「プレゼンをしても、聴衆が聞いていないように感じる」 「自分の話はつまらないんじゃないか」 「『そんなの聞いていない』とよく言われる」
こんな悩みを抱いている方は少なくないのではないでしょうか。もしかするとその悩みの原因は、あなたが「伝える」だけで満足してしまっているからかもしれません。そこで今回は、「伝える」を「伝わる」に変えるコツをご紹介します。
なぜ「伝わらない」のか
「伝える」と「伝わる」。一文字違いですが、英語でいえば「speak」と「tell」くらい違うと考えたほうがいいでしょう。「伝える」はあくまでも一方通行。もし、「メールで依頼した案件を断られた」「プレゼンをしても退屈させてしまう」「企画書の中身を読んでもらえない」などの経験がある方は、一方通行の伝達で満足している可能性が高いかもしれません。では、「伝わらない」伝え方をしている方の特徴を挙げてみましょう。
結論が見えない
話がわかりにくい人の特徴としてたびたび挙げられるのは、「経過から話しているために結論が見えない」ことです。例えば、上司に仕事の進捗状況を伝える際に「新商品の企画の進捗状況ですが、月曜日にトラブルがあり、昨日まで担当者が対応に追われていましたが、今は落ちついており、順調に進んでいます」という説明をしてしまうのが経過型の話し方。つい途中で「で、結果は?」と遮りたくなってしまいますよね。
無意識のうちにこのような話し方をしている人は、聞き手の意欲をそいでしまわないためにも、まず話す順番から改善していく必要があります。
理解させる隙を与えない
多くの人がやってしまうのが、専門用語などの一般的ではない言葉の多用。もちろん、他社や他業種の人の前で自社用語や業界用語を使ってしまうのは論外です。また、漢字の音読みや三文字アルファベットなども、口頭ではぱっと理解できないこともあります。
相手に理解してもらうには「間」が重要です。沈黙を恐れるあまり、つい「あー、えー」と言ってしまうと、伝わらなさに拍車がかかります。また、取捨選択せずに多くの情報を提示しすぎて、結果的に相手の記憶にはほとんど残らない、というのもありがちな例ですね。
うまく伝えるコツ1 数字を効果的に使う
「ほとんどの生徒が志望校に合格しています」よりも「98.5%の生徒が志望校に合格しています」のほうが印象に残りますよね。さらに「これまでにたくさんの方が来場しています」よりも「これまでに2万5,628人の方が来場しています」のほうがイメージしやすいはず。同様に、「約500社の企業が当社のサービスを利用しています」よりも、「516社の企業が当社のサービスを利用しています」のほうが、より多くの企業に利用されているように感じられませんか?
このように「ほとんど」「たくさん」といった副詞を使ったり、おおよその数を提示したりするよりも、具体的な数字を利用したほうが印象に残りやすくなります。また、あまりにも大きな数字はピンとこなくなってしまうため、数字でインパクトを与えたい場合は小さくキリの良い数字を使いましょう。
TEDのプレゼンテーションでイギリスのシェフが用いた話し方がこちらです。
これから話をする18分の間に4人のアメリカ人が死にます。食べ物が原因で
(東洋経済ONLINE|話が面白くない人は伝え方のコツを知らない)
年間に亡くなる数よりも、「18分の間に4人が亡くなる」という数字の方がインパクトが強く、実感がわきやすいですよね。相手を引き込んで「伝わる」話をする際には、このようにどのように提示したら一番インパクトに残りやすいかを考えながら数字を用いると非常に効果的になります。
うまく伝えるコツ2 相手の反応を観察する
相手に話を切り出すときのタイミングも重要です。具体的には、共有スケジュールや会話の内容などから相手の忙しさを推測し、「〇〇の件についての話ですが、今お時間よろしいですか? 〇分程度で終わります」と、相手が会話できる状態かを確認してから切り出すと良いでしょう。相手が時間を気にしているようならば、時間に余裕のあるときに仕切り直すことも必要ですね。
また、自分ではわかりやすく話したつもりでも、相手がおいてけぼりになってしまえば何の意味もないですよね。自分が意図していることが伝わっているかを確認するには、相手の反応をうかがうしかありません。もし表情や雰囲気だけで読み取ることができない場合は、相手から「聞きたい」という気持ちを引き出すように心がけましょう。例えば「〇〇ですが、山田さんはどう思われますか?」「××のような経験はございますか?」といった質問を投げかけることで、話を聞こうという姿勢や「これは私たちの話だ」という実感と興味を引き出すことができます。
うまく伝えるコツ3 センテンスを区切る
事前に話を整理していない人がやってしまいがちなのが、要点をまとめずにダラダラと話してしまうこと。例えば新しい企画を提案するとします。「〇〇という企画を考えたのは、××についてより深くお客様から理解していただきたいというのが理由でして、とくに△△という点につきましてはいっそうこだわりまして、お子様からお年寄りまでご利用いただけるものになればなと」といったとりとめのない話し方は、事前に頭の中を整理できていない人がやってしまいがちな話し方と言えるでしょう。
「〇〇という企画を考えました。理由は××についてより深く理解していただきたいと考えたからです。とくに、△△という点につきましては、お子様からお年寄りまでご利用いただけるようにいっそうこだわりました」こちらのほうが、相手も聞く気になりますよね。このように、一文を短くするように心がけながら句読点を意識して話すと、説得力のある話し方になります。2011年の東日本大震災時に開かれた枝野幸男官房長官(当時)の会見がわかりやすいと評判だったのは、枝野氏がきちんと間合いをとった話し方をしたからだとも言われています。
いざというときに焦らず落ち着いて伝えられるように、意識的に短いセンテンスで話してみましょう。日ごろから1、2行程度のセンテンスで会話するように心がけると、聞き手が興味を持って耳を傾けてくれるようになりますよ。
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「伝えている」つもりでも「伝わっていない」ということにならないように、相手の立場に立ったわかりやすい伝え方を意識していきたいものですね。
(参考)
東洋経済ONLINE|話が面白くない人は伝え方のコツを知らない
東洋経済ONLINE|文章のヘタすぎる人が知らない「悪文」の正体
しごとのみらい|わかりやすく伝えるたった1つの話し方のコツ
しごとのみらい|「伝える」を「伝わる」に変えるコミュニケーション2つのポイント
日経スタイル|話が「伝わる人」と「伝わらない人」、7つの違い
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