ビジネスシーンでもプライベートでも、自分の要求を相手にすんなり通すことができたらいいと思いませんか?ここでは、相手に自分の望む行動を起こさせる「伝え方」の仕方を紹介します。
「自分の要求を叶えたい」と思う時には、相手への伝え方に細心の注意を払わなくてはいけません。「親にエレキギターを買ってほしい女子高校生Aさん」を例にとった場合で考えてみましょう。Aさんはまず最初に、「自分がなぜギターが欲しいのか」「どんなにギターをやりたいいのか」「自分が欲しいギターはどんなタイプなのか」などをご両親に伝えるでしょう。これは間違っていません。しかし、これだけで終わってしまっては単なる要求の押し付けにすぎず、親が納得して買ってくれる可能性は低いでしょう。
説明の目的をしっかりと持つ
相手に要求をのませるには、「情報を伝える」、「相手に行動を起こさせる」の二つのステップが必要です。上の説明は、Aさんからの一方的な「情報を伝える」段階でストップしています。必死に説明するうちに、説明をすること自体が目的になってしまうことは多々ありますが、これは独りよがりになる可能性大なので要注意。
Aさんの目的は「エレキギターを買ってもらうこと」。この最終目的をしっかりと意識をすることで、自然と相手の行動を促す説明に変わっていくはずです。それには一体どんな方法があるでしょうか?
「イエス・セット」を利用する
臨床催眠家のミルトン・エリクソンがセラピーで使っていた技法に「イエス・セット」というものがあります。これは相手がイエスと答えるしかない質問を続けることで、質問者に対して肯定的な反応を起こさせるテクニックです。
A「一生懸命になるって良いことだよね」
母「そうね(イエス)」
A「お母さん私が何かに一生懸命になったら応援してくれるよね」
母「もちろん(イエス)」
A「好きなことほど打ち込めるよね」
母「まあそうね(イエス)」
A「一生懸命やるからエレキギター買ってほしいんだけど」
母「イエス!!!」
この方法のポイントは、どんな質問に相手が「イエス」というのかをあらかじめ把握しておくことです。前の質問が肯定しやすいものであるほど、最後のイエスも導きやすくなります。 ただし、必ずしも上の例のように簡単にいくわけではないのでご注意を。
どんなに熱く説明しても実は伝わっていないかも?
「希望を伝えて相手にOKをもらう」ことの重要性は、ビジネスシーンでこそ多く見られます。しかしどんなに有能なビジネスマンであっても、自分の要求を本当に伝えるのは難しいこと。そのことを何年も経ってから実感した、と話すのはIT企業の勝ち組、サイバーエージェントの藤田晋氏です。
2004年にスタートしたAmeba事業の拡大で急成長を遂げた同社ですが、そこに至るまで社内で何度も何度も「メディアを育てないと会社が大きくなれない」と言い続けていました。しかし、成功後に自分の著書であらためてその必要性を書いた時「そんなこと、全然知りませんでした」「やっと意味が分かりました」と社内で言われ、「本当に通じていなかったのだ」と愕然としたそうです。
藤田氏本人も「伝わっていない感」はずっとあったそうなので、いかに熱心に説明を続けても、それだけでは他人には届かないことが分かります。
大切なのは相手の心を読む技術…?
2013年に発売され40日間で20万部、現在までに60万部以上を売り上げているコピーライターの佐々木圭一氏が書いた「伝え方が9割」には、「依頼や誘いの内容は同じでも、伝え方次第で相手の返事は「ノー」にも「イエス」にもなる」と書かれています。つまり、いかに伝え方が重要か、ということで、相手に「イエス」と言ってもらために必要なのは以下の三点だそう。
1.自分の頭の中をそのままコトバにしない 2.相手の頭の中を想像する 3.相手のメリットと一致するお願いをつくる
この手法を知ると、「ギターが欲しい欲しい欲しい!だって○○だから!××だから!」と訴えることは、1~3の全てを無視した方法で、親が「イエス」という行動(実際に買ってくれる)を起こす可能性は極めて低いことが分かるでしょう。
いかがでしたか。親に欲しいものを買ってもらう時も、何千人もの社員に同じ目的を持って動いてもらうのも、成功の鍵は「伝え方」にあることが分かりました。今後はもう少し戦略的にお願いをし、いつの間にかあなたの要求を叶えてしまいましょう。
参考
鶴野充茂,(2012),『頭のいい説明「すぐできる」コツ』,知的生き方文庫
Rubin Battino, Thomas L. South,(2005)『Ericksonian Approaches: A Comprehensive Manual』,Crown House Pub Ltd
「伝え方が9割」佐々木圭一著 ダイアモンド社(2013) ダイアモンド社書籍オンライン|伝え方を身につけたら日本の企業は強くなる