学生、社会人問わず、勉強の際に重要になるのが、スキマ時間の使い方です。
朝の通学・通勤電車の中、昼休みの時間、夜の寝る前の時間。こうしたスキマ時間の使い方は、様々なメディアで取り沙汰され、その重要性は誰もが認識しているはずです。
しかし、実際にこうした時間を有効活用できている方がどれくらいいるでしょうか?
筆者の大学受験時代を思い出してみても、通学電車ではスマホをいじり、昼休みは昼寝し、寝る前にはYouTubeで動画視聴に明け暮れていました。スキマ時間に勉強をするのは、意外と難しいことなのです。
今回は、そんなスキマ時間の勉強法に革命を起こす「手ぶら勉強」の提案です。
なぜスキマ時間にサボってしまうのか?
「気合いが不足しているからだ。」 「不真面目だからだ。」
こんな声が聞こえてきそうですね。確かに、それも一因かもしれませんが、原因をやる気や気合いに求めているうちは、成績が上がることはないでしょう。対策を立て、解決策を打つことができませんから。
筆者は、スキマ時間の有効活用ができないのは「道具を使えないから」だと考えます。
普段勉強する時、みなさんは何を使いますか? 机の上にテキストやノートを置き、ペンで書き込み、問題を解くはずです。
一方、スキマ時間はどうでしょう。通勤・通学の電車は非常に狭く、道具を広げることは難しいと思います。昼休みは忙しく、本やノートを出し入れする時間はありません。
もし通勤電車にグリーン車のようにテーブルと椅子が完備されていたら、勉強する気も起きるでしょう。寝る前に3時間取れれば、勉強道具を広げよう、という気分になりますよね。
スキマ時間に勉強ができないのは、時間的・空間的制約のせいで、道具を使ってじっくりと勉強することができないからなのです。
道具を捨てて「手ぶら」で学ぼう
スキマ時間を活用するには、二つの方法があります。一つ目は、時間的・空間的制約を解消すること。二つ目は、時間的・空間的制約を受けない勉強法を考案することです。
制約を解消することは難しいでしょう。通勤電車はどう頑張っても広くなりませんし、昼休みの時間が長くなるわけでもありません。時間的・空間的制約は所与の条件なのですから、それを無くすことはできません。
そこで今回私が提案するのが、道具の制約を受けない勉強法=「手ぶら勉強法」です。
道具なしで勉強ができるのかって? それが、できるんです。では、その方法をご紹介しましょう。
手ぶらレベル0「前日にまとめシート作り」
まず、手ぶら勉強をしようと思っている日の前日に、手ぶら勉強のための準備を行いましょう。今自分が勉強していることに関して、覚えたい知識、身につけたい内容を一枚の紙に書き落としてみるのです。今使っている教科書や参考書の内容をまとめて書くとやりやすいでしょう。このとき、シートのオモテ面にのみ書き、ウラ面は白紙のままにしておいてください。
手ぶら勉強は、この「手ぶらシート」をベースに行います。手ぶらシート作りで、手ぶら勉強が決まるといっても過言ではありません。
手ぶらシートには、スキマ時間を活用してインプットしたいことを、しっかり書き込みましょう。
手ぶらレベル1「電車の中でシートを見る」
勉強するには空間的制約の大きい「電車の中」。
そこで重宝するのが、前日に作成しておいた手ぶらシートです。ペン一本とシートだけをポケットに忍ばせたら、他の荷物はバッグにしまいましょう。
電車の中では、このシートを使って勉強してみてください。といっても、ただ眺めるだけでは意味がありません。手順は次の通りです。
- まず、オモテ面をよく読んでください。書いてあることを頭の中で反芻しながら、じっくり読みましょう。
- 次に、シートを裏返してください。じっくり読んだら、次は思い出す番です。シートのオモテ面は決して見ずに、内容をシートのウラ面にペンで再現していきます。
- 一通り書き終わったら、再びオモテ面を見る番です。何が書いてあったのか、しっかり確認しましょう。暗記の答え合わせをするのです。
ここで大切なのが、オモテ面を読む時はしっかり読む、ウラ面に書く時は何も見ないで書く、ということです。頭に入れなきゃいけないのに、オモテ面をちらちら見ながら、では意味がありません。メリハリをしっかりつけましょう。
手ぶらレベル2「スマホを使ってインプット・アウトプット」
時間的制約の大きい「昼休み・休憩時間」。
周りの人の目もありますから、勉強道具をあからさまに取り出すわけにもいきません。昼休みに勉強して「意識高い系」呼ばわりされるのも、つまらないですからね。
今度はシートとペンも使いません。自分のスマホを使って、知識のさらなる定着を目指しましょう。
もし先ほど電車の中で行った暗記の過程でわからないことがあったら、スマホで調べてみてください。用語であれば、Wikipediaを利用するのがおすすめです。「不正確な情報が載っている」「内容が更新されない」という声もあるWikipediaですが、それは一部のページに限った話です。出典が不明な情報や、根拠の薄い内容については、自動的にチェックが入る仕組みになっていますから、アカデミックな内容や知識は、かなりの精度と情報量を誇っています。(参考:CNET japan|「Wikipediaの情報はブリタニカと同じくらい正確」--Nature誌が調査結果を公表)
さらに、スマホを使って、情報のインプットだけでなく、アウトプットもできます。
以前Study Hackerでは、"「聞く」だけじゃない。 Yahoo!知恵袋「答えて」使う勉強法"という記事の中で、インターネットの質問サイトを活用し、自分の勉強している内容に関する質問に答えることで知識のさらなる定着を図る、という勉強法をご紹介しました。
休憩の短い時間で回答を完成させるのは難しいことかもしれませんが、細切れの休憩時間を利用して回答を少しずつ作成し、一日の終わりに回答を送信する、なんて使い方もできるかと思います。
手ぶらレベル3「瞳を閉じて“学び”を描こう」
一日の終わりである、「寝る前の時間」。
この時間は、振り返りによって有効活用しましょう。寝る前、机に向かい、頭の中で今日一日の学びを反芻してみてください。
まず、10分ほど時間をとり、今日学んだことを、頭の中でプレゼン形式にまとめます。時間がない就寝前ですから、紙に書いたり、パワポにまとめたりする必要は全くありません。
その後、1分間で今日の学びを「ひとりプレゼン」してみましょう。今日身につけた知識はどんなもので、何に応用が可能なのか。今日と昨日の内容は、どんな風に結びつくのか。プレゼンをすることで「わかったつもり」の部分や、曖昧な記憶を形にすることができます。
なんでも、人間の記憶は、寝ている間に定着するんだとか。一日で頭に入れたことを、寝る前に整理するのは、脳科学的にも理にかなった方法と言えるでしょう。(参考:ケーススタディの人生|夜の勉強は読書や暗記物がおすすめ 夜はインプットの時間)
「手ぶら」なら、学びの本質が見えてくる
道具を使えないから、勉強が進まない。それなら、道具を使わずに勉強すればいいのです。
手ぶら勉強には、さらなるメリットがあります。それは、本質的な学びを体験できるということ。
勉強の際に、テキストやノートといったツール中心に考えてしまう人は多いものです。例えば、数学の勉強。本来の目標は「テキストの演習を通じて、連立方程式の解法を身につけること」。しかし、「テキストを1周する」「問題集を◯ページ終わらせる」など、形にとらわれている人が多いように思います。
あえてツールを手放すことで、こうした「形」から解放され、学びの本質を追求できるようになるはずです。
(参考) ケーススタディの人生|夜の勉強は読書や暗記物がおすすめ 夜はインプットの時間 池谷裕二著(2011),『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』,新潮社. CNET japan|「Wikipediaの情報はブリタニカと同じくらい正確」--Nature誌が調査結果を公表 Study Hacker|「聞く」だけじゃない。 Yahoo!知恵袋「答えて」使う勉強法 Study Hacker|3時間の通学時間を勉強時間にして東大合格!電車を勉強部屋に変えた3つの戦略。