一生懸命に仕事をしているのに効率が上がらない。集中しようとしても不注意によるミスが少なくならない。その悩み、脳の前頭前野に着目することで解決できるかもしれません。今回は、前頭前野を活性化させて仕事の効率を高める方法をご紹介します。

前頭前野の役割

ところで【前頭前野】には、どんな役割があるのでしょう。

人間の脳は、脳幹を中心に増築され発達してきました。「脳幹」には自律神経機能の中枢があり、歩行など基本的な運動の調節も行います。その上にある「視床下部」は食欲や性欲をコントロールし、その外側にある「大脳辺縁系」は喜び・悲しみ・不安・恐怖・怒りなど、本能的な感情に関わっています。

そのさらに外側にあるのが「大脳新皮質」です。この部分が発達しているのは人間と、同じ霊長類であるサルのみ。つまり、高度な認知や行動を可能にしている部分というわけです。その「大脳新皮質」のなかに、後頭葉・頭頂葉・側頭葉とともに「前頭葉」が存在します。「前頭葉」は、「大脳辺縁系」の本能的な感情をコントロールする働きがあるので、この存在によって理性的な判断が可能となっています。

そして、「前頭葉」のなかでもっとも前に位置する、ちょうどオデコのあたりが【前頭前野】。セロトニン研究の第一人者で脳生理学者の有田秀穂氏は、この部分を“人間のこころ”と表現しています。【前頭前野】には、「考える・記憶する・アイデアを出す・感情をコントロールする・判断する・応用する」といった働きがあります。脳を人間のコンピューターとするならば、【前頭前野】はコンピューターのなかのコンピューター。

つまり【前頭前野】の役割は、「人間を知的かつ理性的にすること」なのです。

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仕事の効率やミスは脳の活性化で解決?

前頭前野が発達するほど、知的かつ理性的になることがわかりました。では実際に、仕事の効率を上げることやミスを無くすこととは、どう関係してくるのでしょう。

一般的に、ビジネスシーンにおいて役立つのは感情的な考え方よりも、理性的・論理的かつ合理的な思考であるといわれています。そして、その思考は効率良く仕事を進めるために必要不可欠です。

特定非営利活動法人しごとのみらい理事長で、米国NLP協会認定NLPトレーナーの竹内義晴氏も、著書『感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。』のなかで、「『感情』を制する者が、『仕事』を制すといっても過言ではない」と述べています。これはまさに先述した、大脳辺縁系の本能的な感情「喜び・悲しみ・不安・恐怖・怒り」をコントロールする、前頭前野の働きといえるでしょう。また、京都大学による「こころの未来 - 私たちのころは何を求めているか第 2回講演」のなかでは、前頭前野の活動が高いと、理性的・論理的かつ合理的な思考が可能となることを示しています。

これらを踏まえると、脳の前頭前野の働きを良くすることによって日々追われている仕事を制し、効率良くこなすことが可能であるといえるのです。

では、ついウッカリやってしまう仕事のミスはどうでしょう。

『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』の著者であり、トレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏は、前頭前野にあるワーキングメモリを例にあげ、そもそも脳自体がミスを起こしやすいメカニズムであると述べています。ワーキングメモリの容量は大きくないため、あるものに注意がいくと、他のあるものをすぐに忘れてしまう性質なのだとか。

しかし、作家で神経内科医の米山公啓氏はワーキングメモリーを鍛えることは可能だといいます。それに、前頭前野を活性化する行動は、すでに明らかにされているのです。

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前頭葉を活性化させる方法

では、どのようにして前頭前野を活性化したら良いのでしょう。

神経内科医の米山公啓氏は、前頭前野のワーキングメモリーを鍛える方法として、以下7つの方法を伝えています。

1.新聞を読解し、印象に残った単語を4つあげる。
2.電車の吊り広告を見て覚え、単語を思い出す。
3.会話中の内容を記憶するように聞く。
4.新曲を覚えカラオケで歌詞を見ずに歌う。
5.読書や音楽鑑賞の際に、頭のなかでイメージをつくり出す。
6.いずれも出来事すべてではなく、3つだけを記憶する。
7.いずれも記憶する際、楽しく記憶しドーパミンを出して脳を元気にする。

インプットしたらすぐにアウトプットしたり、無理なく楽しく記憶したりがポイントですね。でも、それだけが前頭前野を活性化させる方法ではありません。実は、とても身近な行動でも可能なのです。

それは、「適度に体を動かす」「料理」「屈託のないおしゃべり」「新しいことへの挑戦」「好きなことを楽しむ」です。

意外に簡単で拍子抜けしてしまいますよね。しかし実際に、これらの行動により前頭前野が活発に働き、活性化されることが確認されています。それに、よく考えてみてください。もしかして毎日仕事仕事で、むしろ普通の生活のほうが疎かになっているのではありませんか? 実はそれこそが仕事の効率を下げ、ミスを増やしているのかもしれません。

「ワーキングメモリーの鍛錬」プラス、「ごく当たり前の生活を楽しく健康的に送り、なおかつチャレンジ精神を無くなさないこと」が、ビジネスパーソンを磨き上げていくのです。

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トレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏は、ワーキングメモリを圧迫しないため、メモやチェックリストを記憶補助の仕組みとして使うことや、ワーキングメモリを食わないルーティンワークをうまく活用することを進めています。そういった方法も取り入れながら、ワーキングメモリーを鍛え、楽しく健康的に生活して前頭前野を活性化して、仕事の効率を高めてくださいね。

(参考)
有田秀穂著(2011),『育脳の技術』,主婦と生活社.
柿木隆介著(2015),『どうでもいいことで悩まない技術』,文響社.
茂木健一郎著(2008),『脳を活かす仕事術』,PHP研究所.
竹内義晴著(2017),『感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。』,すばる舎.
理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI) | 脳の進化 | 脳について
信濃毎日新聞松本専売所 | 新聞の音読(子ども)
京都大学 | こころの未来-私たちのこころは何を求めているのか- 第 2 回
日経サイエンス | 自己の神経生物学 「私」は脳のどこにいるのか
東洋経済オンライン | 「仕事のミス」は脳を鍛えれば絶対に減らせる
小さな組織の未来学 | 脳のキレを取り戻す、ワーキングメモリーの鍛え方 7選
NHK | プロフェッショナル 仕事の流儀 | 脳の老化をふっ飛ばせ