日常生活のなかで、「この悪い習慣をやめたいな」「この習慣をやめればもっと自分はよくなれるのに」などと思うことはたくさんあるでしょう。でも、なかなかその習慣をやめることはできない……。「自分は意志が弱いから」と開き直って、そのまま放置ということを繰り返す人も多いかもしれません。
それは、「意志が弱い」からではなく、やめるための目標設定の仕方に問題があります。連載『人生が変わる習慣化』の第6回は、自分の悪いと思う習慣をやめる際の目標設定の仕方について考えていきます。
構成/岩川悟(slipstream) 写真/玉井美世子
「~しない」という目標設定はキケン
「自分の悪い習慣をやめよう、変えよう」として挫折する最初の地点でよくあるのは、「〜しない」という「行動」を決めているケースです。おもしろいくらいに、「~しない」という目標は、ほとんどが失敗に終わります。
・飲みにいかない ・スマホを見ない ・テレビを観ない ・ダラダラしない ・無駄遣いしない ・他人に振りまわされない ・食べ過ぎない……etc.
これらは、わたしから見ると正直よくない習慣化目標です。わたしたちは自らの習慣を考える際に、悪い習慣に対して「~をやめたい」という欲求からなのか、「~しない」と行動を決めがちです。
しかし、結局飲みにいく、スマホを見る、テレビを観る、ダラダラする、無駄遣いをする、他人に振りまわされる、食べ過ぎてしまうというパターンから抜け出すことはできません。
脳が行動命令を受け取れるように具体化する
心理学の見地では、脳は否定語を認識できないとされています。正確ないい方をすると、わたしたちを突き動かしているのは、言葉そのものというより「内的なイメージ」なのです。
つまり、「日記を書く」「日記を書こう」という習慣は具体的にイメージしやすいですが、「タバコを吸わない」としても、タバコを吸っている状態をイメージしてしまうのです。すると、脳はイメージされたものに引っ張られるので、結局は繰り返しタバコを吸っているイメージをしてしまい、誘惑に負けてしまいます。
たとえば、「飲みに行かない」「スマホを見ない」と決めたとします。でも、「わかっちゃいるけどやめられない」ということになっていませんか?
否定語目標は、行動が定義されていないことに問題があります。「悪い習慣をやめる!」という目標ではなく、「〜する!」という代替行動を決めなければいけないのです。
では、具体的にどうすればいいのでしょうか?事例を見ていきましょう。
× 飲みに行かない ○ 飲みに誘われたら、禁酒していると伝える
× スマホを見ない ○ 大好きな本の小説シリーズを読む
× テレビを観ない ○ テレビのコンセントを抜く
× ダラダラしない ○ 休みの日でも、朝一番に外出する予定を入れておく
× 無駄遣いしない ○ 大きな買い物の予定がなければ、財布のなかに2,000円しか入れない
× 他人に振りまわされない ○ SNSやLINEを見るのは、電車の移動中だけにする
× 食べ過ぎない ○ 夕食は、前もって決めた量しかテーブルに出さない
いかがでしょうか? 「〜しない」という決め事と、「〜する」という行動の決め事は随分とちがってきます。なにをすればその悪い習慣が発動しなくなるのかを考え、「~する」という習慣目標にすることで悪い習慣を断ち切ることができるのです。
習慣行動を決める質問を自分にしてみる
最後に、どうすればこのような思考を持つことができるかを見ていきます。
その答えは、「自分に質問をする」ことです。そして、行動のホットポイントを掴むこと。ここでいうホットポイントとは、「それならできそうだし、効き目がありそうだ」と腑に落ちるポイントを指します。
そのためには、“ある質問” を自分自身に投げかけるのが効果的です。例として、以下のようなシチュエーションを想定してみます。
——あなたは、スマホを夜遅くまで見て、寝不足になっています。さらに時間を無駄遣いしている感覚が強くなっています。夜はしっかり眠り、本を読んだり資格を取るための勉強をしたりしたいのですが、なかなかやめることができません。そこで、「スマホを見過ぎない」という目標を立てましたが、これではうまくやめることができませんでした。では、どうすればいいのでしょうか?——
「スマホを見過ぎない」という、曖昧かつ行動志向ではない習慣行動を、自らへの3つの質問で変えていきましょう。
質問1:「で、結局なにをする?」(※行動を明確にするための質問) →家に帰ったら、スマホの電源をオフにする。
質問2:「なにをするとその行動はとまる?」(※悪い行動の発動をとめる行動を明確にする質問) →スマホの電源をオフにして、さらに郵便受けにスマホを入れて自分から距離を離す。そして、朝、出掛けるときに取りにいく。
質問3:「その行動が満たす欲求を別の方法で満たすとすると?」(代替行動を探る質問) →スマホの代わりに、静かなピアノのジャズ音楽を聴く。その音楽を聴きながら暗い部屋に入れば自然に眠くなってくる。
と自分で答えました。最終的に、「スマホは郵便受けに入れる。スマホを見る代わりにジャズを聴く」と決めましたということです。
このように、悪い習慣をやめたいとき、「~しない」と決めたら、そこから一歩踏み込み、目的のために「〜する」と決めてみましょう。そうすることで、しっかりと自分がいけないと思っている習慣をやめることに近づきていきます。
【今回の習慣化ルール】 悪い習慣をやめるためのポイントはこれ! ・「~しない」という習慣行動は続かない ・否定語を肯定語に置き換えてみる ・行動するためのホットポイントを探る