「週末の2日間は思いっきり朝寝坊するぞ!」「睡眠不足だから、週末は寝だめしよう」と週末を心待ちにしているビジネスパーソンは多いことでしょう。しかし、その朝寝坊は社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)を引き起こし、仕事のパフォーマンスを低下させ、病気のリスクまで高めてしまいます。週休2日制のビジネスパーソンの方で、「月曜日はどうも仕事がはかどらない」「最近太ってきた気がする」という方は、悪習慣を断ち切るテクニックを活用し、社会的時差ボケを防ぎましょう。

社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)とは?

社会的時差ボケ」=「ソーシャル・ジェットラグ(Social jetlag)」は、ミュンヘン大学教授のティル・ロネンバーグ氏らが提唱した概念。社会的な時間と、生物時計(体内時計)の不一致によって生じる不調をさしているそう。

例えばビジネスパーソンの場合、前日早めに就寝できようと、できまいと、「仕事のある日」は目覚まし時計をつかって無理やり起床するため、睡眠が前倒しになり、寝不足になりがちです。

逆に「仕事のない日」は、ゆっくりと朝目覚めることから睡眠が後退します。また、平日の睡眠不足を解消しようと寝だめするので、いつもより長く睡眠をとることになります。

この睡眠のズレが、社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)を引き起こしてしまうのだそう。ロネンバーグ氏いわく、「週末だけ生活時間を変えるのは、金曜の夜にパリからニューヨーク、あるいはLAから東京に飛んで、月曜日に戻ってくるようなもの」なのだとか。

海外出張から戻ったばかりなら「時差ボケで調子が出なくて……」という言葉に周囲も納得するでしょう。しかし、毎週月曜日に「社会的時差ボケで調子が出ない」なんていっていたら、冷ややかな視線が飛んできてしまいます。それに、冷たい視線だけでは済まないのです。

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社会的時差ボケは脳と体に悪影響

米国のピッツバーグ大学心理学部のパトリシア・ウォン氏ら研究チームが、30~54歳の男女447人を対象に実験を行ったところ、平日と休日で睡眠時間の差が大きい人ほどBMI(肥満度を表す体格指数)が高く、ウエスト周囲径が大きく、コレステロール値も高い傾向がみられたそう。

ウォン氏は、「社会的時差ボケが肥満や糖尿病、心臓病の発症リスクを高めることが明らかになった」とし、「週末だけの生活リズムの乱れと軽く考えられがちだが、体への影響は決して少なくない」と警鐘を鳴らしています。また、社会的時差ボケは頭の働きを低下させ、仕事のパフォーマンスを低下させるという報告もあるそう。

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社会的時差ボケを防ぐには?

では、社会的時差ボケを防ぐにはどうしたらよいでしょう。

もちろん、平日も休日も規則正しく生活して、常に必要な睡眠時間を確保していれば防げるでしょう。しかし、忙しいビジネスパーソンがそれを実践し続けるのは難しいですよね。

そこで、日本睡眠学会理事長・日本大学医学部精神医学系主任教授の内山真氏がいいアドバイスをくれています。それは、「休日も朝はいったん起きて朝日を浴びて体内時計を整え、それで眠かったら昼寝をすればいい」ということです。

一見、ごく普通の方法ですが、これに「悪習慣を断ち切る方法」の論理を組み合わせれば、社会的時差ボケを防げる可能性をより高く感じられるはずです。

「悪習慣を断ち切る方法」とは?

『THE POWER OF HABIT』の著者であるチャールズ・デュヒッグ氏は、体重増加を気にしながらも、毎日午後3時過ぎにカフェへ移動しクッキーを食べる習慣をやめられなかったそう。しかし、「なぜカフェに行くのか?」と考えたところ、友だちとの会話が楽しみだからと気づきました。つまり、目的はクッキーではなく、誰かとのおしゃべりだったのです。

そこで同氏は、毎日午後3時過ぎにカフェへ行くのではなく、誰かのデスクまで移動し、おしゃべりすることにしたのだとか。やがて、この行動が習慣化され、クッキーを食べることがなくなったそうです。このようにデュヒッグ氏が悪習慣を断ち切れたことは、習慣化のプロセスで説明することができます。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の習慣化された脳を調べる実験によれば、新しい習慣の学習プロセスは「きっかけ」「ルーチン」「報酬」という3つの繰り返しで成り立っているそうです。そして、行動が習慣化されると、「きっかけ」に対し「報酬」だけが返ってくる工程に省略されるとのこと。

つまり、デュヒッグ氏の事例に置き換えると、「きっかけ=午後3時過ぎ、ルーチン=カフェへ移動、報酬=クッキー」を、「きっかけ=午後3時過ぎ、ルーチン=誰かのデスクへ移動、報酬=友人との会話」に入れ替えてしまったわけです。行動が習慣化されると「きっかけ」と「報酬」の工程に省略されるので、要は「クッキー」を、真の目的だった「友人との会話」に入れ替えたということ。

これを、社会的時差ボケを防ぐ方法として活用してみましょう!

社会的時差ボケを防ぐ方法

社会的時差ボケの原因は、週末の「朝寝坊」ですが、朝寝坊をする真の目的は「睡眠」です。そこで、内山教授のアドバイスどおり、いったん起きて朝日を浴び、そのあと「昼寝」などで睡眠を補うようにするのです。

とはいえ休日の予定もあるので、昼寝に限らず「ちょっと寝」がおすすめです。「とにかくいったん起きて朝日を浴び朝食をとったら、少しだけ寝る」という習慣にしていけば、体内時計も狂いにくくなります。なぜならば、朝太陽の光が目から入ると脳の親時計が整い、「朝ですよ」と全身の子時計に知らせるから。また、朝食をとって栄養素が全身に送られると、よりしっかりと子時計のスイッチが入っていくからです。

したがって、「きっかけ=週末、ルーチン=朝寝坊、報酬=睡眠」をやめ、「きっかけ=週末、ルーチン=朝いったん起きて朝食をとる、報酬=ちょっと寝」にしてしまうということ。これを繰り返していけば、やがて「きっかけ」と「報酬」の工程に省略され、「週末」と「ちょっと寝」が定着していくはずです。もしも平日に睡眠不足が累積しなくなったら、報酬を「ちょっと寝」から「モーニングセットを食べるカフェ巡り」などに変えてもいいかもしれません。

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「週末になったら朝寝坊できるぞ!」から、週末になったら「朝食のあと“ちょっと寝”できる!」に変化したらこっちのもの。ぜひお試しください。

(参考)
日経ビジネスオンライン|夜型生活の新社会人は週末の朝寝坊に要注意
エル・オンライン|週末の寝だめ厳禁! ”ソーシャル・ジェットラグ”が引き起こす心身の不調とは
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会|休日の寝過ぎが体調不良の原因に 休日明けの「社会的時差ぼけ」を解消
ミュンヘンクロノタイプ質問紙(MCTQ)日本語版|社会的ジェットラグ
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