日本は保守的な国だと言われています。そのため、社会の中で秩序を乱さないこと、普通でいることこそが素晴らしいとされ、先人が築いてきたレールの上を何のためらいもなく歩くことに慣れてしまった人も多いかもしれません。

しかし現代では、以前に比べ個性が求められ、自分らしさが大切にされるようになりました。学歴ばかりが物を言うことはなくなりましたし、終身雇用や年功序列の時代も終わっています。個性を発揮しなければ、ある分野で頭角を現したり、人よりも一歩前に出たりすることは難しい時代なのです。

皆さんの中には、自分の個性を押し殺して無理に周りに合わせようとして苦しんでいる人はいませんか? あるいは、今よりもっと自分らしさを表現していきたいが、人と変わったことをすることは苦手。そんな自分を変えて個性豊かな人間になりたい……そうお考えの方もいることでしょう。

このコラムでは、「自分らしさ」についてお悩みの方に、個性を持ち、発揮できるようにするためのヒントを与えられたらなと思います。

そもそも「個性」とは

「個性」とは、他の人とはちがった、その人特有の性質・性格や個人の特性のこと。その個性が特に重要視されるようになったのは、いわゆる「ゆとり教育」が始まってからだと考えられています。それまでは、運動でも勉強でも一位でなくてはならないと強調されていた時代から一転、個性を重んじる教育になり、個性的であることこそが素晴らしいと言われるようになってきたのです。

一方で、そんな「個性」を実社会で役立たせることの難しさを、精神科医の熊代亨氏は自身のブログで次のように語っています。

個性が無条件に礼賛されているわけではない。現実に礼賛され、選ばれているのは、“使える個性”“欲しい個性”であって、“使えない個性”“欲しくない個性”ではないというのが、世間の動向ではないだろうか。

(引用元:シロクマの屑籠|使えない個性は、要らない個性。

せっかくなら、実社会で”使える個性”を身につけたいものです。

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人物が重要視される現代

転職サイトの「マイナビ転職」が、企業の中途採用担当者100人を対象に行なった調査によると、自社の選考が、経験・スキルよりも「人物重視」であると答えた人は63%に及びました。「人物重視」で言う「人物」とは、「経歴だけでは見えない部分」のこと。協調性や意欲、理解力、社風とのマッチング度合など、要素は多岐にわたります。

求人情報に「人物重視」と記載する企業の本音としては、型に捉われずに多くの応募者を募りたい、求職者に安心して応募して欲しい、社員を大切にし人間関係が良い企業イメージを与えたいという思いがあるそうです。学歴や経験だけで採用対象者を絞ることはしないという方針が、「人物重視」というものなのです。

また最近では、求職者が企業に提出するエントリーシートに「自由記入欄」がある場合がよく見受けられます。そこには、採用する側の、“求職者の個性や創造性が見たい”といった意図があるのだそう。企業は、求職者にフォーマットにとらわれない自由なPRを課すことで、その人物の個性や創造力を見極めようとしているのです。

このように、採用の現場においては経歴のみならず「人物」「個性」が重要視されていることは明らかです。企業は、求職者の人物を重視することで、その人の個性が企業とうまくマッチするか、つまり、企業にとって“使える個性”であるかどうかを見極めようとしているのです。

自分らしさを重視して大失敗

自分らしさは、発揮しすぎると失敗してしまうこともあります。ひとつ例を挙げましょう。

元ライブドア代表取締役社長CEOの堀江貴文氏は、2004年にプロ野球球団の買収に乗り込みました。本業の競合他社でもある楽天と参入を競い合った結果、審査の末経営体力の不足等が指摘され、ライブドアの参入は実現に至りませんでした。楽天(東北楽天ゴールデンイーグルス)の参入が決定したのです。

堀江氏も、参入を競い合った相手の楽天・三木谷浩史氏も、「ノージャケット・ノーネクタイが基本」のネット業界で働く2人。その業界ではラフな格好で仕事をするのが当たり前であったとしても、他の業界からすればそのような仕事のスタイルは個性的だといえます。彼らは同じ業界の人物でありながら、個性の貫き方には差がありました。堀江氏は一貫してTシャツ姿、一方の三木谷氏は濃い色のスーツに白いシャツ、ネクタイ姿だったのです。その当時の話を、堀江氏は次のように語ります。

