“隣の人のランチ” に心を乱される人は要注意。「脳が疲れる」原因になっているかも。

お昼の休憩時間に、「さあ何を食べよう」といろいろ考えているうち、「何を食べるべきか?」になり、結局何を食べたいのか分からなくなってしまい、身近なところで手を打ち気分が盛り下がったことはありませんか?

誰でも経験しそうな日常の風景ですが、そんなことばかりが続くと、「脳疲労」を引き起こしてしまうかもしれません。やる気が低下し、心身が不調になってしまうことも……。

情報社会がもたらす「偽の欲求」と「脳疲労」について説明します。

自分の「欲求」が分からなくなっているかも?

株式会社「脳の学校」代表の加藤俊徳医師は、こういいます。

目の前に現れた情報1つひとつに反応していると、欲求に対する「感度」が鈍ってしまいます。 だから、もともと脳内にあった「本当の欲求」に気づくことができません。

(引用元:加藤俊徳著(2015),『アタマがどんどん元気になる! ! もっと脳の強化書2』,あさ出版 .)

冒頭で示したシーンのほかにも、こんなことがあるのではないでしょうか。

――「今日はハンバーグ定食にしよう!」と決め、脳裏にそのビジュアルを映し出しながら店に入ったら、塩サバ定食が目に入る。“そういえば、昨晩テレビで、青魚は悪玉コレステロールを減らし、血液をサラサラにするといってたなあ”と思いだす。すると、一緒にいた同僚が「塩サバ定食」をオーダー。そこですかさず自分も「同じもので」と店員に伝える。――

ランチを終えたあと、あなたは「あー、体にいいことをした」と満足できたかもしれません。なおさら美味しければ、満足度も高まるというものでしょう。自分の欲求が、叶ったとさえ感じたかもしれません。

しかし、あなたが唾液まで出しながら思い浮かべていたハンバーグ定食への欲求は、置き去りにされたままです。

「欲求」を無視したときの脳はこうなる

人間の脳には、食欲などの本能や情動を担う「大脳辺縁系」のほかに、思考や学習など知性を担う「大脳新皮質」があります。そして、それら司令塔の下には、自律神経中枢などをつかさどる「間脳」があります。この3つが関係しあい、高度な情報処理を行いながら、人間の体を機能させているというわけです。

特に知能が発達した人間の大脳新皮質(知性)は、間脳などを覆うほどの大きさがあるのだとか。そのため、前項のようなシーンでは、こんなことが起こっています。

縁君(大脳辺縁系):「すごく、すごくハンバーグが食べたいよう」 皮質ママ(大脳新皮質):「それより体にいい塩サバにしなさい」 縁君(大脳辺縁系):「ハンバーグが食べたいのに……」 皮質ママ(大脳新皮質):「ほら、同僚のA君も塩サバよ! 」 パパ(間脳):(……オロオロ) 皮質ママ(大脳新皮質):「体のためには塩サバを食べねば! 食べるべきよ!」 縁君(大脳辺縁系):――無反応―― パパ(間脳):――パニック!!!!――

こうして大脳辺縁系が疲れて動かなくなると、自律神経中枢などをつかさどる間脳がパニックを起こすため、心と体が不調をきたしてしまいます。これこそが「脳疲労」の状態です。

(参考:「脳疲労概念【BOOCS公式サイト】|脳疲労とBOOCS|脳疲労とは」)

「脳疲労」とは?

人間社会において、本能が求めるまま行動していたら大変なことが起こります。大脳新皮質が理性を働かせているからこそ、わたしたちが安心して暮らせるといえるでしょう。

しかし、前項のように、「――べき」「――ねば」と、日常のささやかな「欲求」までも無視していると、やがて大きなストレスになりかねません。情報過多で起こる「脳の使い過ぎ」も同じように危険です。

PCやスマートフォン、テレビから入ってくる、おびただしい情報を処理している大脳新皮質が、「もっと働け」といい続けた結果、大脳辺縁系が反応しなくなり、間脳がおかしくなってしまうのです。それどころか、大脳新皮質まで機能を低下させ、認知異常を起こしてしまいます

九州大学名誉教授・医学博士の藤野武彦氏が提唱した「脳疲労」という概念は、大きくはその文字が示すとおり、“脳がつかれた状態”を指します。そして、3つの脳の関係がうまくいかなくなり、脳の機能を低下させてしまうことを意味するのです。

「脳疲労」で意欲が低下する

精神科医の樺沢紫苑氏は、モチベーションを持続させるために、「ドーパミンの報酬サイクル」を大きく回すようアドバイスしています。

欲求が満たされ→脳内のドーパミン神経系が活性化し→快感をもたらすのは、報酬系と呼ばれる神経回路のグループ。そのなかで重要な役割を担っているのが、大脳辺縁系の「側坐核」です。

樺沢氏によれば、モチベーションは側坐核が興奮しないと高まらず、興奮させるには、報酬(欲求が満たされる)による刺激が必要とのこと。脳疲労によって大脳辺縁系が無反応になったり、脳全体が機能を低下させたりしていたら、到底モチベーションを高めることなんてできないわけです。

また、人間は野生動物と違い、食欲などを満たして得る本能的な快感のほかに、美意識や価値観にもとづく“好き”による快感に、目標達成や夢の実現、好奇心などの知識欲が満たされた際の快感もあります。

本能的なもの以外の、理性的な「欲求」もあるということ。「心の声」が分かりにくくなるわけです。

脳を元気にするコツ

加藤俊徳医師は、こうアドバイスします。

もう一度考えてみてください。それは、あなた自身の欲求でしょうか? あなたの脳は、本当に「それ」がしたかったのでしょうか?

(引用元:加藤俊徳著(2015),『アタマがどんどん元気になる! ! もっと脳の強化書2』,あさ出版 .)

・何を食べるか決めるとき ・休日の予定を決めるとき ・これから始める習いごとを決めるとき

そうすべき、そうせねば、で決めていませんか? いま一度自分に問いかけてみてください。

仕事はもちろんのこと、人間の社会生活において理性的に考えることはとても大切です。しかし、何が自分にとって心地よい選択か、自分を押さえつけてはいないか、考えてみることも大切なのです。結果的には、仕事や勉強、心身の健康にも影響するはず。日常生活のなかの小さな「欲求」には、ぜひ耳を傾けてあげてくださいね。

*** 脳疲労の危険性と、脳を元気にするコツ「小さな欲求に耳を傾けてあげること」をお伝えしました。先の「ランチ」に例えると、脳の状態はこんな感じでしょうか。

縁君(大脳辺縁系):「すごく、すごくハンバーグが食べたいよう」 皮質ママ(大脳新皮質):「そうね、きっと美味しいわよ」 縁君(大脳辺縁系):「やったー!」 皮質ママ(大脳新皮質):「今日は思いっきりハンバーグを食べて、次は魚にしましょうか 」 縁君(大脳辺縁系):「はーい」 パパ(間脳):「(ニコニコ)今日も元気に働こうっと!」

(参考) 加藤俊徳著(2015),『アタマがどんどん元気になる! ! もっと脳の強化書2』,あさ出版 . 木村泰子著, 篠浦伸禎監修(2015),『美しい脳図鑑 (万物図鑑シリーズ)』,笠倉出版社. 樺沢紫苑著(2010),『脳内物質仕事術』,マガジンハウス. 脳疲労概念【BOOCS公式サイト】|脳疲労とBOOCS|脳疲労とは 脳疲労概念【BOOCS公式サイト】|脳疲労とBOOCS|BOOCS脳疲労仮説

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト