圧倒的なパフォーマンスを発揮して勝利を収めたスポーツ選手が、試合後のインタビューで口にする言葉には、いくつかの共通点があります。たとえば……
- まったく疲労感がない
- 宙に浮いているような感じ
- 無意識
- 直感的
- 自動的に動作を行なった感じ
- 時間がゆっくりに感じた
スポーツ心理学によると、これは「ゾーン」や「フロー」と呼ばれる心理状態です。
フローやゾーンになれるのはアスリートだけ、と思っていませんか? 少年漫画などでしばしば誇張され、無敵のように描かれるため、一般人には無縁のように感じるかもしれません、
しかし、スポーツ心理学の発達によって少しずつ解明され、ゾーンやフローの状態になる方法が明らかになりつつあるのです。私たちの仕事や勉強にも大いに活用できますよ。
どうすれば、ゾーン状態に入れるのでしょうか?
キーワードは「緊張」と「リラックス」
極度の集中状態に入っているアスリートを調査したところ、ある共通点が見つかったのだそう。
それは、まず極度の緊張状態に入ること。次に、脳を一気にリラックスさせ、目の前の問題に集中し、「よし、やるぞ!」と意識を切り換えること。
「緊張」「リラックス」という正反対の状況により、セロトニンやドーパミンといった快楽物質が脳で分泌され、極度の集中力と、非常に高いパフォーマンスを発揮できるのです。
五郎丸選手がきっかけで広く知られた「ルーティーン」とは
ラグビー日本代表の選手として一躍有名になった、五郎丸選手。キック前の独特の動きを覚えていますか?
あれは、「ルーティーン」と呼ばれるものです。ルーティーンとは、要所要所で一定の動作を行ない、その一点に気持ちを向けることで、次のプレーの準備をすること。
ゾーン状態は、極度の緊張から目の前のことへの集中に転じることで生まれます。目の前のことに集中するため、ルーティーンが行なわれているのです。
単なるパフォーマンスではなく、実力の発揮に欠かせない重要な手続きなのですね。
ルーティーンを行なうのは五郎丸選手だけではありません。野球選手がバッターボックスでバットを動かしたり、テニス選手がサーブ前にボールを何度か地面で弾ませたりするのも、ルーティーンの一種だと言えます。
仕事や勉強で高いパフォーマンスをあげる3つの方法
アスリートではない私たちビジネスパーソンは、どうやったらゾーンのような集中状態に入れるのでしょうか? 3つの方法をご紹介します。
1. ストレス要因を意識する
リラックスするだけではゾーンに入れません。まずは「緊張状態」になることが必要でしたね。
たとえば、ノルマや締切を意識してみましょう。
「今日中に60件処理しなきゃ……」
「1時間で8件か……」
そう意識するだけで、緊張感やストレスを感じませんか? その状態からストレスを解放し、ルーティーンによって目の前のことに集中することで、ゾーンに近い集中力を発揮できるはずです。
2. 瞑想でストレスを解放する
強い緊張を感じたあとは、リラックスしてストレスを解放します。たとえば、「瞑想」として深く呼吸しつつ、呼吸している体の動きに意識を向けてみては?
「呼吸の瞑想」のやり方は、「社会人におすすめのルーティン7選【STUDY HACKER推奨】」で解説しています。
3. ルーティーンをもつ
ゾーンに入るため、あなたなりのルーティーンを用意してみましょう。PC作業を始める前の「これをやったら集中モードに入る!」という動きを決めておくのです。
たとえば、「机を整理して、外した腕時計を特定の場所に置き、秒針をじっと見る」といった具合。繰り返すうちに、ルーティーンとして脳に刷り込まれますよ。
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天気や体調によって、仕事に集中しづらい日もあるでしょう。そんなときは、ご紹介した方法を実践し、「ゾーン」に近づいてみてください。
集中力を自分でコントロールし、仕事で最善の成果を出せるようになりたいものですね。
(参考)
高妻容一(2002),『今すぐ使えるメンタルトレーニング 選手用』, ベースボールマガジン社.
【ライタープロフィール】
布川愉之
京都大学経済学部所属。栃木県立宇都宮高校卒業。ウインドサーフィン部で活動し、風を追い求め日々琵琶湖に通っている。マイブームはアラビア語。