“アメとムチ”は、モチベーションを引き出すためによく用いられていますが、アメに当たる“報酬”のシステムが、むしろやる気を削ぎ落とす危険性を持っていることをご存知でしょうか?
この“報酬”の持つ落とし穴は、心理学の用語でアンダーマイニング効果と呼ばれます。
アンダーマイニング効果【現象】(アンダーマイニングこうか【げんしょう】undermining「弱体化」「土台を台無しにすること」)は、内発的に動機づけられた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、モチベーション(やる気)が低減する現象。
(引用元:Wikipedia|アンダーマイニング効果)
例えば、ある団体がボランティア活動として公園の清掃活動を始めたとします。
活動は評判となり、自治体はその団体に対して毎回報酬を出すことに決めました。それが続いた結果、ボランティアのモチベーションはいつの間にか「報酬をもらうこと」にすり替わってしまい、報酬が打ち切られたところでボランティアも終わってしまうのです。
このように、特定の活動が途中から本来の目的を忘れ、そのまましぼんでいくという例は少なくありません。
好きなことを仕事にしない方が良いとよくいわれていますが、仕事として報酬を受け取ることが次第に活動そのものの楽しさを忘れさせるという経験則から生まれた言葉なのかもしれません。
では、どのようにすればアンダーマイニング効果に打ち勝つことが出来るのでしょうか?
内的動機を大切にする
アンダーマイニング効果を防げば、高いモチベーションを維持することができます。そのためには、内的動機を忘れないようにする努力が必要ということになります。
内的動機をつくるためには、まず自分が何を達成したいのか、突き詰めればどういう人生を歩みたいのか、を明確にする必要があります。
(引用元:等身大ブログ|モチベーションを維持する5つの心理学的な方法
内的動機というのは、自己の根幹に関わる部分から出てくるものです。それを維持するためには、自分自身を良く知ることが何より大切なことになります。
定期的に立ち止まり、そもそもなぜやろうと思ったのかを確認しましょう。このように動機を確認することは、内的動機を維持するための大前提となるでしょう。
マスタリー目標を意識する
目標を立てた時、主に下記の2つに区別されます。
1.マスタリー目標:自分の能力を向上させるための目標。 2.パフォーマンス目標:自分の能力を発揮するための目標
例えば、アスリートが「これだけの筋力をつける」という目標を立てたとき、それはマスタリー目標になります。一方で「この大会で優勝する」という目標を立てたとき、それはパフォーマンス目標になります。
両者ともに大切なものではありますが、内的動機の維持に役立つのは圧倒的に1.マスタリー目標です。
ある物事に対するモチベーションを維持しようと思ったら、そこから何を学ぶのか、どのようなことを身につけるのかということを軸に目標を立て直してみましょう。
定期的に「すっぱりと忘れる」
やる気を維持するためには「集中し続ける」ということが大事だと思っていませんか? しかし、本当に大切なのは、「ずっと集中し続けない」ことなのです。
人間は、何かにのめり込むとその分周りが見えにくくなりますし、自分が今何をしているのか、どういう場所に立っているのかも次第に曖昧になってしまいます。そうならないために、定期的にすっぱりと忘れて気分転換の日を設けてしまいましょう。
何をするかは完全に自由です。映画を見に行ってもいいし、ショッピングに行ってもいい、スポーツに打ち込むのもいいかもしれませんし、1日中ごろごろしていても構いません。
とにかく、やる気を保ちたいものから1日"完全に"距離を置いてしまいましょう。しっかりと頭の中から追い出してやることが何より重要なのです。
そうすることによって感覚がリセットされ、「自分は今どういう状況なのか」を客観的に評価でき、結果として内的動機の回復が促進されるきっかけとなります。「急がば回れ」とは言いますが、やる気を維持していくためにはちょっとした回り道が必要なのです。
がむしゃらに維持しようと気合を入れてみても、気持ちの方はなかなかついてきてはくれないと思います。だからこそ、自分自身と上手く付き合い、目標に向けて気持ち良く努力し、それを維持できると良いですよね。
(参考) Wikipedia|アンダーマイニング効果 等身大ブログ|モチベーションを維持する5つの心理学的な方法 人事組織の研究ページ|パフォーマンス目標とマスタリー目標