一生懸命勉強しているのに、なかなかパフォーマンスが上がらない……。そんな人は、脳の一部分だけを酷使しているせいで疲労が蓄積しているのかもしれません。そんな疲れ切った脳を活性化させれるために、取り入れてほしいのが運動です。一般社団法人 日本体育学会理事の深代千之氏によると、運動には脳を刺激する働きがあるのだそう。運動をすると、いつも使っているところと違う部分の脳が刺激されるので、これが活性化につながるのです。
深代氏は、運動による脳の活性化は勉強の成果を上げるのに役立つと述べます。
脳が活発にはたらくということは、思考力や記憶力の強化につながり、学習効果の向上に直結します。つまり、適度な運動は、脳の活性化を促し、受験勉強の成果を上げるのです。
(引用元:ベネッセ教育情報サイト|受験勉強の効果を上げる運動とは?)
具体的にどのような運動が勉強の成果を高めるのか、3つの方法を説明しましょう。
1. 集中力アップに「朝の早歩きウォーキング」
勉強の成果を上げるには、まず心身の状態を整えることが大切です。『脳を鍛えるには運動しかない!』の著者でハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ氏は、運動にはまさにその働きがあるとしています。
レイティ氏が勧める運動は、ある程度の時間継続して続けられて、なおかつやや息が上がって心拍数を上げられるタイプのもの。具体的には早歩きでのウォーキングです。また、レイティ氏は運動のタイミングは勉強前が良いとし、なかでも朝が最適だと述べています。
「運動はあくまで、脳が学習するための準備を整える役割です。成績を上げるためには、そのあとの学習とセットで考える必要があります。運動を終えるとまもなく脳の血流が増しますが、このときこそが、思考力や集中力が飛躍的に高まるチャンス。勉強を始める前、できれば朝にやることをお勧めします」
(引用元:プレジデント・オンライン|脳細胞が増える運動「3つの条件」 ※太字は筆者にて施した)
同様の働きは、エアロビクスやランニング、エアロバイクなどでも期待できます。本格的に取り組みたい場合は、レイティ氏の理論を基に米国で行われている運動プログラムを参考にすると良いでしょう。
2. 長期記憶の強化に「勉強の合間のアイソメトリック」
記憶には短期記憶と長期記憶があります。勉強の成果を上げようと思ったら、長期的に記憶を保持できる長期記憶を鍛えるのが効果的です。冒頭にも登場した深代氏によると、長時間勉強して疲れたときやリフレッシュしたいときに、脳を刺激するアイソメトリックを取り入れると、長期記憶の強化に役立つのだそう。
アイソメトリックとは、関節の角度を一定にして力を出すトレーニングのこと。代表的なものが腕立て伏せです。ここでは腕立て伏せより簡単に実践できるトレーニング方法を説明しましょう。
<簡単にできるアイソメトリック> 1. 両肘を曲げて胸の前で合掌します。 2. ゆっくり息を吐きながら、両手のひらを押し合います(約10秒)。 3. 左側の肘を体の前で軽く曲げ、右手で左手首を押さえます。 4. 右手で左手を下に押し、左手は右手に逆らって上に持ち上げます(約10秒)。 5. 左右の手を入れ替えて同じ動作をします。
ここまでの動作を2~3セット行ないましょう。常にゆったりとした呼吸を心がけてください。5分程度でも効果を実感できます。
3. やる気が出ないときに「モチベーションを高めるドローイン」
やる気が出ないときは体を動かすのも億劫になりますが、国際武道大学の山本利春教授は、軽めに運動をして血流を良くしたほうが疲労の原因物質が効率的に処理されると述べます。血流を良くする運動はジョギングやサイクリングなどいろいろありますが、漢方薬剤師の堀江昭佳氏は手軽にできる方法としてドローインを勧めています。
