あたりまえを疑える「変な人」になるべき理由。“普通すぎる” と絶対損する。

大手外資系IT企業に勤めるビジネスパーソンでありながら、琉球大学客員教授や複数のスタートアップ企業の顧問、NPOのメンターなどさまざまな顔を持つ澤円(さわ・まどか)さん。ビジネスシーンでは「世界ナンバーワン・プレゼンター」としても知られます。

今回は、11月に上梓されたばかりの澤さんの最新刊から、すべてのビジネスパーソンに贈る金言をピックアップ。第3回のテーマは、「自分自身」について。自分自身を客観視するのはなかなか難しいもの。あなたは、「本当にありたい自分」に近づいていますか? 自分自身のあたりまえを疑い、もっと輝ける未来へと向かって歩むためのヒントです。

構成/岩川悟 清家茂樹(ESS) 写真/榎本壯三

定年後に新しい人生はやってこない

いまは会社が突然潰れることも珍しくない時代です。ひとつの会社でひとつの仕事しかできない状態は、かなりリスキーかもしれません。そのリスクを回避するためにも、また、自分がやりたいことに近づくためにも、僕は複数の仕事をすることをおすすめしています。そうすれば、実際に会社をやめるかどうかはともかく、いつでもやめられる状態になります。

たとえば、僕はいまいる会社で働くのが楽しくて、会社に感謝もしていますが、パフォーマンスを出せないのにしがみつくつもりはありません。「やめろ」と言われれば今日中にやめられるくらい、未練がない状態に自分の身を置いています。実際に、上司にも「どうしても会社の都合でやめてもらいたいと思ったら、いつでも言ってほしい」と伝えています。

つまり、「その日のうちに行動できるから安心してください」ということ。その代わりに、在籍している間はベストを尽くすというコミットをしています。複業をしているからこそ、ひとつの仕事にぶら下がることなく、プロとしてコミットできるのです

なぜそこまで複業にこだわるのか? 僕の答えは至ってシンプルです。

人生は一度きりだから

どんな人にも、与えられている人生は一度きりです。その時間を、できる限り自分のために使いたいのです。そのため複業によって多くのやりたいことに踏み出して、すべての仕事に本気で取り組んでいるわけです。

世の中には定年までひとつの会社を勤めあげて、それなりの安定を手に入れるという考え方もあるでしょう。でも、僕は「定年までしか働かないの?」と思ってしまう。世の中にこれだけ未知の情報が満ちあふれ、楽しいことがたくさんあるのなら、「60歳で余生という感じでもないな」って思うのです。

ここにも、過去の価値観に縛られたマインドセットが潜んでいます。まるで自分の人生の歴史を区切るかのように、なぜ定年で人生を一度区切る必要があるのでしょうか?

定年後に新しい人生がはじまるのではなく、ひたすら人生は前へ向かって続いていくのです。考えなければならないのは、死ぬ瞬間まで続いていく人生において、自分はなにをして生きたいのかということ。

会社から求められたことに応えるのが、自分の生きがいになるのは悪いことではありません。それが好きならおおいに結構です。ただし、心にとどめておいてほしいことがあります。

会社はそれほどあなたのことを考えていないかもしれない

あなたが求められてきた仕事が、ある日なくなるかもしれません。事業自体がなくなるかもしれないし、急に異動になることだってあるでしょう。そもそも、会社ですらずっと続くものでもありません。「いまの会社や仕事に依存するのはリスキーかもしれない」。そう思える感性が必要なのだと思います

これからの時代に必要な資質は「未来志向」

人生100年時代を迎え、将来のお金や病気のことは心配だし、テクノロジーもどんどん進化していく。そんななかでライフプランニングを難しく感じたり、どのようなマインドを持つべきか模索したりしている人も多いと思います。

僕たちはいま、どのような「THINK」を持って生きていくべきなのか? ここで、ひとことで表しましょう。

未来志向

僕はこの未来志向こそが、これからの時代を生きていくうえで絶対条件になると考えています。時間の本質は、前にしか進まないという「不可逆性」にあります。そう考えると、過ぎ去った時間はもはやライフプランとはあまり関係がなく、先のことを考えることにもっと集中すべきではないかと思うのです

