気が付くとやるべきことが溜まってしまい、どこから手を付けて良いか分からなくなった経験はありませんか? 「この予定、後でやろう」というささいな先延ばしが、積もり積もって大きな山になることは多くの人の悩みです。
例えば、このような調査結果があります。オリジナルの習慣化理論とメソッドを持つ習慣化コンサルタントの古川武士氏が100人を対象に行った調査によると、やめたい・直したいと思っている習慣の第1位に「嫌なことを先延ばしにする」習慣がランクイン。51人もの人が、先延ばしの癖で困っていると回答したのです。
仕事においても勉強においても、やるべきことを次から次へと片付ける「デキる人」になるためには、先延ばしの4つの原因を理解することが大切。先延ばしのメカニズムを理解し、物事を後回しにしないスキルをを身に付けましょう。
先延ばしの原因:失敗への恐れと完璧主義
物事にすぐ取り掛かれないのは、あなたの意志が弱いからでも、他の仕事で手一杯だからでもありません。学習環境についての専門誌「College Success」に掲載された「Coping with procrastination(先延ばしに対処する)」という記事では、先延ばしの4つの原因を次のように指摘しています。まず2つのポイントについて紹介しましょう。
原因1. やってもうまくいかないという不安がある
目の前のことに取り組んだとしても、それが思うような成果につながらないのではないか、と考えてしまうことが行動の妨げになることがあります。いわゆる「失敗への恐れ」です。
例えば、あなたには来週スピーチをする機会があり、そのための練習しなければなりません。けれどどうしてもやる気が起きない。それは心のどこかに「練習しても、本番では緊張して忘れてしまうんじゃないか」という不安感があるからかもしれないのです。でも考えてみてください。練習もしないで本番うまくいくはずがありませんね。本当に必要なのは「少しずつでもいいから、目の前の練習からスタートすることだ」ということを思い出しましょう。
原因2. 完璧主義
「成果もプロセスも完全なものであるべきだ」と思っていると、なかなか一歩目が踏み出せません。完璧を追求するあまり、完璧にできない以上手を出せない、という状態になってしまうのです。けれど、完全な状態には程遠くても、いくつかのステップは進められることがよくあります。
記事では、完璧主義を捨てるための考え方としてアスリートを参考にしています。本当のチャンピオンは、勝負の時も他の選手に勝とうとはしないのだそう。過去の自分のベストパフォーマンスを超えることにだけに集中するのだといいます。そうすれば、「ライバルに勝つことが一番なのだから、負けてはいけない」といった不安を抱えることなく、目の前の競技に全力を注ぐことができるのです。
ですから私たちも、「まずは今の自分にできることに集中しよう」と考えることが大切です。
例:堀江貴文氏に学ぶ、先延ばしにしない考え方
これら2つの特徴が分かりやすく表れている人物の例として、実業家として成功を収める堀江貴文氏を挙げることができます。
脳科学者の茂木健一郎氏は、行動を起こす前に慎重に検討しすぎることが原因で物後を先延ばしにしてしまう癖を直すためには、堀江氏の考え方を参考にするといいと言います。
「おっちょこちょいを増やしたい」と(堀江氏は)いうのです。 よく聞いてみると、彼の言う「おっちょこちょい」とは、単なる思慮の足りない人という意味ではありません。「成功するかどうかわからないけれど、とりあえずやってみる人」のことであるとわかってきました
(引用元:ダ・ヴィンチニュース|ホリエモンも錦織圭選手も「脳」に共通点あり? “おっちょこちょい”こそ成功の秘訣!)
失敗や完璧にできないことを恐れていては、挑戦することなどできません。挑戦なくしては成功もないのですから、先延ばしにしないマインドを持つことは成果にもつながることなのだと言えるでしょう。
先延ばしの原因:目的への理解不足と脱力状態
先延ばしの原因の続きとして、「Coping with procrastination」の記事では次の2つについても言及しています。
原因3. 行為自体からモチベーションが得られない
楽しくない物事に、進んで取り組むことは難しいでしょう。
わかりやすい例を挙げてみます。あなたが友人から、「これからはプログラミングができると就職に有利らしいよ」と教わり、一念発起してプログラミングの勉強を始めたとします。けれどなかなか続かない。それは、そもそもあなたのやりたいことではないし、楽しくないからなのです。
また、日本で行われた別の研究からは、自分に必要なことだと分かっていても「本当にこれを進めて良いの?」と不安になる「行動疑念(自分の行動に漠然とした疑いを持つこと)」も、行動できない原因であるということが分かっています(2008, 藤田)。それを防ぐためには、目的を見直すことも必要。上の例でいえば、就職に有利だからといって、本当に自分にはプログラミングを学ぶことが適しているのか? ということをしっかり考え直すということです。
絶対に必要なタスクならともかく、やらなくても良いことや目的をはき違えていることを、後ろ向きな気持ちのまま無理にやろうとするのはやめましょう。
原因4. 脱力状態に陥っている
最後に挙げられる原因は、疲れすぎてやる気がでないパターンです。ストレスが多い日が続くと、体にも心にも大きな負担がかかります。この状態が慢性化すると、やる気をだそうと頑張ってみても、一向に気分が上向かない「脱力状態」に陥ることになります。思考力・判断力が鈍るのでミスも多くなることでしょう。
そうならないためには、ペース配分を調整しなければなりません。フルマラソンを最初から全力疾走するのが危険であり無理であるように、仕事や勉強においても、自分の健康状態に見合ったペースを意識しましょう。
一日の徹夜で得られる成果と、毎日一定のリズムで続けた場合に得られる成果を考えたうえで行動できると、生産性が上がります。
*** 上の4点を意識するだけで、先延ばしすることなく行動することができるようになるだけでなく、自分の行動に自信が生まれるようになります。その結果、もっともっと行動できるようになる好循環を作り出すこともできるのです。
物事を先延ばしにしがちな人は、ぜひ現在の自分の状態と比較して、心当たりのある原因があれば改善しましょう。
(参考) Rebecca Moore, Barbara Baker, Arnold Packer, 1997, Coping with Procrastination, College Success. 藤田正, 2008, 大学生の完全主義傾向と先延ばし行動の関係について, 奈良教育大学教育実践総合センター研究紀要, 17, pp.125-128. 日本実業出版社|デキる! といわれるシゴト習慣術【連載第4回】 やめたい習慣第1位「先延ばしグセ」を直す方法 ダ・ヴィンチニュース|ホリエモンも錦織圭選手も「脳」に共通点あり? “おっちょこちょい”こそ成功の秘訣!