「こんな勉強が、将来何の役に立つんだろうか、無意味ではなかろうか」と思っている人はいませんか? 個人的には、受験勉強でいえば古文や漢文が一体全体何の意味があるのかと疑問に感じたことがあります。しかし、どんなことであれ、今やっていることを、その価値を信じて頑張ることは将来に向けて重要なことなのです。 今回はそのことをスティーブ・ジョブズの有名なスピーチの一部と、実際に「点と点をつなげた」人の話、そして、心理学的な知識をもとに紹介したいと思います。
スティーブ・ジョブズのスピーチ
スティーブ・ジョブズはオックスフォード大学の卒業式でスピーチを行いました。このスピーチはYouTubeにUPされ、多くの人々が視聴し、今や伝説のスピーチと呼ばれています。このスピーチの最初の1/3でスティーブ・ジョブズは次のような話をします。
未来に先回りして点と点をつなげることはできない。君たちにできるのは過去を振り返ってつなげることだけなんだ。だから点と点がいつか何らかのかたちでつながると信じなければならない。自分の根性、運命、人生、カルマ、何でもいいから、とにかく信じるのです。歩む道のどこかで点と点がつながると信じれば、自信を持って思うままに生きることができます。たとえ人と違う道を歩んでも、信じることが全てを変えてくれるのです。
(出典:我ら、地域の仕掛け人!)
「点」というのは、今ここに至るまでに自分がしてきたことです。 スティーブ・ジョブズの人生は波乱に満ちていました。まず養子として労働階級の夫婦に引き取られます。その後リード大学という私立大学に進学するのですが、学費が高く労働階級の養父母の収入を使い果していきます。そういう事情もあり、ジョブズは退学を決意するのですが、最後に必修科目とは関係のない、面白そうな講義だけに出てみました。 実はこの講義で教わったことが後にマックを生み出す原点となるのです。ジョブズは、退学を決意していなかったらその講義には出ていなかったといいます。また、もし家が裕福だったらもしかしたら退学しようとは思わなかったでしょう。
その時はマイナス要素だったかもしれない色々な点がつながって、あの巨大なアップル王国が誕生したことが分かりますね。これこそが彼が言いたい「とにかく信じなければならない」ということです。しかし、「点と点をつなげる」のは将来になって過去を振り返るときだけ。今は信じてただ突き進むしかありません。 信じて突き進めたならきっとその点が、他の点とつながってくれるはずなのです。
アンドリュー・ワイルズ
アンドリュー・ワイルズとは、フェルマーの最終定理という難問を解いた数学者です。この数学者も「点と点をつなぐ」ことになります。 ワイルズは少年時代から、フェルマーの最終定理をいつか解きたいと思っていました。しかし、院生の時に指導教官から「あらゆる天才たちが挑んでも解決できなかったフェルマーの最終定理に心血を注いで、人生を棒に振ってほしくはない」というようなことを言われ、楕円曲線という分野を研究することにします。
一度はそうやって諦めて、楕円曲線という分野で功績を上げていくのですが、数年後フェルマーの最終定理と楕円曲線が密接にかかわっていることが判明します。もう後は言わずもがなワイルズは長年培った楕円曲線の知識をフルに活かし、そしてついには少年時代からの夢であるフェルマーの最終定理を証明してしまったのです。
ワイルズも夢とは関係のないと思っていた「点」から結果的には夢へとつながったわけです。これも、ワイルズが違う分野でも真剣に取り組んできたからこそです。今やっていることをとにかく信じて努力することはきっと将来役立つということなのでしょう
信じることの心理学的メリット
心理学的には、何かをするときに、その価値を信じることはモチベーションを保つのに重要なことだとされています。実際、無価値だと思ったことをやるよりも、意味があると思ったことをやる方がやる気が出ますよね。 他にも信じることはプラシーボ効果という心理学的効果を生み、学習定着度が上がることが知られています。 このように「信じる」ということは、心理学的にもメリットがあります。どうせやるなら、信じて、効率的に学びたいものです。
*** いかがでしたか。ジョブズが言うように、点と点を結べるのは未来でだけです。何の意味があるかわからないことでも、頑張れそうなことであれば、「いつかは役に立つはずだ」と信じてがむしゃらに努力するしかありません。そうすれば、少なくとも環境のせいにして何も努力しない人よりは、輝ける未来が待っているはずだと、そうは思いませんか? きっと僕が首を傾げながら学んだ古文・漢文も、いつかどこかで何かとつながってくれる……に違いありません。
参考文献 我ら、地域の仕掛け人!|スティーブ・ジョブズの感動スピーチ(翻訳)字幕動画 Wikipedia|アンドリュー・ワイルズ