やってみて「ダメだ」とわかったことと、はじめから「ダメだ」と言われたことは、違います
(引用元:4meee!|日本を代表する野球選手!イチローの名言集)
これは、イチロー選手の名言の一つ。人に言われた「ダメ」と、自分で経験した「ダメ」では何が違うのか。それは、自分がその失敗の過程を経験しているか否か、です。
失敗の過程を知っていれば、何が悪かったのか反省する事ができる。 その反省こそが、自分が成長する糧となる。
しかし、その反省のやり方によって、失敗を活かせるか否かは大きく変わってくるのです。みなさんは、失敗した時、きちんと振り返っていますか? 失敗を次につなげられるよう、正しく分析できている自信はあるでしょうか? 今回は、その失敗の過程を分析する方法をご紹介します。
失敗の原因は3要素に分類できる
計画が失敗してしまう原因は様々ですが、それらは大きく3つの要因に分類できると、専修大学教授の齋藤雄志氏はいいます。それは、
①「偶発的要因」 ②「技術的要因」 ③「戦略的要因」
の3つです。簡単に言うと、①は不運が原因の失敗、②はその名のとおり、技術や能力の不足による失敗、そして③は、そもそも計画のシステムに欠陥があった事による失敗です。これらの要素が重なって、一つの失敗が生み出されているのです。
例えば、ある男の子が好きな女の子に告白してフラれたとします。
もし、女の子が親と喧嘩して機嫌の悪い日だったとしたら、それは男の子には予測できない事なので、①に該当します。②は、男の子の顔や服装が女の子のタイプではなかったり、告白のセリフの印象が悪かったりした場合です。また、自分の好感度を上げる計画が上手くいっていなかったのだとしたら、それは③に該当します。
3要素は互いの原因となっている
さて、失敗の原因は上記のように分類できますが、それぞれが独立した要因だとは限りません。ある原因は別の原因の引き金となっていたり、あるいは別の原因の結果出てくるものであったりと、密接に関わりあっているのです。
先ほどの例で考えると、男の子の好感度の上げ方が不十分であったとしても、それは服装を改善したら向上させられたかもしれません。②技術的要因が③戦略的要因の要素になっていて、②を変えるだけで②と③が同時に満たされる、というわけです。
また、好感度が上がって仲が良くなっていれば、女の子が親と喧嘩していたとしても予め知ることができたかもしれません。ゆえに、③戦略的要因も①偶発的要因の要素となります。
このように、3要素は独立したものではなく、互いに関係しあったものである事がわかります。言い換えれば、どれかを改善する事は他の要素の改善にも繋がるという事です。
失敗要因の改善は、簡単にできるものから取り組む
3要素は互いに関連しているとお話ししましたが、それらのつながりをうまく活用して、失敗要因を改善していくにはどうすればよいのでしょうか。その方法として、まず手始めに、自分が一番手軽に改善できそうだと思う所から手を付けてみましょう。なぜなら、身近な目標をクリアすると、最終的な目標の到達に確実に近づくことができるからです。
クラーク・レナード・ハル氏というアメリカの心理学者が提唱した心理学の理論に、「目標勾配理論」というものがあります。目標勾配とは、
一連の反応を含む学習において,目標に接近するにつれ,次第に学習の効率 (誤りの減少) が増加すること。
(引用元:コトバンク|目標勾配)
という意味。この理論は、目標の達成が近い方がやる気が上がることを示しています。
例えば、スタンプ10個で特典の付くポイントカードで、2個貯まっている時と8個貯まっている時では、後者の方がスタンプを貯めようという気持ちが大きくなる、といった具合です。
つまり、目標はなるべく近い所に定めるのが良い。言い換えれば、失敗の原因もなるべく細分化して分析した方が、その後のやる気アップにも繋がるということです。
例の男の子であれば、まず服を買いに行ったり髪型を変えたりして、②の技術的要因をクリアするのがいいかもしれませんね。
先ほども述べたように、1つの原因が改善されると他の要素にも影響を及ぼします。そうすると、今まで難しいと思っていた問題に関しても、また違った解法が見えてくるでしょう。その作業を繰り返す事で、最終的に目標をクリアできるというわけです。
*** 遠い目標を達成してきた偉人たちも、失敗を繰り返しています。失敗を正しく分析して成功の糧としてきたからこそ、歴史に名を残せたのでしょう。
イチローがかつて4,000本安打を達成した時、次のように語りました。
これからも失敗をいっぱい重ねていって、たまにうまくいってという繰り返しだと思うんですよね。バッティングとは何か、野球とは何か、ということをほんの少しでも知ることができる瞬間というのは、きっとうまくいかなかった時間と自分がどう対峙するかによるものだと思うので。
(引用元:日本経済新聞|イチロー4000安打 失敗と向き合い、逆境を糧に)
失敗を分析することで、物事についての理解をより深める。この教訓は、私たちの仕事や人生においても生かすことができそうです。あなたも失敗にめげずに、その原因を分析してみましょう。
(参考) 4meee!|日本を代表する野球選手!イチローの名言集 齋藤雄志(2016),「戦略的失敗のシステム分析」,専修大学社会科学研究所,社会科学年報,50巻,pp 151-160. コトバンク|目標勾配 Wikipedia|クラーク・ハル 日本経済新聞|イチロー4000安打 失敗と向き合い、逆境を糧に