「昭和最大の黒幕」に学ぶ、問題解決のための「思考の三原則」の実践法

大正から昭和に活躍した陽明学者の安岡正篤(まさひろ)。安岡は、東洋思想の研究と教化運動で政財界に影響を与え、戦時中から政治家らのアドバイザーとして影響力を持っていたほか、昭和天皇による玉音放送に加筆して完成原稿を仕上げたことから皇室からの信頼も厚く、「昭和最大の黒幕」と呼ばれていました。

そんな安岡が説いた「思考の三原則」という思考法があります。これは、現在でもあらゆる場面での物の考え方に応用することができる、非常に優れた思考法です。決断すべき時、難題に向かう時、大きなプロジェクトに取り組む時。どんなときにも、この思考法があれば、あなたの判断や行動はより的確なものになります。

今回は、「思考の三原則」と、その実践法についてご紹介します。

「思考の三原則」とは

安岡は、著書『安岡正篤一日一言』で、以下のように述べています。

私は物事を、特に難しい問題を考えるときには、いつも三つの原則に依る様に努めている。 第一は、目先に捉われないで、出来るだけ長い目で見ること。 第二は、物事の一面に捉われないで、出来るだけ多面的に、出来れば全面的に見ること。 第三に、何事によらず枝葉末節に捉われず、根本的に考える。 目先だけで見たり、一面的に考えたり、枝葉末節からだけで見るのと、長期的、多面的、根本的に考えるというのとでは大変な違いがある。物事によっては、その結論が全く正反対ということになることが少なくない。 我々は難しい問題にぶつかる度に此の心掛を忘れてはならぬ

[引用元:安岡正篤著(2006),『安岡正篤一日一言』,致知出版社.]

長い目で見る、多面的に見る、根本的に見る。

一見当たり前のように見える、この思考の三原則。しかし、当たり前でいて、実は難しいもの。実践できているという人は、意外と少ないのではないでしょうか。では、この原則の実践法について、考えてみたいと思います。

一、長期的に見る

私達は、決断に迫られた時、つい目先の利益や優先度の高さで判断してしまいがちです。しかし、そうした近視眼的なものの見方をしていると、大事なことを見落としてしまったり、最終的に誤った判断をしてしまいかねません。では、長期的に見て正しい判断をするためには、何を基準にすればよいのでしょうか。

それは、『緊急でないが重要なこと』を優先することです。

リーダーシップ研究の第一人者であるスティーブン・R・コヴィー氏は、著書『7つの習慣』の中で、人生においてはこの、『緊急でないが重要なこと』を重視することが成功の鍵であると述べています。

多くの人は、締切がある目先の課題(緊急で重要なこと)を優先しがちです。そうして『本当に自分のやりたいこと』(緊急でないが重要なこと)ができずに、後悔することになるのです。

時間の制限に関係なく重要なことというのは、その物や人、事にとって、真に重要なことだと言えます。

何か難しい問題に取り組むとき、目先の利益だけを考えるのではなく、その問題にとって真に重要なことは何かを長期的な視点で考える姿勢が大切なのではないでしょうか。

二、多面的に見る

物事を多面的に見ることは、自分の視点を脱することでもあります。自分にとっては役に立たないと感じられるものでも、それを便利だと感じる人がいるように、人の感じ方は様々なのです。

そうした様々な感じ方や考え方を持ち、問題を多面的に検討していくためにおすすめなトレーニングが、エコノミストの浜矩子氏が提唱する、「名探偵になりきる」という方法です。

推理小説の中で、名探偵は事実を疑い、ありとあらゆる方向から事件を分析します。そんな名探偵にならい、例えば、新聞や雑誌を読むときただ漫然と読むのではなく、「ほんとうにそうなのか」と立ち止まって考えながら読んでみましょう。名探偵のように謎解きの気持ちで様々な可能性を考えることが、思考のトレーニングになります。

自分の考えがはっきりしている人ほど、自分の考えに沿わない意見に対し、見えないふりをしてしまいがちです。ですが、こうしたトレーニングを少しずつ習慣にすることで、考え方が柔軟になり、様々な視点から物事を捉えられるようになります。

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三、根本的に考える

根本的に考えるためには、起きた問題の結果や原因について、突き詰めて考えることが必要です。その際に役立つ『フィッシュボーン図』をご紹介しましょう。

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【フィッシュボーンの書き方】 STEP1 魚の頭の部分に問題となっている状況や解決したい課題を書く STEP2 大きな背骨を1本引く STEP3 大きな要因を3~6個考えて、それらを「大骨」の先端に書く STEP4 大骨の要因を考えて、それを「小骨」に書く STEP5 最後にそれぞれの小骨に対して原因や解決策を考えて書く

[画像・文章引用元:BIZCOLLEGE|知的生産を高める「見える化」<第2回>魚の図が解決してくれる!]

このフィッシュボーン図の利点は、一つの問題について、深く掘り下げていくことができることにあります。

物事を根本的に考えるには、「なぜ?」を繰り返していくことが大切です。ぜひこのフレームを活用してみてください。

*** 「思考の三原則」に則った思考ができれば、安岡のように様々な問題に対して最善といえる解を見つけることができるようになるでしょう。 今回はご紹介した、思考の三原則の実践法。まずは、自分が苦手だなと思う項目から、試してみてください。

参考サイト BizCOLLEGE|知的生産を高める「見える化」<第2回>魚の図が解決してくれる! PHPOnline衆知|[1分で「考える技術」] 思考力を磨く4つのポイント Wikipedia|安岡正篤 参考文献 安岡正篤著(2006),『安岡正篤一日一言』,致知出版社. スティーブン・R・コヴィー著、フランクリン・コヴィー・ジャパン訳(2013),『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』,キングベアー出版.

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