集中力アップのための音楽活用法。勉強中よりも “休憩中” に聴いたほうがベター!?

音楽の起源は有史以前からと考えられています。それから今日まで、音楽については数多くの研究が行われてきました。そこで今回は、『The Final Push』の著者である Mayo Oshin 氏が、米経済メディアの「Quartz at Work」で紹介した数々の研究などをもとに、音楽が生産性に与える影響について掘り下げていきます。

音楽の効果1:不安やストレスの軽減

コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンのひとつです。「ストレスホルモン」と呼ばれるのは、ストレスを受けたときに増えるものだから。過度なストレスは、仕事や勉強のパフォーマンスを大きく低下させるといいます。

『Trends in Cognitive Sciences』に掲載された2013年の研究によれば、音楽は健康と幸福感を向上させるとのこと。手術予定の患者に対し音楽の効果を確認したところ、音楽を聴いた患者は、抗不安薬を服用した患者よりも不安が少なく、コルチゾールレベルが低かったそうです。

音楽の効果2:反復的な作業パフォーマンスが向上

『This Is Your Brain on Music: The Science of a Human Obsession』の著者で、神経科学者の Daniel Levitin 教授によると、音楽は反復的な課題をより楽しくし、課題への集中力を高めるのだそう。

いつも手術中に音楽を聴くという、31~61歳までの男性外科医50人を対象にした1994年の研究では、音楽が「反復的な非外科的検査課題」を行う外科医のパフォーマンスを、向上させると発見しました。

音楽の効果3:運動パフォーマンスの向上

筑波大学陸上競技研究室が例に挙げた2006年の研究によると、音楽を聴いて運動したほうが、聴かないよりも「疲れを感じにくい」と示されたそうです。また2004年のある研究では、自転車エルゴメータ運動を“ややきつい”程度で12分間行った場合、音楽を聴いたほうが、聴かないよりも「走行距離が増加」したのだとか。

この結果について、音楽に合わせることでペースを一定に保つことができ、ペースの乱れを抑えられたのではないかと考えられているそう。

そのほか、1996年の研究では、テンポの速い曲を聴いたあとのほうが、音楽を聴かなかったよりも「握力テストの値が高い」と報告されているそう。1995年の研究でも、テンポの速い曲を聞いたあとのほうが、音楽を聴かなかったよりも「60m走のタイムが向上」したとのことです。

音楽の効果4:休憩時間に聴くと集中力アップ

カナダのトロント大学と、日本の長崎純心大学が共同研究を行い、2007年に『Psychology of Music』で発表した研究は、課題と課題のあいだに音楽を聴くと、「学業成績を上げ、長時間の集中を助ける」と示しました。

この研究で行われた実験の1つめは、カナダの大学生を対象にしたもの。アルビノーニのスローテンポな曲を聴いた学生よりも、モーツァルトのアップテンポな曲を聴いたあと、IQサブテスト(Symbol Search)を行った学生のほうが、より良い成績をおさめたそう。 ただし、効果が明白だったのは、音楽を聴いて気分に変化がもたらされた場合のみ

また、日本の5歳児を対象にした2つめの実験では、アルビノーニやモーツァルトを聴いたあとよりも、親しみのある子供の歌を歌ったり聴いたりしたあとのほうが、長時間集中してお絵描きできたそうです。さらに、その際の絵はとても創造的で、技術的にも熟達していたとのこと。

仕事や勉強の休憩時間に聴く音楽は、大人ならより気分が変化するような曲を、子供なら親しみのある音楽が好影響を及ぼすようです。

このように、多くの効果をもたらしてくれる音楽ですが、状況によっては悪影響を及ぼすか、まったく意味をなさない場合があります。

音楽の注意点1:歌詞があるとパフォーマンス低下?

オランダの学術誌『IOS Press』で2012年に公開された、台湾の輔仁大学(Fu Jen Catholic University)による研究では、歌詞のある BGM は作業者の注意とパフォーマンスを低下させるため、歌詞のない BGM が好ましいと示唆されました。

スウェーデン イェヴレ大学による2012年の研究でも、明瞭度の高い音声は、情報検索タスクのパフォーマンスを低下させると見出しています。

音楽の注意点2:強すぎる運動には効果なし?

