リーダーシップが注目されてから久しいですが、リーダーに必要なのは一体どんな力なのでしょうか。逆に、リーダーがやってはいけないこととはどんなことでしょうか。リーダーに最も必要とされるのは、人を動かす力でしょう。それがリーダーをリーダーたらしめているからです。 今回は逆に、「人を動かす」ことを妨げうる、正論のお話です。
正論をいうと反感を買う
正論を拒むのは、人間の本能なのかも知れないと私は思うようになった。正論は強い、正論には反論できない。正論は人を支配し続ける。正論を言うとき、自分の目線は、必ず相手より高くなっているからだ。望んでもいない相手に、正論を振りかざすのは、道行く人の首の根っこを捕まえるような行為だ。
(引用元:正論はなぜ人を動かさないのか|山田ズーニー)
例えば、誰かがある悩みを持っていて相談を持ちかけてきたとします。その悩みに対する明白な解決方法はすでに本人もわかっていて、でもそれができないから悩んでいるのです。 そんなときに、その「できない」と悩んでいる正しい解決方法を勧め、正論で励ましても、本人にとっては何の慰めにもならないでしょう。励ましているつもりでも全く励ましになっていないどころか、逆に自分のダメさを自覚させられ、相談しなければよかった、という思いさえいだかせてしまう可能性があるのです。
この例では、「正しい解決法が分かっているのに実行できない」という本人のジレンマを考慮せずに、客観的に見て正しい正論を主張した結果、相手をがっかりさせてしまいました。このように、反論の余地がない正論を周りの人に言うことで、相手はその後、相談を持ちかけにくくなってしまいます。これでは、リーダーとしての信頼が得られません。
正論は革新的なアイディアを生まない
経営学的には、大きな組織において、「リーダーの指示に疑問を持たずにまわりの人間が動くことが、効率よく経営を成り立たせるための条件」と言われることがあります。 高度経済成長期には確かにそうだったかもしれません。しかし先の読めない今の時代、周りの人間が指示通りにしか行動ができずに自分の考えを持たなくなることは、むしろリスクになるのではないでしょうか。
リーダーが正論ばかりを振りかざしていると、周りの人は正論に反論できないため、自分の考えを主張することが難しくなります。その結果、そういうリーダーのまわりは自分で考えることをしないつまらないイエスマンばかりになり、新しいアイディアや革新的な考えは生まれにくくなるでしょう。
「正論ばかりの人」にならないようにするためには
人は正しいと思っていてもその通りに動けないことがたくさんあります。勉強や仕事をしなければならないとわかっていても、やる気が出ないというのは誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。そんなときに他の誰かから「早く勉強、仕事をしなさい」と言われても反感を覚えてしまうと思います。それと同じように、リーダーがいつでも正論ばかりを主張しているとまわりの人は反発してしまいます。
そこで「あの人は正論ばかりだ」と反感を買わないために必要なのは、相手の気持ちや頑張りを理解し、ねぎらった上で必要なときに正しいことをいう姿勢です。人は誰でも、「この人は自分を受け入れてくれている、理解してくれている」と思う人の言葉に耳を傾けるものです。 また、完璧な正論を言うことで自分の正当性を相手に押し付けるのではなく、相手の意見や反論、考えを謙虚に聞き、尊重する姿勢を見せることが大切です。
*** いかがでしたか。「正論ばかりの人」が正しいことを言っても人はなかなか動いてくれません。最終的に正論を効かせるためにもぜひ、緩急をうまく使いこなせるリーダーになってください。
参考: 正論はなぜ人を動かさないのか|山田ズーニー Beltempo社長のコラム 人生は各駅停車|正論はなぜ通じないのか 東洋経済ONLINE|デキる人は「努力」と「正論」を過信していない ダ・ヴィンチニュース|「正論バカ」はハッキリ言って迷惑! ”正しい”主張する相手への対策は?