手法】
矢野氏は、最初に質問の目的を言わないことには始まらないといいます。たとえば、「Bさんが休みなので、営業AさんがBさんに指示していた資料作成を、代わりに自分がつくっている。それについて分からないことがあるけれど、営業Aさんが外出したため、営業Cさんに質問する」場合、それまでの経緯をそのまま最初から話していると、相手をイライラさせてしまいます。
したがって、まずは経緯を説明したい気持ちをグッとこらえて、「○○社向けの営業資料をつくっていますが、商品名と画像が食い違っているものがあるので確認させてください」と質問の目的から始めましょう。
それから、「これは営業AさんがBさんに頼んでいた資料ですが、Bさんが病欠なので、わたしが代わりにつくっています」「営業Aさんが外出中なので、営業Cさんに質問させていただきました」と経緯を説明します。
これが「逆ピラミッド手法」と呼ばれる質問法です。これにより、質問の要点が効率良く伝わります。
【質問法2:展開型手法】
ARKコンサルティング・オフィス代表の石川和夫氏は「展開型」の質問を紹介しています。相手の意思を引き出すためには「限定型」ではなく、「展開型」にすべきなのだとか。たとえば、資料の廃棄が気にかかり先輩の意向を知りたい場合、「限定型」を取り入れた質問法はこうです。
あなた「使わなかった資料は捨てていいんですよね」 先輩「うん」 あなた「使った資料だけ、保管しておくんですよね」 先輩「そうだよ」 あなた「使えそうなものは、一応、保管しておいたほうがいいですか?」 先輩「いや、別にいい」
あらゆる角度から質問しても、YES・NOだけで答えることができる「限定型」では、相手の考えを引き出すことができません。しかし、次のような「展開型」であれば、ぐんと様子が変わります。
あなた「使わなかった資料の一部を、別の場所に保管しておいてもよろしいですか?」 先輩「ん? なんで?」 あなた「今後、何かに使えそうなんですが、先輩のご意見もお伺いしたいです」 先輩「いいけど……、どれ?」 あなた「これと、これです。先輩はどう思われますか?」 先輩「うーん、そうだなあ……」
このように、YES・NOだけでは答えられない「展開型」の質問法は、相手の考えを深めたり、広げたり、視点を変えたりする際に活用できます。
【質問法3:仮説型手法】
立場を変えた仮説を用いるのが「仮説型」です。以前マッキンゼー・アンド・カンパニーで活躍した経営コンサルタントの服部周作氏や、弁護士の谷原誠氏がこの手法をすすめています。たとえば、あなたが職場のチーフからレポートを修正するようにいわれたけれど、どう直していいのか、いまひとつ分からないとき、こう質問します。
「どう改善すれば、チーフが納得できるようなレポートになるでしょうか? ぜひ、そのヒントをご教示ください」あるいは、「チーフなら、このレポートをどう改善されるのでしょうか? そのテクニックをわたしも習得したいです」という具合です。
「どこを直していいのか分からないから教えてほしい」では、「自分で考えろ」と返ってくるかもしれません。しかし、この質問法であれば、相手を巻き込める可能性が高まります。自尊心もくすぐるので、運が良ければ一緒に考えてくれるかもしれませんよ!
ただし、これは甘えるための質問法ではないので、あくまでも、指示が漠然としていて分かりにくかった場合や、どんなに考えても分からなかった場合のみ活用してくださいね。
*** 質問に答えてもらったら、結果報告も必ず行いましょう。その行動が信頼を高めるはずです。
(参考) ダイヤモンド・オンライン|47原則 |マッキンゼーなどのトップコンサルタントが使う相手の答えを引き出せる5つの質問法 まぐまぐニュース|弁護士も使ってる。取引先から「答えにくいこと」を聞き出す質問法 アルバイト採用・育成に役立つ人材市場レポート「an report」|「展開型」の質問法で人材を見極めよう! – ARKコンサルティング・オフィス 代表 石川和夫 プレジデントオンライン|「できる人」と思わせるスマートな質問法