さまざまな人が集まる職場では、仕事への取り組み方や態度は人それぞれ。このような仕事における価値観の違いが原因で、「相手のことが気にいらない、話もしたくない」と、時に人間関係がこじれます。人間関係のこじれがひどくなると、お互い冷静に意見を聞くことができなかったり、全く口を聞かなくなったりして、業務に支障が出ることもあるのではないでしょうか。
仕事に支障が出るとなれば、主に上司の立場にある人がこの状態を解消しなくてはなりませんが、仲裁は簡単なことではありません。人間関係のこじれに巻き込まれて、なぜか仲裁に入った人が責められることもあります。
意見の相違から部下同士の人間関係がこじれたとき、上司はどのように対応すればよいのでしょうか? 今回は、部下たちの人間関係のこじれを解決する方法を段階に分けて紹介します。
当事者を冷静にさせる
最近、ある2人の部下の雰囲気が悪い。「面倒なことにならなければいいが……」と思っていたものの、残念ながら解決しそうな気配はありません。2人の部下がいがみ合っているせいで、会議はいつも紛糾し、業務のうえで互いに必要な連絡すらも滞っているような有様。周囲の人もいい加減疲れてきたのか、解決してほしそうな目で2人の上司であるあなたをじっと見てきます。
さて、このような状況になったとき、まずあなたはどのような行動をしますか?
喧嘩を仲裁する際、まず大切なのは当事者たちを冷静にさせることです。元警察官であり、現在は危機コンサルタントとして活躍する屋久哲夫さんは、次のように言います。
取っ組み合いであろうと、静かな反目であろうと、仲裁はその場のいら立ちや、荒れた空気を鎮める対処がスタート地点です。それがなくては、両者にまともな話を聞くこともできません。
(引用元:PRESIDENT Online|元警察官の“巻き込まれない”仲裁法)
人は興奮している状態では、冷静に物事を判断できません。怒っている人が話す内容は支離滅裂であることが多いですよね。そのため、人間関係のもつれや喧嘩を仲裁をする際には、具体的な対応を取る前に、まず当事者たちを落ち着かせる必要があるのです。
そのときは、なるべく穏やかに笑顔で話しかけるようにします。実際、警察官は、喧嘩によるにらみ合いの現場に介入する際、穏やかに「どうかしましたか?」と笑顔で話しかけるのだそうですよ。こちらもイライラした大声で相手に迫ると、相手も大声で返してきて余計に事態が悪化します。部下たちの喧嘩を見ていると仲裁するほうも興奮してしまうかもしれませんが、そのような場合も可能な限り感情を抑えて冷静に話しかけましょう。
感情を吐き出させる
このように当事者たちを落ち着けたら、双方から話を聞きます。
話を聞く際に気をつけるべきなのは、当事者に全ての感情を吐き出させることと、仲裁者が中立を保つことです。
思っていることを吐き出させる際は、当事者同士が面と向かって話をすることができる状態かどうかを確認しましょう。当事者たちが話をできると判断した場合は、仲裁者が立ち会ったうえで、当事者を向かい合わせてみます。当事者たちを向き合わせると、間に他人を挟まない分、相互理解を深めることができます。わだかまりをより減らすことができるかもしれません。もちろん、話している間にまたヒートアップしてしまう可能性がありますから、仲裁者の立ち合いは欠かさないように。当事者同士を向き合わせないほうがよさそうであれば、仲裁者が当事者一人ひとりから別々に話を聞くとよいですね。
喧嘩の当事者が感情を吐き出している最中は、理屈に合わないようなことを話すことがあるかもしれません。そのような場合でも、仲裁者はとりあえず言い分を最後まで聞くようにしてください。臨床心理士の稲富正治さんによれば、興奮している人でも声を出せばストレスを発散でき、次第に客観的な視点を取り戻せるのだそう。
ストレスを外に吐き出すには声を出すのがいちばん。話すと息を細く長く出すため自律神経が自然に整うのです。(中略)怒りの原因や率直な気持ちを伝えるうち、自分の心を冷静に見られるようになります
(引用元:NEWSポストセブン|怒っている人の話を聞くテク 吐き出させるだけでOK、助言不要)
最後まで感情を吐き出すことで、これまでの事態を客観的に見ることができるようになり、解決に向けて気持ちの整理ができるのですね。
仕事上の問題のみを解決する
当事者たちに感情を吐き出させていると、いがみ合いのきっかけが明らかになってきます。
例えば、「相手の態度が自分にだけ冷たいように感じる」など、個人的な感情が原因だとわかった場合。こういった場合は「2人が仲良くできるように……」などと、仲を取り持つ努力を特別に行う必要はありません。個人的な感情は他人に言われて変わるようなものではないからです。担当業務の変更や部署替えなど、なるべく当事者同士が関わらないようにする対応を取り、後は放っておきましょう。
また、「Aさんはいつも連絡が遅いからイライラする」など、仕事上での問題点が原因になっている場合もあります。こういった場合は、どうすれば仕事上の問題点を改善できるかどうか、仲裁者も交えて話し合うようにしましょう。このとき大事なのは、感情を切り離し、問題点の解決に目的を絞ること。先ほどの場合なら「Aさんが連絡をすぐにするためには、どうするべきか」を考えます。
このように問題点を解決すれば、人間関係がこじれてしまった部下たちの関係は改善するかもしれません。ぜひ試してみてくださいね。
(参考) PRESIDENT Online|元警察官の“巻き込まれない”仲裁法 日経XTECH|ビジネスマナー実践塾 第6回 人間関係の修復--人ではなく問題と対峙する,言えないことはメールに書かない NEWSポストセブン|怒っている人の話を聞くテク 吐き出させるだけでOK、助言不要 日経BP社|【43】部下同士がケンカしています