人に何かを伝えることは、うまく言えないもどかしさを感じたり、ちゃんと相手に伝わったか不安になったり、なかなか難しいものですよね。それが仕事や面接だとしたらなおさらです。
しかし、伝え方にはセオリーがあるので、そのポイントさえ押さえれば大丈夫。知って、実践して、今日から「説明上手」になりましょう。
「説明上手」な人とは
説明には「知的さ」「聡明さ」「コミュニケーション力」が必要となりますが、これはビジネスにおいても重要な能力です。つまり説明上手な人は仕事がデキる人と言えるでしょう。
また、なぜか話に惹きこまれてしまう人っていますよね。“解説のプロ” である池上彰氏や林修先生はその筆頭です。その道のトップまで登りつめることができたお二人の強みは「説明上手」をさらに超えた「納得力」。人を納得させることができる“話術”が彼らを押し上げたのは間違いありません。
すぐに “解説のプロ” になるのは難しいかもしれませんが、伝え方を覚えて説明上手になれたら、ビジネスの場で活躍できるはず。
「説明下手」の5つの特徴
反対に、話がわかりにくい人や説明が下手な人はどんな話し方をするのでしょう。
1.(構成)話が長い→要点がわかりにくい
2.(言葉の選び方)専門用語や難しい言葉を多用する→相手目線になっていない
3.(表現)「……だと思います」など曖昧な表現が多い→説得力に欠ける
4.(話し方)声が小さい、早口→自信がない印象を与える
5.(体の使い方)余計な仕草が多い、相手を見ない→集中を妨げ、熱意が伝わらない
当てはまるものはありましたか? 自分の欠点を知ることは改善への第一歩です。この5つを覚えておくだけでも、説明上手に近づいているはずですよ。
「説明上手」になるためのコツ
さあいよいよ、「伝える」コツを知ってスキルアップを目指しましょう。
まず、伝えるための大前提を考えてみます。それは「相手の視点で考える」ということ。「自分が伝えたいことを話す」のではなく、「相手が知りたいことを話す」ことが最重要です。相手のメリットを常に念頭に置いて考える癖をつけましょう。
例えば、商品を販売するとき、それがいかに良いものか説明するでしょう。その際、たくさんあるセールスポイントをただ羅列するよりも、お客様の要望を聞き出し、それに合ったポイントを強調するほうが効果的です。「説明」は「聞くこと」から。自分の価値観を押し売りするのではなく、相手の意向に沿った説明を心がけましょう。
「伝える」ための3つのテクニック
相手を知ったうえで次に必要なのは “伝えるテクニック” です。池上彰氏をはじめ、“伝える” プロたち直伝の実践テクニックをご紹介します。
1. 最初に“話の全体像”を示す 冒頭の「つかみ」で相手の心をつかむことが説明を成功させるためにとても大きな役割を果たします。質問やキーワードで興味を引いたり、最初に結論をはっきりさせたりすることで、話の全体像を頭に描いてもらうようにしましょう。
石油といえば中東というイメージを持っていませんか? それはもう時代遅れかもしれません。いちばん石油が取れる国は中東じゃなくなりました。あなたが知っている常識が今変わりつつあります。「今世界はどう変わろうとしているのか」「日本はどうなるのか」ということを、今日は知的なゲームを通じて考えていこうと思います。
(引用元:テレビ朝日『池上彰のニュースそうだったのか!! 2時間SP』2018年1月27日放送)
このように話の流れが見え、興味をそそるような始め方ができれば、聴衆の聞くモチベーションも高まるでしょう。
2. 文は簡潔に ■要点は3つに整理 話したいことを箇条書きに書き出し、それを3つまで絞り込んでいきます。人がメモなしで記憶できるのはだいたい3つまで。それにより要点も強調されます。
■文章は短く 聞き手を退屈させないためには、センテンスは短くすること。ひとつの文にひとつの意味が基本です。短文を繰り返すことで話にリズムが生まれ、内容も印象に残りやすくなります。会議では合間に相手も質問しやすいため、活発な意見交換をも促す傾向も。
■接続詞を使わない 「そして」「それから」などの接続詞を多用すると幼稚な印象を与えます。池上氏曰く、本来論理的な文章ならば必要ない言葉のため、これらを使わずに書こうと努力すると読みやすい文章を書けるようになるそうです。
3. 上司への報告は「新聞型」 場面によって、説明のスタイル(文の構成)を変えることはとても有効です。例えば上司に仕事の進捗情報や結果を報告するとき。求められるのは的確かつ簡潔であることです。それにぴったりなのが「新聞型」トーク。新聞コラムの「見出し」→「リード」→「本文」という構成を応用するのです。
例を挙げてみましょう。
「新規開拓していた〇〇社ですが、先方から連絡がありまして、社内でも意見が分かれて検討に時間がかかったそうです。ただ、△△という条件であれば、取引してくださるということで、まずは4月までにAを◎個納品して欲しいと言われました。」
これを「新聞型」で構成し直します。
「A社より〇〇の◎個の受注が決まりました」(見出し) 「納期は4月まで。条件は△△することです」(リード)
このように簡潔に報告し、詳細の説明を求められたら「本文」にあたる決定までの経緯を話しましょう。相手がどこまでの情報を求めているか見極めることで、話の時短になるため、結果的に忙しい上司への気配りにもなります。
説明力をつけるトレーニング法「エレベーターテスト」
ここまで見てきたように、説明上手になるためには、全体をシンプルにまとめあげるスキルが必要です。しかし、なかなか話を簡潔にまとめることは難しいですよね。
今回のコラムでは最後に、その説明力をつけるトレーニング法「エレベーターテスト」を紹介します。これは、“エレベーターに居合わせた重役に30秒間で自分のアイディアをいかにアピールできるか” というシリコンバレー発祥の方法です。ポイントは話す順序。“大きいことから小さいことに” が基本です。
(1) まず結論:「A社と取引が決まりました。」 (2)簡潔な説明:「◎月納品で〇〇を△個受注しました。」 (3)補足、まとめなど:「ご希望であれば詳細を後ほどご説明いたします。」
趣味や好きな食べ物のことなどテーマはなんでも大丈夫。時間を計って訓練してみてください。
*** “いい説明” とは、相手を理解し、自分も理解してもらうこと。家族や友人とのコミュニケーションでも大切なことですね。上達のヒントは日常にもちりばめられています。テレビCMや番組を参考にしたり、会話するとき相手目線になる癖をつけるなど、小さな努力で着実な成果を引き寄せましょう。
(参考) NIKKEI STYLE |話を聞いてもらう3つのコツ 聞き手つかむ「端簡正」 リクナビNEXTジャーナル|「話を上手に伝えたい!」“説得力のある人”になるための7つのコツ 東洋経済ONLINE|地頭の良い人は「簡潔な説明」が上手すぎる 今すぐ真似できる「3つのポイント」とは? 池上彰 著(2009), 『わかりやすく<伝える>技術』, 講談社.