本の「断捨離」をする人が知らず知らずのうちに失っている3つのこと。

本の断捨離で失う3つのもの01

部屋の中がなかなか片付かない、目につくのはたくさんの本……。そんな状況に陥ったことはありませんか。本をどうにか減らすべく、古本屋に売りに行ったり、ひもで縛って処分したりしたことがある人もいるかもしれませんね。

部屋の中をスッキリさせるために不要なものを捨てる「断捨離」は、一般的に良いこととされています。でも、ちょっと待ってください。本に関しては、その常識が当てはまらないかもしれません。本の断捨離によって知らず知らずのうちに失っているものがあることも知っておくべきです

「断捨離」「ミニマリズム」は一時のブームに。しかし……?

不要なものを捨てて物への執着を減らし、生活の質の向上を狙う「断捨離」は、2010年の流行語大賞にノミネートされました。また、所有物をできるだけ減らし、必要最低限の物資で暮らす「ミニマリスト」も、2015年の流行語大賞にノミネートされています。どちらも一世を風びした言葉であり、「快適な空間で暮らしたい」「乱雑な部屋をどうにかしたい」という人々の気持ちを強めるきっかけになりました。

確かに、無駄にためてしまったスーパーのビニール袋や、明らかに着なくなった洋服などは、積極的に処分してしまったほうが、生活空間もスリムになって良いですよね。しかし、これらと同じ感覚で本も断捨離するのは、あまりおすすめできません。メリットが多い断捨離ですが、捨てるものを間違えると後悔することもあるのです。

マイナビウーマンが22~34歳の未婚女性399人を対象に実施した調査によると、断捨離で後悔したことがある人は16.8%と、全体の約5分の1を占めるのだそう。断捨離して後悔したものの中には、本も含まれていました。

「本を売ったが後々読みたくなった。しかし、絶版している本だったので、二度と手に入らなくなってしまった」(31歳/建築・土木/事務系専門職)

(引用元:マイナビウーマン|捨てなきゃよかった。後悔しない断捨離のコツ

本には、インターネットでは得られない知識や情報が詰まっているので、絶版になった本を捨ててしまったのは痛手ですね。しかし、本を断捨離することで失うものは、ほかにもあるのです。3つの例を説明します。

断捨離のデメリット01

1. かつての熱意やモチベーションを失う可能性

美的収納プランナーの草間雅子氏によると、本棚に並ぶ本の背表紙を見ると、その人のパーソナリティが見えてくるのだそう。

本棚の背表紙を見ると、その人が一体どういう人なのかや、その人の夢や願望、悩みなどもなんとなく分かるものです。 なので、本棚は、見られるのは下着の引き出しの中を見られるより恥ずかしいという人もいるぐらい、パーソナルなものです。

(引用元:日経ウーマンオンライン|モチベーションの上がる本棚整理術

インターネット検索でも情報収集ができるこの時代に、あえて本を手に取ったということは、当時のあなたにそれだけ強い想いがあったということです。だからこそ、本に書かれている言葉は、あなたのモチベーションを高める “やる気スイッチ” の役目を果たします本を断捨離することは、当時の熱意や今後やる気スイッチを押すきっかけを失うことになりかねないのです。

しかし、せっかく本を取っておいたとしても、乱雑に置いているようでは、大事な言葉があなたの目に入ってきません。草間氏は本棚を整理整頓すると、背表紙の言葉が見やすく並んで、モチベーションアップに役立つとしています。本棚の整理整頓のためには、次のポイントに気をつけましょう。

  • 本以外の物(パンフレット、小冊子、書類など)は本棚から出し、不要なものは捨てる
  • 本棚の容量がギリギリの場合は、高さをそろえて並べる
  • 本の高さプラス、ジャンル分けも意識できると探しやすくなってベスト

断捨離のデメリット02

2. “人生を変えた本” をうっかり失う可能性

多すぎると感じるほど部屋に本がある人の多くは、きっと読書好きなことでしょう。そして読書好きな人なら、人生に関わるほど大きな影響を受けた本もあるのではないでしょうか。例えば、ジャーナリストの池上彰氏は、ショウペンハウエルの『読書について』を読んだことで読書の本質に気づき、大きな衝撃を受けたのだそうです。

