「立場が人をつくる」という言葉を聞いたことがありますか? たとえば会社において、最初から部長である人も、生まれながらに課長にふさわしい人も存在しません。肩書きや役職を得ることで、自分自身でその立場にふさわしい人間になるように意識的にも無意識にも努力し、その結果、数年経つと素晴らしい部長になっている、ということです。 僕はそのことを、学生時代の家庭教師のアルバイトの経験から学びました。今回は、日々の業務にも必ずいかせる、「自分を成長させるために必要な、意識の持ち方」についてお話しいたします。
ミスだらけだった僕に異変が……?
僕は大学に入学してすぐに家庭教師のアルバイトを始め、結果として7年間続けることになりました。大学に入る前は、数学と物理しか得意科目が無い割に計算ミスもやたらと多い学生でした。「ミスってどうやったらなくなるのだろう……とよく考えたものの、解決策は全く見つかりませんでした。
ところが家庭教師をしていると、教科を問わず生徒のミスをやたらと発見できる自分に気がつきました。自分が生徒だったときは全然発見できなかったミスが、それはカンタンに見つかるのです。 自分の計算ミスは自分がそうだと思い込んで解いているので、いくら見直したとしても気がつきにくいのも当然ですが、その違いを差し引いても自分が以前よりずっと注意深くなっていたのです。
自分がはるかに注意深くなった理由
そこで「なぜ自分が急に注意深くなったのか」を考えてみました。思いつく理由は以下の3点です。
1.自分の経験の蓄積に加え、問題を客観視できたことで自分の思考パターンを認識できた 2.プロフェッショナル感によって責任感が大きくなった 3.「教師」という肩書きが成長させた
1について:複数の視点を持つことは非常に重要です。回答者としてだけではなく、出題者の意図を考えてみたり、一般的な回答者の考え方などを考慮するなど、様々な立場からその問題を感じることで、回答者としての思考が深まります。
2について:小額でもお金のやり取りが発生すると人間は責任感が増すものです。それにより普段より注意深くもなり、また結果を残さなければならないというプレッシャーにもつながります。
3について:「学校の先生」という立場で考えるとイメージしやすいですが、教師がミスしたらかっこ悪いですよね? そうなりたくないという思いから責任感が増大します。さらに、人に教えるという行為は自分の理解を深めます。 学生時代に優等生のクラスメートに、ノートを借りたり教えてもらったりとお世話になった方も多くいると思います。教えている側の彼らもまた、それにより自分の知識や理解を深めて地位を確固たるものにしていたのです。
ビジネスマンとしてどう活かすか
学生時代の家庭教師を通しての気付きを、ビジネスマンである今の自分にも当てはめることができます。自分が当事者としてではなく俯瞰して見る立場になると、今まで見えなかった問題点や特徴が目に入ります。これはどんな状況であれ実践可能です。
またビジネスマンは、プロフェッショナルであるべきです。“プロフェッショナル”の細かい定義はここでは論じませんが、私たちは求められる自分の業務を果たすことでお金をいただきます。 クライアントは私たちにお金を払ってくれているので、当然期待以上の結果を出すことを求められます。直接のクライアントとの窓口を請け負う営業担当、はさらにその意識、つまり責任感が強くなると思います。その要求にこたえていくのが、プロとしてのあるべき姿です。
「立場」による成長の加速
さて、ここまではいわば当たり前なのですが、3つ目のポジショニングができるようになると成長は加速します。
肩書きに関しては、企業にお勤めの方であれば少なからず意識にあると思います。「成長するにはベンチャーだ!」という台詞は、ベンチャー企業の新卒リクルーティング活動における1つの決まり文句になっています。この言葉だけを盲信すべきでありませんが、たとえ小額でも早いうちから自分で仕事を動かすという経験ができるのはベンチャー企業の一番のウリだと思います。 20代から課長や部長といった肩書きがつくことも珍しくありません。肩書きを持って取引先と渡り合うこと、また部下を持つことは非常に有意義な経験です。
肩書きがなくても、自ら教える機会をつくろう
では、年功序列を重視する大企業に入社して当分肩書きもつかなそうだ、部下も出来なそうだという方はどうすればいいのでしょうか。 これはあくまで一例ですが、実際僕は超年功序列な組織の中で仕事をし、肩書きもなければ部下もできない、ましてや後輩すらできないという状況が数年続きました。その状況下でも、取引先に対して「教える」という立場を実践していました。 営業マンとして自分たちの実績セールス案件についてのプレゼンテーションを幾度となく実施していたのです。
相手によっては自分よりキャリアがある場合ももちろんあります。しかし、お金を頂く立場である以上、自分の方が知識が深くて当然なのです。少々ハッタリをかますつもりであっても主導権を握って、プレゼンしたり教える(情報を共有する)機会を作りましょう。
有意義な情報提供であれば相手に喜ばれる上に、自分自身の成長にもつながります。 どんな立場であっても、たとえ肩書きが無かったとしても「社を代表して」取引先と対峙しているというプロフェッショナル意識があなたを確実に成長させてくれます。 また、嫌がられるかもしれませんが、友人たちと飲みに行って仕事の話になった時でも、同じような意識で話すといい練習になります。
*** いかがでしたか。会社、立場、役職によって簡単に人に教えられる人も、そういう機会が難しい人もいらっしゃるでしょう。 その中でもどうにか、それぞれの立場で“教える立場”をとる方法を模索し、実践してみてください。自分の現状を客観視でき、業務や足りない部分を見直すことができるはずです。
《参考文献》 Newspicks | 俳優 向井理 仕事論「一円でもお金を貰ったらプロの仕事をする」 P・F・ドラッカー | 「ドラッカー名著集7 断絶の時代」 | ダイヤモンド社