漢方においても、血をつくれなかったらやる気が出ない、血が足りなかったら不安感が高まる、血が流れなかったらイライラすると、血流は心の状態と結びつけられます。逆に血流を良くすると、細胞1個1個が健やかな状態になるから、心のベースが安定するのだと私は理解しています。
(引用元:NIKKEI STYLE|血流が良くなると心の悩みまで解消する、は本当か ※太字は筆者にて施した)
ドローインとは、腹横筋や腹斜筋群などを刺激してインナーマッスルを鍛える体幹トレーニングのひとつです。体幹トレーニングというと、難易度が高いイメージを持つ人もいるかと思いますが、ドローイングの方法はとても簡単。名前の由来である「draw in(吸い込む・引っ込める)」の通り、お腹をへこませるだけです。具体的な流れは次の通り。
<ドローインの方法> 1. 足を肩幅くらいに開き、背筋を伸ばして立ちます。 2. 息をゆっくりと吐きながら下腹をへこませます。 3. お腹をへこませた状態を10~30秒キープします(浅く呼吸は続けてください)。
お腹に手を当てながら行なうと、お腹の動きを確認しながらできるので、より効果的です。また、慣れないうちは仰向けの状態で行なうのもおすすめです。仰向けでドローインをする際は、膝を立てた状態にしましょう。
4. 文章の読解や図形問題に強くなる。空間認知能を鍛える「水泳」
『プレジデントムック 塾 習い事選び大百科2017完全保存版』によると、東大生のうち6割は小学生時代にスイミングスクールに通っていたのだそう。このことから水泳は、頭の良くなるスポーツとして注目を集めるようになりました。水の中に体を浮かべて自由に体を動かせる水泳には、脳の空間認知能を鍛える働きがあると考えられています。
空間認知能とは、三次元空間における物体の位置や形、大きさ、間合いなどを認識するための機能のこと。空間認知能を持つ細胞は言語中枢や海馬回など、脳のあらゆる場所に存在するため、幅広い面で勉強の成果に影響を与えます。たとえば数学の図形問題が得意であったり、文章の読解問題が得意であったりなど……。
そして、脳神経外科医の林成之氏によれば、空間認知能は大人になってからでも鍛えられるのだそう。姿勢を正すようにするだけでもトレーニングになるので、プールに通えない人は実践してみると良いでしょう。
「いちばん重要なのは姿勢を正すことです。体のバランスが崩れると、情報のズレが生じ、脳全体の働きが悪くなって空間を正しく認識できなくなります。その理由は、頭、左右肩甲骨、尾てい骨を結ぶ体軸が、地球の重力を基盤に機能しているからです。姿勢を正すとは、この体軸を地面と垂直にまっすぐに保つこと。そのためには、(1)両目を水平にする、(2)肩の高さを左右同じにする、(3)背筋を伸ばすのがコツです」
(引用元:プレジデント・オンライン|仕事も優秀"運動神経がいい人"の脳の特徴 ※太字は筆者にて施した)
*** レイティ氏によると、勉強の成果を上げる運動はフットサルのようなチームプレーで行なうものではなく、ひとりで集中して行なえるもののほうが良いのだそう。ここで説明した方法は、忙しい人や運動が苦手な人でも手軽に始めれらます。ぜひ取り入れてみましょう。
文 / かのえかな
(参考) ベネッセ教育情報サイト|受験勉強の効果を上げる運動とは? プレジデント・オンライン|なぜ頭のいい人は「運動」が好きなのか プレジデント・オンライン|脳細胞が増える運動「3つの条件」 NIKKEI STYLE|「疲れたら休養」はNG 軽い運動で血行促進 NIKKEI STYLE|血流が良くなると心の悩みまで解消する、は本当か NIKKEI STYLE|これだけ?プロが教える、太りにくい体幹トレーニング プレジデント・オンライン|水泳で頭が良くなる?東大生の6割が小学生時代にスイミング プレジデント・オンライン|仕事も優秀"運動神経がいい人"の脳の特徴