学習する上で記憶は切っても切り離せない概念ですが、記憶する、記憶力が良いとは実際どういうことなのでしょうか。 今回は記憶について改めて整理し、正しく記憶するためにはどういうことを意識すれば良いのかまとめてみました。
記憶とは? それぞれの違い
ご存知の方も多いでしょうが、記憶は大きく分けると3つの種類が存在します。それは、「短期記憶」「ワーキングメモリ」そして「長期記憶」。
短期記憶とは、一時的に情報を保存しておくシステムで、新しく覚えようと思った事柄はまずここに収納されます。
ワーキングメモリは、日本語では作業記憶とも呼ばれており、短期記憶を発展させた概念なので少し似ています。短期記憶が情報の貯蔵機能を重視しているのに対し、ワーキングメモリは会話や読書、計算など様々な認知機能が働いている間に情報がどのように操作される変換されるかといった処理機能を重視しています。記憶だけでなく処理能力も担っている点が特徴ですね。
そして長期記憶とは、大量の情報を半永久的に保存しておくシステムで、短期記憶から長期記憶に移行してきた情報は消えることはないと言われています。
記憶のプロセス
記憶のプロセスは4つに分かれます。外部の情報を内側である記憶に取り込む「記銘」、情報を忘れずに覚えておく「保持」、情報を思い出す「想起」、そして保持していた情報が想起できなくなってしまう「忘却」です。
一般的に記憶力の良し悪しというのは、上の4つのうちの最初の3つの段階、「記銘→保持→想起」がいかに効率良くできるかに関わっていて、中でも情報のインプットである記銘が非常に大切です。
記銘は、情報がまず海馬に行き、そこから側頭葉に伝達されて初めてなされます。記銘ができないとき、その原因は、そもそも情報を保存するための海馬が正常にはたらいていないという場合と、海馬から側頭葉にうまく伝達されないという場合に大別されます。
つまり効率的に記憶したければ海馬を正しくはたらかせ、なおかつそこから側頭葉への移行をスムーズに行うようにすれば良いということになりますね。
余談ですが、世間で有名な記憶障害である認知症やアルツハイマーなどの病気は、海馬の萎縮といった原因から前者に分類されます。
海馬の活性化
記憶の最初のプロセスである記銘を正しく行う方法の1つめとして、海馬を活性化するということが挙げられます。
では、具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか。
手っ取り早いのは空腹時に勉強をすることです。飢餓を感じている時、海馬に密接している扁桃体が活性化され、それが海馬にも伝播し活性化するのです。
また、笑顔を作ることで「楽しい」という感情を擬似的に作り出し、扁桃体を活発に活動させることも可能です。勉強中は誰にも見られていないため、とびっきりの笑顔を作りながら机に向かうのが良いでしょう。
側頭葉への移行
記銘を正しく行う方法の2つめですが、海馬に貯蔵された情報が側頭葉へと送られ、「保持」段階にいかなくてはなりません。この側頭葉への移行というのはたった一つの行動中にしか起きません。
それが、睡眠中です。睡眠中に記憶が整理されたり定着したりするのは有名ですが、実は海馬の情報が側頭葉へと移行しているわけなのですね。
基本的に睡眠をとらないと体力的にも辛いため、みなさんは十分な睡眠時間を確保しようと考えているかと思いますが、何よりも大事な記憶は睡眠中にしか定着しないため、今後はいっそう睡眠に対して重きを置くべきです。
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情報のインプットである記銘において、まず海馬に情報を入れて、それを側頭葉に移行させなくてはいけません。 私たちの普段の生活にちょっとした工夫をするだけで、この二段階の効率を劇的にあげることができるので、ぜひ念頭において生活してみてください。
<参考> Wikipedia|記憶 Meredyth Daneman, Patricia A. Carpenter (1980) “Individual differences in working memory and reading,” Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, Vol. 19, No. 4, pp.450-466. アキュラ鍼灸院ブログ|ストレスに強い脳を作る「扁桃体を鍛える方法」 YouTube|夜にぐっすり眠ることに利点 -シャイ・マルク-