筑波大学陸上競技研究室は2009年のある研究を例に挙げ、疲労困憊になるまでランニングを行った場合、音楽を聴いても聴かなくても走行距離に変化はなく主観的疲労度(RPE)にも変わりなかったと伝えています。

2004年のある研究でも、ランニングマシーンを用いて徐々に運動強度を高め疲労困憊するまでテストを行ったところ、低い運動強度だと音楽を聴いたほうが主観的な疲労度は低い値でしたが、疲労困憊の状態に近づくにつれ、音楽を聴かなかった場合と変わらなくなったとのこと。

あまりにも“きつい”運動をしているときは、音楽どころではないようです。

音楽の注意点3:内向的な人はより注意?

学術雑誌『Applied Cognitive Psychology』に掲載された研究では、ポップミュージックを聴くか、あるいは静かな環境で認知テストを行った場合、内向的な人と外向的な人では、どう差が出るか調査を行いました。

認知テストのひとつは即時想起と遅延想起を必要とする記憶テスト、もうひとつは読解力のテストです。その結果、ポップミュージックは両グループの即時想起テストに悪影響を及ぼしたとのこと。少し間をあけた遅延想起テストでは、外交的な人よりも、内向的な人のほうが、より劣っていたそうです。

さらに、ポップミュージックを聴きながら読解力のタスクを行った内向的な人は、外向的な人よりもかなり悪い成績を示したのだとか。

何かを覚えたり物事を解釈したりといった、認知的なタスクを行うとき、できるだけ音楽は避けたほうがよさそうです。とくに、自分は内向的なほうだと思うならばご注意を。

音楽が生産性に与える影響について

以上を踏まえると、音楽が生産性に与える「正」の影響は、真正面からいえば6割程度といったところでしょうか。しかし、音楽を聴くタイミング、タスクの考慮、聴く音楽をうまく選ぶようにすれば、音楽が生産性に与える「正」の影響は【8割方】といってもいいかもしれません。音楽の好みによる差、音楽に慣れ親しんでいるか否か、音楽自体を好む好まないという違いによる影響は、未知数の2割としておきましょう。

いずれにせよ、音楽による影響をまとめると、以下のようになります。

【音楽で「正」の影響がもたらされる状況】

不安やストレスを軽減してくれる:不安な物事の前に聴く反復的な作業パフォーマンス向上:作業しながら聴く低強度の運動パフォーマンスを上げる:聴きながら運動疲労困憊しない高強度の運動パフォーマンスを上げる:テンポの速い曲を聴いたあと運動集中力、創造力、技術力アップ:休憩時間に音楽を聴いて気分を変える

音楽で「負」の影響がもたらされる状況

明瞭度が高く歌詞がある音楽を聴きながら作業:作業パフォーマンス低下音楽を聴きながら疲労困憊するほどの運動:パフォーマンスも疲れも変わりなしポップミュージックを聴きながら認知テスト:記憶力と読解力が低下内向的な人が音楽を聴きながら認知テスト:より記憶力と読解力が低下

*** 今回は、音楽が生産性に与える影響について掘り下げました。しかし、生産性などは関係なく、自分の好きな音楽を聴くことは、心身にいい影響を与えてくれるという認識は間違いありません。ファンクショナルMRI(fMRI)で調べると、音楽が脳に届くことにより、快楽ホルモンのドーパミンや、幸せホルモンのセロトニンなどが分泌されるそう。

ぜひ休日や日々のリラックスタイムには、好きな音楽でくつろいでくださいね。

なお、集中力を保つ方法については、「勉強に集中する方法まとめ。音楽・場所・食べ物を利用しよう」でも詳しく紹介しています。ぜひご参照ください。

(参考) Quartz at Work|Management news, advice, and ideas for business leaders Trends in Cognitive Sciences|The neurochemistry of music IOS Press|Background music: Effects on attention performance ScienceDirect.com | Cognitive performance during irrelevant speech: Effects of speech intelligibility and office-task characteristics JAMA Network|Effects of Music on Cardiovascular Reactivity Among Surgeons SAGE Journals|Exposure to music and cognitive performance: tests of children and adults 筑波大学 陸上競技研究室|Rikupedia −陸上競技の理論と実際− ヤクルト中央研究所|健康用語の基礎知識|コルチゾール ウーマンエキサイト|「音楽を聴いてリラックスできる」は、本当?(2018年6月11日)

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