「プロ野球の歴史をきちんと調べれば、Tシャツではなく、スーツにネクタイ、そして渡邉恒雄さんに挨拶に行くべきでした。三木谷(浩史)さんが成功したのは、僕の失敗があったから」。(中略)
(もしも“あの時”に戻れたら)「スーツにネクタイ、そして渡邉恒雄さんに挨拶に行きます」

(引用元:HRナビ by リクルート|最後に成功すれば勝ち、人の記憶は上書きされる――ホリエモンが語る“成功論”

個性は、正しく活かせば強力な武器になるものの、時にはいとも簡単に周りを敵に回してしまうこともあります。個性の活かし方には注意が必要と言えるのです。

では、個性、自分らしさを、実社会で活かすにはどのようすれば良いのでしょうか。

自分らしさを表現する方法 その1:まずは自分の個性が何かみつける

ここからは、実社会で使える個性を身につける方法、およびその活かし方についてお伝えしようと思います。

個性には大きく分けて、以下の2つがあります。

【1】生まれ持った先天的な個性:身体、顔、声、体質などの素材としての個性。
【2】成長過程で身についた後天的な個性:コミュニケーション能力、特技や特技など。県民性など環境によって左右される個性も指す。

これらの個性は次のようにして見つけることができます。

【1】の個性を見つける方法:
内面の長所、短所と思っていること、外見の長所と短所と思っていること、自分の好きなことと嫌いなことを認識するところから始めてみましょう。自分で思いつく限りの要素を挙げ、多く見積もって100個くらいノートにリストアップしてみてください。

こうすると、プラスな点はもちろんマイナスな点もたくさん見えてきます。その中には一見マイナスに見えるが実はプラスに変えられることだってあります。例えば、私は背がとても低く、以前はこのことがコンプレックスでした。ですが今では、身長の低さゆえに初対面の方々にもすぐ覚えていただけることはむしろ個性であり、強みだと思うようになりました。今となっては身長の低さこそ個性だと自信を持って言えます。

どんな個性も否定せずに、まずはプラスに受け入れてみることが大切です。

【2】の個性を見つける方法:
家族・友人・先生・上司・恋人など、様々な関係性の人から、他人の目で見た自分の特徴や、長所および短所を教えてもらうことが一番手っ取り早いと思われます。人からどう見えているかを知ることで、思いもよらなかった長所に気づけることがあります。また、自分では気にもしていなかったことが他人の目には短所として映っているのだと知ることができれば、改善点や新しい可能性が見えてくるかもしれません。

以上のように、まずは個性を主観として認識するところから始めて、客観的な意見も取り入れながら、自分の代名詞となるような個性を見つけるといったプロセスを踏んでみてください。

そして、現在自分が持ち合わせていない個性であっても、周りを見回して取り入れたいなと思う個性があれば積極的に取り入れるのも良いでしょう。いろいろな要素を組み合わせることによって、他の人にはまねできない本当の自分らしさを表現することに繋がるはずです。

自分らしさを表現する方法 その2:個性があることに自信を持つ

“個性=自分らしさ”を見つけたのであれば、次はそれらをコントロールしていきましょう。自分らしさをうまくコントロールすることで、個性に自信を持つことができるようになるからです。

例えば、人とコミュニケーションをとることが大の苦手だが、暗記をすることやデータを素早く処理することに長けている人がいたとします。その場合、無理して人と積極的にコミュニケーションをとろうとしなくて構いません。なぜなら、あまり人とコミュニケーションをとらなくても自分の長所を活かせる場所があるはずだから。

私の友人にも、コミュニケーションが苦手なために画像診断を専門とする放射線科の医師になった方や、ビッグデータの処理に関わっている人などがいますが、彼らは「今の職業が天職だ」と皆口々に言っています。このように、自分の長所と短所をうまくコントロールできれば、短所にばかり意識を向けることなく、自分の個性というものに自信をもつことができるのです。

