『オデッセイ(原題:The Martian)』は、2015年に公開されたアメリカのSF映画です。日本でも2016年2月より上映されています。
この映画は、火星に一人取り残されてしまった宇宙飛行士の生き残りをかけた奮闘と、彼の生還を目指す周囲の人々の努力を描いています。たった一人で取り残され、地球の誰もが彼のことを死んだと思っている中、彼がいかに生き残り、地球と交信するのか。その方法には、私達がさまざまな課題に取り組むうえで重要な、多くのヒントが隠されていました。
現状を把握し、持っている資源をすべて活用して、諦めずに取り組む
主人公の宇宙飛行士マーク・ワトニーは、火星での船外活動中、暴風によって仲間とはぐれてしまい、火星に置き去りにされてしまいます。彼は、食糧も水も、通信手段も、何もかも十分でない火星で、次に有人探査機が来るはずの4年後まで生き延びようと決意します。そしてワトニーは、自分が植物学者であることを活かして、さまざまな問題の解決に挑むのです。
実現不可能と思える課題を次々こなしていった彼の姿勢には、どの問題についても一貫したものがあります。それは、現状を把握し、持っている資源を最大限活かすことと、失敗してもあきらめないということです。
例えば、食糧の確保。現状イモがあることを把握し、自身が土壌研究用に持ってきていた少量の土と、自分たちの排泄物を使ってイモの育成を行います。
水の確保では、宇宙での事故を防ぐため不燃性のものしかない居住空間の中で、仲間たちの荷物を丁寧に見て回り、一人の仲間が小さな木製の十字架を持ち込んでいたのを見つけ、それを火種にして水を生成します。この際、一度失敗して爆発を起こすも、ワトニーはその失敗の原因を分析し、二度目のチャレンジで成功させます。
通信手段の確保では、火星上の地図をくまなく見て、数年前に使われることがなくなっていた通信機器を遠方に見つけ、その場所にたどり着くため、長距離移動を可能にしようと何度も実験を重ねるのです。
いずれの場合も、冷静な分析と、手元にある資源を最大限いかす姿勢、そして失敗しても諦めない気持ちが結果を生んでいることがわかります。
助けてくれる人がいることを忘れない
問題解決に取り組む際に忘れがちなのが、誰かに頼るということ。
責任感の強い人ほど、自分一人で解決しなければいけない、と問題を一人で抱え込んでしまいがちです。ですが、一人では解決できないことでも、誰かと協力すれば解決できるようになることもありますし、どんなに四面楚歌に思えても、協力してくれる人は必ずいるはずです。
火星からついに脱出するというミッションを成功させようとする場面。ワトニーは、火星時間で200日もかかる長距離の移動をする必要があり、その移動中の生命維持や、宇宙空間に出るにあたって必要な一切の道具をすべて持って移動しなければいけないという課題に直面します。
その時、ワトニーはこう言います。
And luckily, I have the greatest minds on Planet Earth... really, all of the brainpower on the entire planet... helping me with this endeavor.
(引用元:Springfield! Springfield!|The Martian (2015) Movie Script)
地球の皆の知力と努力が、自分を助けてくれる。植物学者である自分ではわからない部分についても、地球の皆が知恵を与えてくれる、とワトニーは言うのです。
自分ができない時には人の知恵を借りること、そして誰かの支えがあることを忘れないのが大切です。
目の前の問題を一つ一つ解決していくことが成功を導く
最後に、ワトニーがいかに火星での生活を乗り切り、地球に生還したかを、宇宙飛行士の候補生に講義する場面があります。 ワトニーは、火星で生き抜いていくことにおいて何か特殊な能力が求められた、ということは言いません。助けや協力が期待できない場所に放り出されることは誰もが陥りうる状況だ、と前置きしたうえで、次のように述べます。
You solve one problem... then you solve the next one. And then the next. And if you solve enough problems, you get to come home.
(引用元:同上)
目の前の一つの課題をこなすと、次の課題が現れる。その課題をこなすと、また次の課題が現れる。そしてそれらを次々にこなしていった先に、結果がある。
このワトニーの言葉は、すべての問題において当てはまる事です。どんな途方もない結果を達成しなえればいけないとしても、目の前の課題を一つ一つこなしていけば、いつか必ず到達できます。火星から生還することだって、不可能じゃないのかもしれません。
*** ワトニーが最後まで忘れなかったのがユーモアでした。自分を奮い立たせるため、仲間を安心させるため、ワトニーはいつもユーモアを忘れません。困難に押しつぶされないために、時にはこうした姿勢も持つべきなのだということが学べます。
いかに困難な課題に取り組まねばいけないとしても、柔軟な姿勢で協力しあって少しずつ取り組んでいけば、必ず結果はついてきます。自分には無理だと決めつけずにどんどん挑戦していきたいですね。
参考サイト Springfield! Springfield!|The Martian (2015) Movie Script 自分に負けないラボラトリー|映画「オデッセイ」の分かりにくい場面を解説します