教養を身につけるためには読書が必要。でも、「読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない」とのショウペンハウエルの指摘は、大学生の私にとって衝撃的でした。問題は読書の先です。

(引用元:東京工業大学 リベラルアーツセンター|人生で最も影響を受けた本

「本を断捨離する」とひとくくりに考えて、なんでもかんでも処分してしまうと、こうした “人生を変えた1冊” も失ってしまう可能性がありますかつて大きな影響を受けた本は、今後の人生の節目や、つらい思いをして自分を見失いそうになったときの心の支えになります

作家としても活躍するお笑い芸人の又吉直樹氏には、こんなエピソードがあるそうです。

本を読んでいなかったら、人前でピースなんてできてなかったと思います(笑)。本があったから笑えるようになりました。本は心の支えですね。お笑い芸人の道に進めたのも、本たちが背中を押してくれたようなもんです

(引用元:よしもとニュースセンター|「本は心の支え」ピース・又吉が書籍刊行記念握手会を開催!

自分にとって大切な記録まで捨ててしまわないよう、本当に大切なものは断捨離しない見極めが大事です。

断捨離のデメリット03

3. “積読本” という宝の山まで失う可能性

本を断捨離するときに、最初にターゲットとなるのは、買ったものの読まずに放置している本、いわゆる「積読本」ではないでしょうか。買ったのに読まないのだから捨ててもかまわないという考えもありますが、積読本には、あなたがまだ吸収できていない知識が豊富に眠っている可能性があります

精神科医・名越康文の場合、買った本のうち7割が「積読」になってしまうそう。しかし、本は存在するだけで心理的に影響を与えてくれると名越氏は述べます。

特に、その道の専門家が数十年に渡って追求してきた、濃縮された時間が詰め込まれたハードカバーの分厚い本がまとう存在感は強力です。それは、そこに込められた圧倒的な情報量もさることながら、それを執筆した人の「人生の時間」や、そこに込められた熱気や思いのようなものが、曰く説明しがたい「空気」として蓄積され、漏れ出ているからです。

(引用元:タウンワークマガジン|本を買っても読まない“積ん読(つんどく)”の効用│名越康文

積読本が放つ存在感が、「頑張って学ばなければ」「成長しなければ」という良いプレッシャーになると、名越氏は述べます。また、手に取った本には「未来のなりたい自分」が投影されているため、積読本がそばにあることは、成長への動機づけになるとも述べています。

心理学的に言えば、「未来のなりたい自分」のイメージを本という「モノ」に投影している状態ということが言えます。つまり、「積ん読」というのは、「なりたい自分」のイメージ(=本)を常に手元に置く、ということなんです。

(引用元:同上)

本そのものが放つ存在感、新たに得られる知識や教養、そして本をそばに置くことによる成長の動機づけ。積読本は、捉え方によっては宝の山になるのです。

断捨離のデメリット04

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「断捨離して物を減らす」という観点においてはデメリットがあるように感じられる、本を捨てずに取っておくという行為。一方で、自分の本質に関わる大切なものを失わずに済むというメリットもあります。

とはいっても、本棚を整理整頓して見やすくしておくことは大切です。例えば、積読本専用の本棚を用意するなどすると、それだけでもスッキリします。捨てる・捨てないの前に、まずは並べ方を見直してみると良いかもしれませんね。

文 / かのえかな

(参考)
「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞
マイナビウーマン|捨てなきゃよかった。後悔しない断捨離のコツ
日経ウーマンオンライン|モチベーションの上がる本棚整理術
東京工業大学 リベラルアーツセンター|人生で最も影響を受けた本
よしもとニュースセンター|「本は心の支え」ピース・又吉が書籍刊行記念握手会を開催!
タウンワークマガジン|本を買っても読まない“積ん読(つんどく)”の効用│名越康文
StudyHacker|“積読” は解消の必要なし! 東大教授に学ぶ、”積読” ほんとうの価値。

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