「自分はデキる!」には罠がある。根拠のない自信を生み出す “自己中心性バイアス” の回避策。

「プレゼンで勝てると思っていたのに、なぜか勝てなかった」「自信はあったはずなのに、相手のほうが一枚上手だった」こういった経験はありませんか。

このようなとき、もしかしたらその自信には根拠がなかったのかもしれません。根拠のない自信であったがゆえに詰めが甘くなり、失敗してしまった可能性があるのです。いくら自信があったとしても、根拠のない自信では意味がありませんし、失敗した結果、最終的に自信を失ってしまうのは残念なこと。今回の記事では、“自信があるゆえの失敗”を防ぐ方法を伝授していきます。

「自己中心性バイアス」の罠

たとえ根拠がないのだとしても、ある程度自分に対して自信を持つのは大切なことです。「自分は自信がない」と思い込んでいる自己評価の低い人に比べ、「自分はできる」「自分なら勝てる」と思っている自己評価の高い人は、ネガティブな感情を抱くことがないため精神的な健康を保ちやすく、モチベーションも高く持てるもの。自信の有無は成果にも直結していて、客観的には同程度の評価の人同士を比べた場合、パフォーマンスと自己評価には強い相関があったという研究が出ているほどです。

自分に自信があるかどうかを考えるうえで知っておきたいのが、「認知バイアス」というものです。人間にとって、物事をありのままに評価するということは非常に困難。物事には必ず情報の非対称性(格差)があり、私たちはそれを想像で補っています。しかしながら、その想像には、誤った、もしくは偏った判断が含まれることが多く、そうした判断の偏りのことを認知バイアスと言います。

認知バイアスの中でも、自分は優れているのだと思い込んでしまうことを「自己中心性バイアス」と呼びます。私たちには、自分が平均以上の存在だと思い込んでしまう性質や、何か思ったことがあればそれに都合の良い根拠ばかりを集めてしまう性質があり、それが自己中心性バイアスへとつながっているのです。

例えばビジネスでは、何かプロジェクトを進めている場面において、自己中心性バイアスにかかった状態になることがあります。

プロジェクトを計画する段階から成功するような気がしている。進めるにつれて手ごたえを感じる。そして、進めるにつれてどんどん自信が湧きはじめ、成功するに違いないと確信する。しかし実際はそう思い込んでいるに過ぎず、蓋を開けてみたらライバルはより高いクオリティのものを出してきた――。

こうした失敗は、自己中心性バイアスによって発生する失敗。根拠のない自信が失敗を招くのには、このような背景があったというわけなのです。では、自己中心性バイアスによる失敗はどのようにしたら予防できるのでしょうか。

見えないライバルを設定しよう

認知バイアスは非常に厄介な存在です。すべてが見通せるわけではない以上、自己中心性バイアスがどこかで邪魔をしてくるからです。そのためには、自分たちの上を行く見えないライバルの存在を考え、それを計画に織り込むことが大切になります。

社内の別の人や、競合他社も取り組むような、ライバルがいるプロジェクトであれば、彼らがどのように自分に先行し、その結果自分より高い成果を出す可能性があるのかを考えましょう。そして、自分がそうしたライバルに負けた結果、どのような状況が起こるのか、また、どうしてライバルと差がついたのかを考えます。そのうえで、プロジェクトのマイルストーンをどこに定めればよいのかなどを設定するのです。では次に、具体的な実践例を紹介してみます。

自己中心性バイアスによる失敗を防ぐ:実践例

あなたが、ある新製品開発のプロジェクトを進めているとしましょう。市場調査は入念に行われ、その商品は需要が非常に大きいということがすでに分かっています。新しい市場のうまみを存分に味わうことができそうです。しかし、ここで自己中心性バイアスに陥ってないとも言い切れません。そこで前項で説明した方法を用いてみましょう。例えば以下のような状況を想定することとなります。

(例) 競合する事業を行っている企業はないと思っていたが、極秘に同じプロジェクトを進めているところがあった。向こうはこちらの動向をひそかに把握しており、先手を打って製品発表とプロモーションを大々的に行った。その結果、先行者としての優位は完全に奪われ、後からシェアを奪還する流れになってしまった。

ではこうした状況にならないために、どのような計画を立てるべきなのでしょうか。

(例) ・ライバルとなりうる企業の動向をつぶさにチェックする ・製造工程などの整備を前倒しで進め、極力早く生産体制を整える ・プロモーションを製品の完成に先だって行う ……

このように、見えないライバルを想定し、起きうる失敗を想像することで、自己中心性バイアスによる油断がもたらす失敗を防ぐことは可能になるのです。

*** 自信は時として失敗をもたらしますが、それでも自信は持っているべきです。今回紹介した方法を生かし、根拠のない自信を根拠ある自信へと変えていきましょう。

(参考) 山崎裕二著(2018),『先にしくじる 絶対に失敗できない仕事で成果を出す最強の仕事術』,日経BP社. Wikipedia|認知バイアス Microsoft中堅中小規模向けビジネス・IT 支援情報局|目からウロコのココロ学 #42 「自己中心性バイアス」 ダン・アリエリー著,櫻井祐子訳(2012),『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』,早川書房.

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