もちろん、過去は自分が生きてきた証だから、そこから経験や学びといったプラスになるものを引き出すことはできるはず。ただし、過去を変えることはできない。正確には、過去の事実自体は変えられないのです。過去のネガティブな体験を自信に変えていくのは、このいまと、未来のあなたの「THINK」です。

過去のネガティブな体験が扱いづらいなら、いまはまだ放っておきましょう。とりあえず顔をあげて、前だけを見ればいい。僕自身もそれほど前向きな性格ではありませんが、なるべく積極的に行動することでカバーしています。

前を向きましょう。

もっと、未来を見ましょう。

そのために、大切なマインドセットがこれです。

世の中は必ず変わる

あなたが好むと好まざるとにかかわらず、世の中は必ず変化していきます。同時に、時間は前へ前へと進んでいくのです。そんな変化を受け入れられるかどうか、変化に対応できるかどうかが、これからの時代に大切なマインドとなります

以前、筑波大学准教授でメディアアーティストの落合陽一さんが、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系列)で、高齢者に「ロボットにお世話してもらいたいですか?」と問いかけました。すると、ほとんどの人は「嫌だ」と答えました。では、「ウォシュレットとおじさんに拭いてもらうのとどちらがいいですか?」と問いかけたところ、今度はほとんどの人が「ウォシュレットがいい」と答えたのです。

もともとおじさんに拭いてもらっていたわけではないので、そこは討論番組ならではの彼流の論法。でも、知らないうちにみんなテクノロジーの変化を受け入れているのは、紛れもない事実のようです。

これは、とても大切なポイントです。

僕たちもまた変化している

彼はそこで、「介護とはなんぞや」という議論をしたのではありません。シンギュラリティ(※)について彼なりの定義を述べたわけです。AIが人間の知性を超えたとき、お互いに共存できる環境をつくりたいと彼は考えた。人間には重い負担であることをロボットが楽々とやってくれるなら、人間はもっと心の余裕を持ってケアに時間を割ける。そのほうが、よほど素敵じゃないですか? と問いかけたのです。

世の中には変化を受け入れられない人がいます。しかし、そんな人でもある部分では変化を受け入れている。受け入れることができないのではありません。「受け入れたくない」のです。これが固定観念。

つまり、新しい成功体験を取りにいっていないだけなのです。

日本人は、起きてもいない悲劇を恐れ過ぎる傾向にあります。起きてから考えるのではなく、起きてもいないのに押さえつけてしまう。あるいは、起きた失敗をとことん叩きのめす。これが、容易に同調圧力に変わっていきます。

僕たちはそんな過去の偏狭な価値観ではなく、未来の世界を見つめなければなりません

いま、世界時価総額ランキングのトップ10にいる企業のほとんどは、未来志向によって時代を先取りしたグローバル企業です。約30年前にランクインしていた多くの日本企業は、見る影もありません。過去の延長線上では通用しない世の中にすでに変わっているのです。

さらに、そのトップ10企業の大半が、いまないものを生み出そうとして膨大な投資を続けています。彼らでさえ、「新しい価値を生み出さなければ他の企業に出し抜かれる」と思って必死に努力を続けているわけです。これがいまの世界のビジネスの現実です。

世の中は変わるという事実――。そして、あなたも知らないうちに変化しているという事実。残されたオプションは、あなたが自ら変化するかどうか

それだけなのです。

※【シンギュラリティ】 人工知能(AI)が発達して人間の知性を超える技術的特異点のことで、人間の生活に大きな変化が起こるとされる。人工知能の権威レイ・カーツワイル博士が提唱した概念でもあり、2045年までに人間と人工知能の能力が逆転するとされる

あたりまえを疑う「変な人」であれ

変化を受け入れるために必要なのは、なによりも好奇心を持つことに尽きます

好奇心というのはいわば燃料で、知的活動を続けるうえで原動力として燃やすもの。僕がいろいろな場所でアウトプットをして、フィードバックを得ようと続けられるのも、好奇心という燃料が燃え続けているからに他なりません。

僕は目の前に箱があったら、「なにが入っているのだろう?」と思わず開けたくなるタイプ。好奇心があるから、「とりあえずやってみようかな」「まずは入ってみようかな」と思えるのです。

もちろん、それにはリスクが伴います。箱を開けたらとんでもないものが飛び出てくるかもしれません。新しいビジネスに手を出したら、ものすごく痛い目を見るかもしれない。それでも僕は、「それも経験だ」と思うようにしています。それこそ死ぬことさえなければ、多少の「崖っぷち」を垣間見るのは、自分の貴重な糧となるはず。

「面白そう」だと思ったらとりあえずやってみる、そこへいってみる、前へ進んでみる。まわりからは「もっとちゃんとしなさい」「いい加減に大人になれ」と言われるかもしれませんが、じつはこの世の中は、そんな好奇心に駆られた変な人たちによってつくられ、動いているという見方もできます。

ビル・ゲイツだってめちゃくちゃ変な人だし、スティーブ・ジョブズにも変人エピソードが満載ではありませんか。たしかに彼らは天才かもしれませんが、問題はそこにはありません。問うべきは、そんな人たちの影響を受けるだけの立場でいたいのか、それとも自分もみんなを巻き込んでなにかをしたいのかだと思うのです。

そこにこそ、境界線があります。

あなたはどちらの生き方を選ぶのか?

どちら側にいても生きてはいけるけれど、みなさんには、やっぱり変な人になってほしい。どうせなら、自分なりのアウトプットをはじめて、まるでお祭りのような面白い世界を体験してほしい。僕は、心からそう思います。

僕なんて長髪のサラリーマンというだけで日本では十分過ぎるほどに変な人です。でも、一歩日本を出れば、ちょっと髪の長い東洋人というただの地味キャラになってしまう。海外で変な人と言われるのはけっこう難しいことなのです。ましてや日本の「あたりまえ」にとらわれていたら、ほとんど気づかれることもないでしょう。本当は、とてもユニークな個性を持っているのかもしれないのに。

そうなのです。

そんな「あたりまえ」を疑え

変な人はユニークだということ。ユニークであることは、世界で唯一の存在だということ。あたりまえでいる必要など、どこにもないのです。僕たちはもっと、自分だけのオリジナリティーをみんなに発信していいのです

あたりまえを疑って、もっともっと変な人になる

変だからと押さえつけられるのではなく、「あいつ、変で面白いよね!」とリスペクトされる多様性に満ちた社会。

「どうせ無理」とつぶやくのではなく、「どうしたらできるだろう?」と一歩を踏み出せる社会。

そんな人たちをあたたかく応援する社会。

男性と女性がフェアに働ける社会。

大人と子どもが一緒に夢を語り合える社会。

あなたとわたしが手を取り合って、ともに励まし合える社会。

そんな新しい「あたりまえ」を、僕はみんなとつくっていきたいと思っているのです。

※今コラムは、澤円著『あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。

【澤円さん「あたりまえを疑え。」 ほかの記事はこちら】 “なぜか余裕に見える人” が必ず知っている3つの原則。一流は「やらない」という選択肢を持つ。 「最悪なマネージャー」に共通する3つのこと。“部下と競争” はなぜマズいのか?

『あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント』

澤円 著

セブン&アイ出版(2018)

【プロフィール】 澤円(さわ・まどか) 立教大学経済学部卒業。生命保険会社のIT子会社を経て、97年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任し、2011年、マイクロソフトテクノロジーセンター・センター長に就任。18年より業務執行役員。06年には十数万人もの世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツが授与する「Chairman’s Award」を受賞。現在では、年間250回以上のプレゼンをこなすスペシャリストとしても知られる。 Twitter:Madoka Sawa/澤 円(@madoka510

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