もう1つ例を挙げます。特にカラフルな服を着ることを好み、普通のファッションが肌に合わず悩んでいる大学生がいるとしましょう。大学生のうちは好きな恰好ができるかもしれませんが、社会に出るとそうとは限りません。その場合は、いろいろな服装を試してみて、これくらいなら派手だと思われない、これくらいなら周りに受け入れてもらえるといったラインを、周りの反応を確かめながら把握していくのです。

このようにしながら自分の個性としてのファッションセンスをコントロールしていくと、社会に出てからも評価される、本当の意味でセンスのいい人になれるでしょう。職場の先輩などから「どこで洋服買っているの?」「〇〇さんいつもセンス良い服着てるよね」「今度このデザイン手伝ってよ」等と言われ始めたら、そのファッションセンスは自慢できる個性だと言えるようになるはずです。

このようにして自分らしさをコントロールする際は、周りと比べる必要はありません。これは筆者がアメリカに半年間留学した経験から学んだことです。現地の大学生はみな誰かの真似をするわけでもなく、誰かと群れるわけでもなく、思い思いの自分の好きな格好をし、好きな車に乗り、好きな進路を歩んでいました。誰に何を言われようとそれに構うことなく「私は私」といった風で、自分の好みやポリシーを貫く傾向にありました。それはまさしく、自分なりの考えや発想に自信があったからです。

自分の個性は、他人にはない、まさに自分だけのもの。自信をもって自分の個性を育てていきましょう。

自分らしさを表現する方法 その3:努力と研鑽を積む

個性を身につけられたとしても、実社会で実力を発揮するのはまた別の話であり、それには当然努力が必要とされます。ここでまた一つ例を出しましょう。

イチロー選手(本名:鈴木一郎氏)は、プロの野球選手になるべく、小学3年のときから、365日中360日は練習をしていたそうです。多くのスポーツ選手がそうであるように、友人と遊ぶ時間もかなり限られており、いわゆる普通の学校生活を送ることはできなかったでしょう。しかし、イチロー選手の突き抜けた才能と、これまで世に残してきた前人未到の記録というのは、幼少期からの努力なしには語れません。変人だと揶揄されることや個性的であることを恐れず、ひたすらに目標に向かって努力してきたからこそ、これまでの大記録が打ち出されたと言っても過言ではないでしょう。彼は、素晴らしい結果を出したからこそ、それまでの努力や一風変わった生活が周りの人間に評価されたのです。

イチロー選手の例に学べるのは、過去というのは、今の成功によって上書きされるものだということ。「あの人、浮いているよね」などと揶揄されてしまうほどの強すぎる個性を持っていたとしても、圧倒的な成果を出せば、その個性は周囲に認めてもらいやすくなります。

自分の個性を自覚したら、そこで満足してはいけません。努力を積んで結果を出してください。個性が他人に認められる個性であるためには、それを維持し続ける努力と、結果を出すための努力をし続けることが大事。そうすることでこそ、さらに個性は磨かれるのです。

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現代に生きる人の中には、周りに流されて生きていてもなお、自分らしく生きたいという思いを抱えながら生きている人が多いように感じます。
これからは胸を張って自分の個性を武器にしてみてはいかがでしょうか。

(参考)
PRESIDENT Online|変人が認められる瞬間
STUDY HACKER|出る杭は打たれる日本で、それでも一歩前に出るために必要なこと。
マイナビ転職|求人での「人物重視」で、企業が求めていることとは一体なんだ!
HRナビ by リクルート|最後に成功すれば勝ち、人の記憶は上書きされる――ホリエモンが語る“成功論”
黒木靖夫著(2001),『ビジネスマンのための「個性」育成術』,日本放送出版協会.
富坂美織著(2012),『自信加乗 ハーバードの論理力 マッキンゼーの楽観力 ドクターの人間力』,講談社.
シロクマの屑籠|使えない個性は、要らない個性。