勉強に一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、内容をうまく覚えられない。そのような悩みを持たれている方も多いのではないでしょうか。せっかくの努力が結果に結びつかないと、意欲も減退してしまいますよね。なぜ私たちは勉強した内容を忘れてしまうのでしょうか?
人間が記憶を失う理由は、従来の学説では脳内で記憶を保持するニューロンが破壊されるからとされてきました。しかし近年は、脳は能動的に記憶を消去しようとしているという説も注目されています。新しい情報を記憶していくために、脳が “不要” と判断した情報は次々と消されていくというのです。
では、どうすればいいのか。ヒントとなるのが「アウトプット」です。勉強するうえで、知識をインプットしていくのはもちろん大切ですが、同時に積極的にアウトプットも行なっていかなければいけません。今回は、「勉強しても忘れる」という方のために『アウトプット勉強法』をご紹介しましょう。
アウトプットで記憶は強化される
学生時代を振り返ってみてください。教科書や参考書を暗記するインプット型の勉強を行なったあと、ノートに書いたり誰かに説明したりしたら、鮮明に記憶に残った……。ご経験がある人も多いはずです。実際、“学びのプロ” たちにも、アウトプット型の勉強を取り入れている人はたくさんいらっしゃいます。
例えば、高校時代は学年最下位ながら2浪のすえ東京大学文科Ⅱ類に合格した西岡壱誠氏。著書『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』によれば、高校時代の西岡氏は、1日10時間勉強したにもかかわらず、2年間成績がまったく上がらなかったのだそう。しかし、アウトプット型勉強術を取り入れたことで、成績が急上昇しました。西岡氏は「勉強で学んだ内容を紙の上に再現できるかどうか」が重要だと語ります。
今日習ったこと、勉強したことを、何も見ないで再現できるかを自分で試すのです。
(中略)
こうやって再現できるかどうかをチェックすれば、自分が覚えきれていなかった事項を客観的に理解できるようになります。さらに「白い紙に再現しなきゃならない」と考えていれば、勉強しているときも「再現できるように」勉強する習慣がつく。
「真っ白い紙に再現する」というアウトプットのお陰で、インプットの質も上がるのです。
(引用元:東洋経済オンライン|元偏差値35の東大生が教える「残念な勉強法」)
また、精神科医の樺沢紫苑氏は、著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』の中で、本を読んだ後は「内容を人に話す」「感想を書く」といったアウトプット作業を行なうことで圧倒的に記憶が強化されると述べています。
人間の脳は、「重要な情報」を長期記憶として残し、「重要でない情報」は忘れるようにつくられています。「重要な情報」とは、インプットしたあとに何度も「使われる情報」です。つまり、インプットしても、その情報を何度も使わないと、すぐに忘れてしまうのです
(引用元:樺沢紫苑 (2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』,サンクチュアリ出版.)
勉強におけるアウトプットの重要性がよくわかりますね。
「3色ボールペン」を使ったアウトプット勉強法
「勉強した内容を白い紙の上に再現する」「内容を人に話す」「感想を書く」など、今日からすぐ実践に移せそうなアウトプット勉強法のヒントは上で触れたとおりです。ここではもうひとつ、明治大学教授の齋藤孝氏がすすめる方法をご紹介しましょう。著書『必ず覚える!1分間アウトプット勉強法』の中で齋藤孝氏が紹介するアウトプット勉強術は、以下4つの手順から成ります。
- 問いを立てる
- 3色ボールペンでキーワードを囲みながらテキストを読み込む
- 問いに対して答えるポイントを3点ほどにまとめ、メモ書きする
- 問いに対して1分で答える
この勉強法のメリットは、“最終的に1分間でアウトプットする” ことを前提に勉強が進むため、勉強の目的が明確化され、受動的にならずに済むということ。3色ボールペンに関しては、「最重要」と思われる箇所を赤、「まあ重要」と思われる箇所を青、「個人的におもしろい」と思った箇所を緑に塗り分けながら、問いに対する答えをなりそうな部分を探っていきましょう。メモ書きし、無事に1分で答えられたら、その部分の要点は記憶として定着したと言えるでしょう。次の日に、問いに答えられるかどうか再度試してみるのもいいかもしれませんね。
大学生であれば普段の学業、社会人であれば資格勉強など、私たちはいくつになっても勉強し続ける必要があります。しかし、なんとなく教科書や参考書を読み進めるだけでは、なかなか記憶としては定着されづらいもの。「1分で説明できるか?」と自らに課題を課し、ぜひ3色ボールペンを活用しながら、アウトプット前提の勉強をしてみてください。驚くほど記憶定着が良くなることに気づけるかもしれませんよ。
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なお、アウトプット勉強法を始めたばかりの人が陥りやすいのが、「知識を完璧にインプットしてからでないとアウトプットしたくない」と考えてしまう点。しかし、アウトプットを最後まで残しておくのは非常にもったいないことです。ぜひ、インプットの過程にアウトプットを細かく組み込んでみてください。
インプットを完璧にしてからアウトプットに取り掛かる勉強法では、
「知識を完璧にする(インプット)→友達に話す(アウトプット)」
というように、インプットからアウトプットへの流れが一回しかないのに対し、インプットの過程にアウトプットを組み込んだ勉強法では、
「知識を蓄える(インプット)→友達に話す(アウトプット)→足りない部分を補強する(インプット)→もう一度友達に話す(アウトプット)」
と、同じ流れを二回繰り返すことができます。インプットとアウトプットの往復を何度も繰り返し行うことにより、脳への定着をより確実なものにすることができるのです。
(引用元:StudyHacker|“完璧なインプット” にこだわらない! 勉強効率をあげるための『アウトプットのタイミング』 ※太字は編集部が施した)
「わからなかった」「説明できなかった」「間違えた」という気づきが、次のインプットの質をさらに高めてくれ、学習効率も上げてくれます。ご紹介したアウトプット勉強法を、これからの学習に役立ててみてください。
(参考)
Quanta magazine|To Remember, the Brain Must Actively Forget
東洋経済オンライン|元偏差値35の東大生が教える「残念な勉強法」
西岡壱誠 (2018),『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』, 東洋経済新報社.
樺沢紫苑 (2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
齋藤孝 (2011),『必ず覚える!1分間アウトプット勉強法』, PHP新書.
StudyHacker|“完璧なインプット” にこだわらない! 勉強効率をあげるための『アウトプットのタイミング』