注意深く、軽はずみな行動をとらないよう注意することは大切です。しかし、理由を並べて何もしないのは、“慎重さ”ではありません。単に行動することから逃げているだけ。それを無意識に繰り返している人が、何も結果を出せないまま時間を浪費しないよう、「行動できない人」に共通する口癖と、それをうまく変化させるコツを紹介します。
共通の口癖1「~だから~できない」
「今は余裕がないから、できない」「環境が整っていないから、できない」といった口癖は、今後もずっと行動を起こさないと告げているようなもの。株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役の大平信孝氏は、これらを“先延ばしの常習犯に共通する口癖”のひとつとして挙げています。
アメリカの経済学博士、ロバート・アラン・フェルドマン氏によれば、できない理由を並べる人にも二種類あるのだとか。ひとつは「方法が分からないから無理」というタイプ。もうひとつは「反対するために理由をあげつらう」タイプです。先述した口癖をいう人は、後者のタイプだといえます。
もしもリーダーの立場である人が、その二種類のタイプと仕事をする場合、前者の場合は現実的な提案をもって接し、後者の場合は強いリーダーシップをもって挑むよう、フェルドマン氏はアドバイスしています。後者の“理由をあげつらうタイプ”は、「できる理由」が明確に提示され、「できない理由」がなくなると、「できない」とはいわなくなるそう。
これらを自分自身に対する働きかけとして置き換えると、“強い気持ち”で“どうやってできるか考える”ことが効果的だといえます。
「~だから~できない」ではなく、「余裕はないが、少しでも時間と費用を少なくすればできる」、あるいは「完璧な環境ではないが、少しずつならできる」といった口癖に変えていきましょう。
共通の口癖2「もしも~だったらどうしよう」
大平氏は、心配な気持ちが大きくなると、行動を先延ばしにしがちだと説明しています。「もしも、失敗したらどうしよう」「もしも、全てムダになったらどうしよう」といった不安が原因で、行動を起こせないわけです。
では、そんな不安を抱える人々は、本当に失敗したり、ムダな時間を浪費したりするものでしょうか?
実は、決してそうではないのです。心理学者でMP人間科学研究所代表の榎本博明氏は、誰もがポジティブイリュージョン(自分の能力を過大評価する傾向)を抱えているといいます。そして、能力の低い人ほど自分を過大評価しやすく、能力の高い人ほど、自分の能力を過小評価する傾向があるそうです。これを、「ダニング=クルーガー効果」というのだとか。
榎本氏いわく、「能力の低い人は、自分の能力が低いことに気づく能力も低い」とのこと。逆をいえば、能力の高い人は自分の能力を客観視できるが、現実より厳しく評価してしまうともいえます。
だからこそ、「もしも~だったらどうしよう」は、「もしも失敗したら、またチャレンジしよう」「もしも全てムダになっても、経験を次に生かそう」と、ポジティブで建設的な方向へと自分を導いても大丈夫なのです。
共通の口癖3「後で~できたらやろう」
メンタリストの DaiGo さんによれば、何かを後回しにすると、それをずっと意識し続けてしまうので、脳の疲れを増幅させてしまうのだとか。そのため、後回しにするほど行動する確率が低くなるそう。脳の疲れが意志力を奪ってしまうからです。
同氏はいいます。
今すぐやらないことは、基本的には永遠にやることはありません。後回し、あるいは先延ばしは、あなたから成功のチャンスを奪い、自己嫌悪感と無力感を植え付けます。
(引用元:メンタリストDaiGo著(2016),『ポジティブ・ワード』,日本文芸社.)
つまり、「後で、時間ができたらやろう」「後で、余裕ができたらやろう」は、この先もずっと実現しないということです。DaiGo さんは、「後にしよう」という考えが浮かんだら、成功を邪魔する最大の敵だと思うようアドバイスしています。
予備校講師でテレビでもお馴染みの林修氏がいう「いつやるか? 今でしょ」をマネて、「後で~できたらやろう」ではなく、「後で? “今やろう”でしょ」に変えていきましょう。
共通の口癖4「~今さら無理」
大平信孝氏は、やらない理由を年齢のせいにする口癖として、「今さら~」を挙げています。「もう若くないから今さら無理」といった具合。「あと10年若ければ」も同じ部類とのことです。
年齢は、自分で戻すことができません。その絶対的な理由を盾にして、やらない言い訳をしているのです。
この口癖がある人は、60代でも、50代でも、40代でも、30代でも、20代のときでさえも、「10代なら挑戦できたかもしれないけど、もう20代だから今さら無理」というでしょう。
しかし、86歳で南米最高峰の山に挑んだ、プロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎氏は、何歳になっても年齢を言い訳にしません。80代でプログラミング言語Swiftを学び始め、アプリをリリースし、アップル社の開発者イベントWWDCに招待された若宮正子さんも同じ。
つまり、限界を決めているのは自然の法則ではなく、その人自身ということです。
年齢に限らず、「どうせ頭が悪いから、今さら勉強しても無理」「どうせ痩せないから、今さらダイエットしても無理」「どうせ覚えられないから、今さら本なんて読んでも無理」と、何かしら理由をつけては行動しないでしょう。
それではいつまで経っても、何ひとつ達成できません。
過去と他人は変えられなくても、未来と自分は変えられます。「~今さら無理」ではなく、「~今こそやりたい」に変えて、「もう若くないけれど、今こそ語学を習得したい」「成績はよくなかったけど、今こそ勉強して自分を高めたい」と、自分の可能性を広げてみませんか?
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行動できない人に共通する口癖”と、それを建設的に変化させた言葉を紹介しました。
「~だから~できない」→【~ではないが、~ならできる】
「もしも~だったらどうしよう」→【もしも~だったら、~しよう】
「後で~できたらやろう」→【後で? “今やろう”でしょ】
「~今さら無理」→【~今こそやりたい】
“言葉”は意識を変えるといいます。ぜひ口癖から変えてみてくださいね。
(参考)
東洋経済オンライン|リーダーシップ・教養・資格・スキル|仕事ができない人に共通するヤバい口癖7つ
ダイヤモンド・オンライン|イライラ・モヤモヤ職場の改善法 榎本博明|能力が低い人は、自分の能力が低いことに気づく能力も低い
だれかに話したくなる本の話 - 新刊JP|本気で変わりたい人の行動イノベーション
BuzzFeed News|82歳のおばあちゃんは、Appleが認めた開発者。その人生観が深かった…
Wikipedia|三浦雄一郎
ロバート・アラン・フェルドマン著(2012),『フェルドマン式知的生産術: 国境、業界を越えて働く人に』,プレジデント社.
メンタリストDaiGo著(2016),『ポジティブ・ワード』,日本文芸社.