「東大生のノート」は普通のノートと何が違うのか? ただ “美しい” だけではなかった。

東大に合格するような優秀な人であれば、ノートの使い方ひとつとってもなにかちがいがあるはず。彼らのノートの使い方を知れば、仕事でも勉強でもより大きな成果を挙げられるのではないでしょうか。

お話を聞いたのは、2008年に上梓した著書『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)で注目を集めたフリーライターの太田あやさん。まずは、東大生のノートに注目した経緯から語っていただきました。

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人

目を引かれた1冊の生物のノート

ライターに転身する前のわたしは、通信教育講座や大学入試模試など主に教育事業を手がける株式会社ベネッセコーポレーションで『進研ゼミ』の編集を担当していました。あるとき、大学生活や高校生向けの勉強法を紹介する冊子で、難関大学に合格した先輩たちの勉強法の特集をしたのです。紹介したのは、東大生が高校時代に実際に使っていた『進研ゼミ』の教材やノート。その特集の制作中に目を引かれたのが、1冊の生物のノートでした。

書かれている字は決してきれいじゃなくて、むしろ汚いくらい(苦笑)。でも、情報量がすごかった。そのノートを見れば、授業でどんな勉強をしてなにを理解したのか、そういうことが一目瞭然にわかるようなものでした。しかも、授業の後で書き直したものではなく、授業中に完成させたものだというのです。それがすごく印象的でした。

偏差値が高いだけでなく、他の大学より受験科目が多いこともあって、東大の受験生は誰よりも効率的に勉強をしなければなりません。だからこそ、ノートをつくる時間があるなら、少しでも多く問題集をこなしたほうがいいのではないかと、それまでのわたしは思っていました。ところが、東大生たちの多くはきちんと自分なりのノートをつくっていたのです

そして、「東大生のノートを100冊集めてみたら、なにか法則が見えるかもしれない」と思った。それが、後々に『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)という著書を出すことにつながったわけです。

ノートを使う目的が明確だから美しく見える

その著書のなかでは、東大生のノートに共通するものとして「7つの法則」を挙げました。

【東大生のノートに共通する「7つの法則」】 1. とにかく文頭はそろえる 2. 写す必要がなければコピー 3. 大胆に余白をとる 4. インデックスを活用 5. ノートは区切りが肝心 6. オリジナルのフォーマットを持つ 7. 当然、丁寧に書いている

ただ、これらのほとんどは「見た目の美しさ」のためのものだと思っています。この法則通りにノートをつくれば、確かに「美しいノート」にはなるでしょう。でも「いいノート」になるとは限りません。

取材した当時、東大生のノートがなぜ美しく見えたのかと考えると、それは「言葉が置き去りになっていない」と感じたから。たとえば、日本史のノートに「江戸時代」という言葉が書かれているとしたら、江戸時代というものはどういう流れで生まれて、その後、誰がどうしたのかということがわかるように構成されています。単発で言葉が書かれているのではなく、ページのなかで言葉同士が有機的につながってストーリーとしてまとまっている。それによって、美しさや迫力を感じたのだと思います。

そんな構成になったのは、「目的が明確」だからでしょう。彼らのノートは、ただ黒板を写すとか、先生に言われたことを書くというような「受け身のノート」ではなかった。授業ノートであれば、板書の内容に加えて先生のコメントや自分の疑問、「これは後でもう少し調べよう」「ここはテストに出そう」というようなことなど、いろいろな要素が互いに関連を持ちながら書き加えられていたのです

そのノートを使ってなにをしたいのか、自分がどうなりたいのかという目的がはっきりしているからこそ、オリジナリティーのある自分なりのノートの使い方になる。それこそが美しさの秘訣なのだと思います。

自分で見つけたノート術でなければ意味がない

また、ノートの書き方以外にも印象的なものがありました。それは筆箱です。中高生だと、ポーチのようなペンケースにいろいろな色のペンなどをたくさん入れている子が多いですよね。でも、東大生の多くは、筆記用具がせいぜい3本ほど入るくらいのちっちゃい筆箱を使っていたのです。入れているのは、シャープペンに赤ペン、ボールペン、定規くらい。

その理由は、「無駄を省いてなにごとも効率的に進めたい」という考え方をする子が多いからだと思います。彼らの多くは自分を「面倒くさがり」だと評しますが、本当の面倒くさがりなら東大には合格できませんよね。彼らが言う面倒くさがりとは、それこそ効率を重視する性格だということでしょう。

色を使う際にも、彼らの「目的が明確」であり「効率を重視」する傾向が表れます。まず、色ペンを使うのは、重要な箇所を目立たせるため。そのためには、色が多いとどこが大切かわかりづらくなってしまう。さらに、授業中、学んだ内容を漏らすことなくノートに書き留めたいと考えるので、ペンを探したり持ち替えたりする時間すらもったいないと思ってしまう。こうして、筆記用具の数が絞られるというわけです。

なかには筆記用具の使い方の効率まで追求していた子もいて、その子がたどり着いたのは、2本のペンをお箸のように持つというものでした。持ち替えることなく、2本のペン先を使いわけるのです。もちろん、最初はなかなかうまく書けなかったはずです。でも、「これが絶対に効率的だ!」と思えばトレーニングをする。その使い方をマスターすれば、トレーニングに費やした時間は後から回収できるという思考なのでしょう。

効率を追求する姿勢は、ノートや筆記用具の選び方にも表れていました。彼らは誰かにすすめられたものをそのまま使うことはありません。自分に合うものに出会うまでいろいろなものを試して試行錯誤をする。自分にとって書きやすいシャープペンやボールペンはどれで、それに合う紙質のノートはどれかということを追求します。書いている途中に、「このペン、書きづらいな」などと思うことが、彼らにとってはストレスになるからです。

筆記用具の選び方にしろ、ノートの使い方にしろ、東大生の根底には確固たる自分の考えを貫くという姿勢があるように思います。そういう意味では、東大生のノート術の書き方だけをなぞっても意味はないのかもしれません。ノートを書く目的を明確にしたうえで、東大生のノート術を参考にしながら自分だけのノートの書き方を見つけていく――それがもっとも重要なことなのではないでしょうか

【太田あやさん ほかのインタビュー記事はこちら】 記憶力が抜群に上がる「東大式ノート術」。蛍光ペンの使い方が普通とは全然ちがった。 外資系エリートが「手書きノート」をとても大事にするワケ。

『マンガでわかる! 頭を鍛える東大ノート術』

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【プロフィール】 太田あや(おおた・あや) 1976年生まれ、石川県出身。フリーライター。株式会社ベネッセコーポレーションにおいて通信教材『進研ゼミ』の編集を担当した後、2006年に退社し、フリーライターに転身。初の著書『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)で注目を集め、以降、教育分野を中心に執筆活動をおこなう。2018年にはビジネス書の分野にも進出。『外資系コンサルはなぜ、あえて「手書きノート」を使うのか?』(KADOKAWA)を上梓した。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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