「最悪なマネージャー」に共通する3つのこと。“部下と競争” はなぜマズいのか?

大手外資系IT企業に勤めるビジネスパーソンでありながら、琉球大学客員教授や複数のスタートアップ企業の顧問、NPOのメンターなどさまざまな顔を持つ澤円(さわ・まどか)さん。ビジネスシーンでは「世界ナンバーワン・プレゼンター」としても知られます。

今回は、11月に上梓されたばかりの澤さんの最新刊から、すべてのビジネスパーソンに贈る金言をピックアップ。第2回のテーマは、「マネジメント」です。澤さんによれば、「日本はマネジメント後進国」。マネージャー、いわゆる管理職にある人はちょっと耳が痛い言葉もあるかもしれませんし、自分の身のまわりにいるマネージャーを思い浮かべてみてもいいでしょう。そして、これからマネージャーを目指す人は、澤さんの言葉を心にとどめておきたいものです。

構成/岩川悟 清家茂樹(ESS) 写真/榎本壯三

「What」と「How」に集中する

マネージャーのもっとも基本的なタスクは「判断すること」です。ビジネスには不測の事態や想定外の出来事はつきものですが、そんなときも、マネージャーはなんらかの判断をくだす必要性に迫られます。

このとき、もっともやってはいけないのが「犯人探し」的な行為

「なぜこんなことになった!」「責任者は誰だ!」などと怒ってもまったく意味がないのです。これは、マネージャーとして最悪のアプローチでしょう。

まず問わなくてはならないのは、これです。

なにがあったのか?(What・客観的な視点) どうすればいいのか?(How・次の行動)

このWhatとHowにフォーカスするのが、マネジメントのとても重要な仕事。これは、「起きてしまったことは仕方がない」といったん失敗を許容する考え方でもあります。「なぜ起きたか=Why」と「誰がかかわったか=Who」はあとまわしにして、すぐに現状把握と次のアクションを考えるのが鉄則なのです。

しかし、日本では誰かのせいにしたがることが多く、WhyとWhoをやたらと探しまわります。いったいなぜでしょうか?

それは、「責任の範囲が明確になっていない」から。

マネジメント先進国では、責任の範囲が最初からとても明確です。わざわざ、「誰のせいだ!」と騒がなくても責任がはっきりしているのです。責任範囲が明確だからこそ、メンバーは失敗を恐れることなく、成功に少しでも近づけるためにどんどんトライしようと考えることができるわけなのです。

その代わりに、なにかを達成したときの手柄も明確。たとえば僕が所属する企業では、たとえ新入社員であってもオーナーシップがある仕事は、その人物が手柄を総取りします。でも、日本企業ではみんなで手柄を共有するかのように振る舞いながら、結局はなにもしていない代表者の「管理職」が取ることが多くあります。

もちろん、マネジメント先進国の手法はひとつの考え方に過ぎません。ただ、グローバル時代のビジネスにおいては、スピードの面でも成果の面でも適しているのは間違いないでしょう。

小さな失敗を許容することを習慣づけられれば、大きな失敗に発展する前に修正することができます。また、小さな失敗をどんどんして多くの学びを得られれば、大きなイノベーションを起こす土壌もできるはず。

実際にシリコンバレーや最近の中国では、多くのスタートアップ企業が生まれていて、最初は目もあてられないようなプロダクトをリリースするのですが、ユーザーからのフィードバックを即時に反映させ、クオリティをスピーディーに向上させています。日本の完璧主義は、たしかに優れたクオリティの製品を生み出してきましたが、最近では質の面でも中国をはじめとした国々に追いつかれ、なによりスピードが遅いという致命的な欠点となっていることは周知の事実でしょう。

マネージャーの裁量にもよりますが、どんどん小さな失敗ができるように僕たち一人ひとりがマインドセットを変えていければいいなと、僕はいつも思っています。

部下のモチベーションが上がらない理由

リソースを最適に配置することもマネージャーの重要なタスクです。そのためには、チームメンバー一人ひとりの能力や適性を見極める必要が出てきます。だからマネージャーには、高度なヒアリング能力が問われることになるのですが……。

みなさんは上司にこんなことを言われたことはありませんか?

「もっとやる気を出せ!」 「モチベーションを上げていこう!」

はっきり言うと、これではマネージャー業失格。モチベーションというのは、他者が手を加えて上がるものではないからです。上から命令したからといって、部下のモチベーションは上がりません。マネージャーの立場にいる人間は、この事実をまず理解すべきでしょう。たとえ結果的に上がったように見えても、「人のやる気というのは、人によっては変わらない」ことを前提に考えるべきだと僕は思います。

マネージャーがやらなければならないのは、モチベーションが上がる環境を整えること。チームの力を阻害するブロッカーを外していき、みんながのびのびと仕事ができる環境を整えることが重要な仕事となります。

残念ながら、日本の企業ではマネージャー自身がブロッカーになっているケースがとても多く見られます。典型的なのは、部下に対して「数字を上げろ」「書類をつくれ」と、ただ命令や指示ばかりしているタイプ。でも、人に対して命令する権利などマネージャーにはありません。

デキるマネージャーは、結果的に指示や命令をしているように見えても、それはあくまでもリソースを最適に配置したうえで、いわば「開始ボタンを押しているだけ」ということ。人を自由に動かす権利までは与えられていません。リソースのなかに人が含まれているだけで、人の心も含めて自由に動かす権利なんて、そもそも誰にもないのです。

なのになぜ、彼らは勘違いしてしまうのでしょうか?

