「怒ってばかりの人」は損だらけ。でも「怒れない人」も絶対に損をしている。

「怒ってばかりの人」は損だらけ。でも「怒れない人」も絶対に損をしている。

どんなことにもすぐに怒る人もいれば、一方で普通であれば怒るようなことにもまるで怒らない人もいます。対照的な両者ですが、ともに「人生で大きな損をしている」と、怒りと上手に付き合う心理トレーニングである「アンガーマネジメント」の第一人者・安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)さんは語ります。

もちろん、誰しも損はしたくないもの。怒ってばかりの人が無駄な怒りを抑え、怒れない人が怒るべき場面で怒れるようになる手法を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人

怒ってばかりの人も怒れない人も大きな損をしている

怒りの感情を適切にコントロールできない人は、それこそ人生で大きな損をしています。怒らなくてもいいような場面でも怒っている人、いつもイライラしているような人はわかりやすいでしょう。そんな人は、単純に誰であっても付き合いにくいですよね。いつも不機嫌な人には誰しも近寄りたくないし、人だって集まらなくなる。すると、自分の味方になるような人まで失ってしまいます。それがいちばんの損でしょう。

逆に、怒るべきところでも怒れない人の場合はどうでしょうか。ここで、そもそも怒りの感情というものがなぜあるのかを考えてみてください。ジャングルで肉食獣と出くわしたときに怒りの感情が湧かなかったとしたら? 逃げることも反撃することもできず、ただ襲われてしまいます。怒りというものは、自分の身を守るために存在する防衛感情というものなのです。

つまり、怒れない人というのは、自分を守れない人だということです。危険に遭遇したとしても攻撃されっぱなしになってしまう。仕事でいえば、面倒な仕事を理不尽に押し付けられたときに怒ることができなければ、その仕事をやらなければならなくなる。どう考えても、それは損ですよね。

「怒りはリクエスト」と考えれば怒りの表し方は激変する

それでは、どのようにして怒りをコントロールすればいいのでしょうか。まずは、無駄にイライラしない、怒らないための方法をいくつか紹介しましょう。ひとつは「思考のコントロール」というものです。これは、いつもものごとを「3段階」で考えるというもの。目の前でなにかイラッとする出来事が起きたとしましょう。それを「許せる」「まあ許せる」「許せない」の3段階にわけて考えるのです

すると、あることに気づくはずです。イラッとすることであっても、100点の「許せる」ことではないけれど、「まあ許せる」ことは意外なほど多いのです。怒りを誘うものごとの多くは、たいてい「まあ許せる」に入るそれに気づけば、本当に「許せない」ことはなにかと考えるようになります。こうして、本当に「許せない」ことだけに怒りを感じるようになるというわけです。

しかも、この「まあ許せる」の範囲は広げることもできます。コツは簡単で、「魔法の言葉」があるのです。それは「せめて」という言葉。電車で足を踏まれたとしましょう。当然、イラッとしますし怒りたくもなります。そのとき、「せめてどうだったら許せるか」と考えるのです。「せめて会釈をしてくれたら許せる」「せめて目配せをしてくれたら許せる」という具合です。

もしかしたら、以前は会釈や目配せをされても、それに気づかず怒っていたかもしれません。この「せめて」を考えることで自分が許せる最大値を増やし、これまでは許せなかったことも許せるようになるというロジックです。

「怒りはリクエスト」と考えれば怒りの表し方は激変する

また、「怒りはリクエスト」だという考え方も有効です。怒ることの目的は、相手をやり込めることでも相手に反省させることでも自分がすっきりすることでもありません。怒るときというのは、相手に対して「いま、こうしてほしい」「次はこうしてほしい」と思っているものですよね。

であるなら、「こうしてほしい」というリクエストを上手に伝えられる人が怒り上手だといえます。そういう発想を持って、感情的に怒りをぶつけるのではなく、「リクエストを伝える」という考え方に切り替える。それだけで、怒りの表し方は大きく変わるはずです。

「こうしてほしい」というリクエストを上手に伝えられる人が怒り上手

怒ることは真剣に相手と向き合っていることの表明

一方、怒り慣れていない人にとっては、いくら「怒るべきときには怒れ」といってもなかなか難しいものでしょう。であれば、自分にルールを課せばいいのです。そのための考え方は先ほどお伝えした、ものごとを「3段階」にわけるというもの。目の前で起こった出来事を「許せる」「まあ許せる」「許せない」にわけて、「許せない」となったのなら、とにもかくにも必ず怒る。そういうルールにしてしまえばいいのです

もし、それでも怒れないようなら、いわゆるスモールステップを取り入れてみてください。怒り慣れていない人がいきなり大きな怒りを表すのは簡単ではありませんよね。であれば、いえる範囲からいってみる。怒るというよりちょっと不満を表す、苦言を呈すというようなことからはじめてはどうでしょうか

また、怒れない人の特徴として、怒った後のことを考えすぎているということも挙げられます。「怒った相手との関係が悪くなるのではないか」「相手に嫌われるのではないか」、そういう不安を抱えているのです。

でも、怒った相手との関係性は必ずしも悪くなるものではありません。逆に、怒ったことで関係性が良くなることもあります。もちろん、怒ることになった原因や相手との間柄にもよりますが、怒るということはそれだけ真剣に相手と向き合っているということの表明でもあるのです

怒ることは真剣に相手と向き合っていることの表明

【安藤俊介さん ほかのインタビュー記事はこちら】 怒りの感情と上手に付き合う! 欧米トップ経営者の常識「アンガーマネジメント」入門 いつも怒っている “あの人” とうまく関わる心理テク。気分屋上司も「パターン」がわかれば怖くない。

【プロフィール】 安藤俊介(あんどう・しゅんすけ) 1971年12月21生まれ、群馬県出身。アンガーマネジメントコンサルタント。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング・アンガーマネジメントの日本における第一人者。某企業のニューヨーク駐在員時代に出会ったアンガーマネジメントを日本で広めることを決意。2011年、日本アンガーマネジメント協会を設立し、代表理事に就任。ニューヨークに本部を置くナショナルアンガーマネジメント協会では、1500人以上在籍するアンガーマネジメントファシリテーターのなかでわずか15人しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアメリカ人以外でただひとり登録されている。『「怒り」が消える心のトレーニング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『マンガでわかる怒らない子育て』(永岡書店)など著書多数。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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