集中できないのは “塩分量” が原因かも。脳を働かせる「適塩」のテクニック。

理由が見つからないのに「頭が働かない、仕事でミスが多い、だるくてやる気が起きない」というときは、自分が摂取している「塩分の量」について、少し考えてみてください。脳の健康にはとても大切なんですよ。

塩分量は、脳の健康に影響を及ぼす

減塩という言葉を、体の健康を守るキーワードとして知る方は多いでしょう。塩分のとりすぎが、高血圧の原因と考えられていることも有名ですよね。でも実は体のみならず、脳の健康にも深く関与している可能性が高いのです。

ワイルコーネル医科大学(米ニューヨーク市)のCostantino Iadecola氏ら研究グループが行ったマウスの実験では、「塩分の多い食餌によって腸内の免疫系に変化が生じ、それが認知機能低下の原因になる可能性がある」と分かったそう。(2018年1月論文掲載)

まず、高塩分の食餌によって、マウスの腸内でTH17という細胞が増加します。するとTH17がIL-17(炎症促進性分子)を放出し、その濃度が血液中で上昇すると血管が不具合を起こし、脳血流量が減少、そして認知機能が低下するとのこと。つまり、原因は、血液中におけるIL-17濃度の上昇というわけです。そして、そのIL-17は、私たち人間の脳内にも同じような影響を及ぼすのだとか。

なお、その時点で血圧には変化がなかったそうですが、そもそも高血圧症は脳の機能低下が原因だといいます。

高血圧の原因は脳が機能しないから

九州大学循環器病未来医療研究センター准教授の岸拓弥氏は、脳がしっかり機能してさえいれば、高血圧にはならないと説明しています。

もしも塩分をとりすぎて一時的に血圧が上がったとしても、圧力の変化を感知することで脳が働き、尿として体外に排出されるからです。これを圧利尿のメカニズムといい、それにより体内のナトリウム(塩分)が減り、血圧を下げるとのこと。

しかし、過剰な塩分摂取でこの状況が度重なると、正常に反応できなくなってしまうのだとか。つまり高血圧とは、血圧が上がっていることに脳が反応せず、血圧が高いままになった状態なのだそうです。それは、塩分のとりすぎが、やはり脳の機能を低下させるということも意味しています。それに以前から、高血圧は認知機能の低下や認知症のリスクを高めるといわれています。

では、徹底的な「減塩」がベストなのでしょうか? 実はそうでもありません。

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塩分不足も脳の働きを鈍らせる

人間の血液は、常に0.9%の塩分濃度を保つ必要があるそう。塩がないと、私たちは生きていけません。

ソルトコーディネーターの青山志穂さんは、塩分の過剰摂取はもちろん有害だが、誰にとっても減塩がよいわけではないといいます。例えば野菜をたくさん摂取している人は、野菜に含まれるカリウムの働きで塩分不足になる場合があるのだとか。したがって、もしも体の冷えやだるさを感じたら、少しだけ塩分を増やすなど調節してみたほうがいいそう。

もちろん、汗とともに塩分も体外に排出されるので、季節の変化に応じた塩分摂取量の調節が必要です。そのほか、年齢を重ねると体内の水分が減少するため、塩分濃度が上がらないようバランスをとり、塩分を控える必要があります。逆をいえば、体内の水分が十分な若い世代が減塩しすぎると、塩分濃度が過度に低くなるため、むしろ健康によくない場合もあるということ。

また、集中力を上げたいときに必要なビタミンB1は、ナトリウム(塩分)がなければ吸収されないのだとか。つまり、若く健康な体で、むやみに減塩していると、集中力が低下して体がだるくなってしまう可能性があるわけです。

減塩ではなく、「適塩」が正解なのですね。

脳の働きをよくするための適塩テクニック

私たちが塩分を過剰に摂取するのは簡単です。なぜならば、お蕎麦やうどんの汁、味噌汁、インスタント食品やスナック菓子、かまぼこやソーセージ、ハム等の練り製品などなど、塩分過多になる要素は私たちのまわりにたくさんあるから。

とはいえ、塩分をとることも大切なので全てを排除するのではなく、汁物は飲みきらない、味噌汁は1日1杯まで、インスタント食品やスナック、練り製品などを食べる頻度を少なくするだけでも、いい適塩習慣になります。

それに加え、簡単に取り入れられる適塩テクニックをご紹介します。ポイントは塩分をとりすぎず、適度に摂取して、美味しく食べること。

1.醤油、塩、ソース、ケチャップなどは“かける”と過多になりやすいので、“つけて”美味しく食べる 2.薄味でも美味しくなるよう、かつお節やレモン、昆布の粉末(塩分なし)や七味、ゴマ油など、うま味の出る食材・香辛料・油を活用 3.塩っ辛いものを食べる際は、体外に排出しやすくなるよう野菜、海藻類、イモ類、リンゴやバナナなどカリウムを多く含むものも一緒にとる  4.肺をしっかり膨らませて筋肉を使う適度な運動で、副交感神経を活性化させる 5.「楽しく食事をする」ということを心がけ、副交感神経を活性化させる

※3に関して、カリウムを意識的に摂取するのは腎臓に病気がない方に限ります。(腎臓が正常に機能していると、尿とともにカリウムが排泄されるが、腎不全などで腎臓がうまく機能しなくなるとカリウム濃度が高くなり、高カリウム血症になってしまうから) ※4と5に関して、副交感神経を活性化する理由は、それにより圧利尿のメカニズムが回復する可能性があるからです。

*** 適度に塩分を摂取し、美味しく食べて、脳も元気にしてくださいね。

(参考) Nature Research|塩分の多い食餌が脳の健康に悪影響を及ぼす仕組み メディカルノート|高血圧の原因―塩分のとりすぎで脳がきちんと機能しなくなる MYLOHAS|減塩すれば健康になれる? 塩の摂り方・選び方Q&A 日本医師会|塩分と糖分 リクナビNEXTジャーナル|減塩で集中力を低下させる事も?知っておきたい仕事に効く栄養にまつわる知識4つ 農林水産省|塩分の取りすぎに注意 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス|[118] 美味しく減塩 “かるしお” のすすめ ADPKD.JP ~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~ 大塚製薬| 栄養素から見た腎臓~腎由来のさまざまな血症 |第2回 カリウム FRONTEOヘルスケア|血圧の変動幅が大きいと、脳機能の低下が早まる可能性が高い

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