それは、日本企業のマネージャー(管理職)が「名誉職」だからです。たとえばセールスの成績が良かったから営業部長になったり、マーケティングで能力を発揮したからマーケティング部長になったりしますよね。つまり、現場で結果を出した人への名誉として、マネージャーの肩書が与えられている。さらに、多くの企業では給与の階層が役職の昇降格と一致しているので、一定以上の給料を払うためには役職をつけることがマストになってしまっているのです。これは、最悪のリソース配置です。

なぜなら、プレイヤーとしては優れていても、マネジメントの適性がない者が「◯◯部長」や「◯◯マネージャー」といった立場につくと、チームがむちゃくちゃになるからです。しかも、当の本人たちは名プレイヤーだった成功体験があるので、部下やチームメンバーに対して「おまえらなんでできないの?」などと言い出しかねません。こんな高圧的な人が、あなたの会社にもいませんか?

最悪なマネージャーに共通しているいくつかのこと

僕がここまでお伝えしたことを読んで、若い読者のみなさんの頭のなかには、自分の会社や仕事を振り返って、素晴らしいマネージャーだと思える上司もいれば、どうしようもないマネージャーも頭に浮かんでいることでしょう。そんなとき、自分の立場から見た彼らを疑うことに加えて、自分がこれからどんなマネージャーになるべきかを思い描いてほしいのです。

僕も若いころから、いろいろな上司を見てきました。そのとき、なにを「デキる・デキない」の判断基準にしていたか?

全体が見えているかどうか

これができていないマネージャーは、思いの他たくさんいます。

チームのいまの状態や向かう先といった全体像が見えていないから、細かいミスばかりが気になり、すぐに「誰がしくじったか」を追及して保身を図るわけです。

さらに、最悪なのは部下と競争するマネージャー。絶対、マネージャーになってはダメなタイプです。部下の能力を認めなかったり、それに嫉妬したりするマネージャーは、マネジメントに100%向いていません。相手を認めたくないがために、必死に競争しようとするからです。

マネージャーになるとプレイヤーとして働くことができないので、プレイヤーとしての体験が自身のなかから抜けなければストレスが溜まっていきます。加えて、本人にマネージャーの資質がなければ、すぐに「むかしの俺たちはな……」などと言い出してしまう。過去の成功体験のなかで生きている人間には、早いうちに終わりがやってきます。過去は過去ゆえに、それ以上の成功体験が増えないからです。

もちろん、マネージャーがプレイヤーの気持ちを理解することは必要かもしれない。プレイヤーがどうすれば快適なのかを考えるとき、プレイヤーだったころの経験を活かすことができるでしょう。その意味でプレイヤー気質を持っているのはいいのですが、それを言動で表したらダメということ。ましてや、それを前面に押し出して部下と対峙してはいけません。サポートのためにプレイヤーの一面を出すのはありですが、対立軸で出すのは最悪な行為なのです。マネージャーがチームメンバーと競争して成立するチームなんて、滅多にありません

じつは、僕のチームにはかなりの競争があります。たとえば会社主催の大きなイベントの際には、参加者アンケートにもとづくプレゼンのランキングが発表されるのですが、そのトップ争いがチームメンバー間で発生したりします。そして、「今回は澤さんに勝った!」と言ってくるのですが、僕はまったく悔しくありません。チームメンバーが上にいったら誇りに思えるし、そんな健全な競争は大歓迎だからです。

つまり、マネジメントする立場の人間は、人(部下)を下げて自分が上にいこうとしなければいいのです。どんどん上を目指すプレイヤーがいたら、マネージャーは「必要ならサポートはいくらでもするよ」と言えればいいのだと思います。

※今コラムは、澤円著『あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。

【澤円さん「あたりまえを疑え。」 ほかの記事はこちら】 “なぜか余裕に見える人” が必ず知っている3つの原則。一流は「やらない」という選択肢を持つ。 あたりまえを疑える「変な人」になるべき理由。“普通すぎる” と絶対損する。

『あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント』

澤円 著

セブン&アイ出版(2018)

【プロフィール】 澤円(さわ・まどか) 立教大学経済学部卒業。生命保険会社のIT子会社を経て、97年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任し、2011年、マイクロソフトテクノロジーセンター・センター長に就任。18年より業務執行役員。06年には十数万人もの世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツが授与する「Chairman’s Award」を受賞。現在では、年間250回以上のプレゼンをこなすスペシャリストとしても知られる。 Twitter:Madoka Sawa/澤 円(@madoka510

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