時間はないのにやるべきことが多い……。 ToDoリストが長くなる一方で一向に消化できない……。
そんなことに悩んでいませんか? ToDoリストを作ることでやるべきことを効率的にこなせるように思いますが、やろうやろうと思ってもついつい先延ばしにしてしまいがち。 しまいには余りにも長くなったリストを見るだけで憂鬱になってしまい、ついにはリストを放棄してしまった、という経験がある人もいるのではないでしょうか。
そんなことがあると自己管理能力の低さに凹んでしまうかもしれませんが、もしかしたら、それは能力の低さではなくToDoリストの弱点のせいかもしれません。
ToDoリストのここがダメ
ToDoリストはタスクを管理する方法のひとつとして、さまざまな工夫を凝らせば有効に使えるものです。しかし、ただタスクを列挙した形のToDoリストはさまざまな問題をはらんでいます。
一番の問題はタスクが先送りになりがちであるということ。 タスクの上に並んだリストは無機質で、必要な労力や時間、重要度などが分かりにくくなってしまいます。重要だけれど長期で取り掛かれるものと、さほど重要ではないが早めにこなした方がいいもの、といったように扱いを加味して逐一優先順位を考えるのは大きな手間になってしまいます。
溜まっているタスク全体がどの程度の重さであり、すでにどの程度は完了しているのか、ということの一覧性に欠けることもそれぞれのタスク遂行が滞る原因になってしまい、結果としてToDoリストが意味をなさない、という結果を招いてしまいかねません。
実際に「ToDoリストの41%は永遠に終わらない」ということが、ToDo管理サービスサイト、I done thisによる調査で分かっています。パンクしてしまったToDoリストは、そのまま放棄されてしまうのです。
さらにToDoリストの欠点はツァイガルニク効果と呼ばれる心理効果とも関係しています。完了していない「やるべきこと」は人間の記憶の中で意識を引きつけ続けてしまい、そのことがストレスになってしまうのです。
ToDoリストが長大になればなるほどこの心的負担は増加してしまいますから、結果的にToDoリストの放棄される確率は高まっていくことになるでしょう。
やるべきことは予定の中に
やるべきことが多い以上、何らかの形でそれを管理することは必須になります。その管理の方法として、ToDoリストからスケジュール管理へと移行することをオススメします。
「1440分の使い方──成功者たちの時間管理15の秘訣」の著者、ケビン・クルーズ氏はToDoリストを利用する代わりに、やるべきタスクを行動予定へと組み込む方法を紹介しています。
そうすることにより「タスクに必要とされる時間」や「締め切り」などの情報が、普段使うスケジュール帳の中で一覧として見ることができるようになりますし、実行する時間を確定することでタスクがついつい後回しになり、結果的に放棄されるということを防ぐことが可能になります。
さらにこの方法は、ツァイガルニク効果によるストレスに対しても有効な意味を持ちます。 フロリダ州立大学の研究によれば、ツァイガルニク効果の影響は、実際にタスクを完了したときの他、タスクを完了する予定を立てただけでも既に解消されるということが分かっているというのです。
つまりスケジュールの中にタスクを組み込んでしまうことで「近いうちにアレをやらなきゃ……」と考える必要がなくなり、ストレスが軽減し、そのことに認知能力を奪われないことによりパフォーマンスの向上まで望めるというのです。
着実にタスクが片付き、ストレスも軽減、認知能力まで高まるということは、ToDoリストを利用するよりもスケジュール帳の活用の方が何倍も優れたタスク管理術だと言えるでしょう。
スケジュール管理のコツ
ただ闇雲にタスクを予定表に書き込むことは、結局ToDoリストと同様にタスクの延期やパンクを招いてしまうかもしれません。そうならないために注意すべきことを次に紹介したいと思います。
・決めた予定を取り下げないようにする これは、スケジュール管理で最も重要なことです。 ケビン・クルーズ氏はスケジュール帳に記入したタスクを、病院の予約だと思って扱うよう勧めています。そのような意識でいれば、例えば突然振られたちょっとしたタスクを引き受けて予定をズラし、結果的に元のタスクが先送りになっていく、というようなことを防ぐことができます。
新たなタスクは冷静に「いつ処理するか?」と考え、予定に組み込んでいくことが重要です。また、例えば「病院の予約をキャンセルしてでも取り組むべきタスク」に出会った場合は、元の予定を組み替えるという選択肢も出てくるでしょう。
重要なのは「絶対に変えない」ということではなく「簡単に変更しない」ということ。その基準として「病院の予約」は良い指標かもしれません。
・重要度の高いタスクは1日の中で早い時間に組み込む 自分自身のキャリア形成に関わるものなど、非常に重要なタスクはなるべく1日の早い時間に組み込んでおきましょう。
時間が遅くなればなるほど予想外の出来事に予定の変更を余儀なくされるリスクは高まります。しかし、1日の始めの方であれば比較的予定通りにタスクを消化していける可能性が高いため、その後に何かが起こったとしても重要なタスクに対する被害を小さくすることができます。
早起きをして朝活をする、ということと併用すると、さらにタスクの処理が捗ることにもなりますね。
・スケジュール管理に完璧を求めすぎない スケジュールでタスクを管理することには利点もありますが、その反面、完璧を求めすぎると面倒になり、破綻してしまうというリスクもあります。
そのため、スケジュールとして記入するタスクは最低でも所要時間15分以上のもの、というように決めましょう。例えば「2分で終わるメールの返信」などの小さなタスクは別枠の「簡易ToDoリスト」の方へとストックしておくことをオススメします。
「簡易ToDoリスト」の一工夫は、スキマ時間を有効活用することに大きく役立ちます。また、重要なタスクを記入しているスケジュール帳が煩雑になるのを防ぐこともできます。
細かいタスクが増えた時も「いつ処理するか」を考えずに簡単にメモして済ませられるので、いつの間にか記入していないタスクがあった、という事態も避けられますね。
しかし、気をつけなければいけないのは、スケジュール帳にばかり意識が向いて、簡易ToDoリストが結局置き去りになるということ。スキマの時間を見つけては小さいタスクを潰していく、という意識は常に持ち続ける必要があるでしょう。
*** 抱えたタスクをどのように管理するか、ということは多忙なビジネスパーソンにとっては重要な課題であり、また工夫次第で他人に差をつけるチャンスでもあります。スケジュール管理で的確にタスクをこなし、効率よく仕事を進めていきましょう。
(参考) 日本経済新聞|成功者は「ToDoリスト」を使わない ケビン・クルーズ著, 木村千里訳(2017年),『1440分の使い方──成功者たちの時間管理15の秘訣』,パンローリング. I done this|The Busy Person's Guide to the Done List Wikipedia|ツァイガルニク効果