コミュニケーションで失敗しない重要原則「142cm」「32秒」「10回」って何のこと?

コミュニケーションで失敗しない重要原則01

みなさんは、自分のコミュニケーション能力に自信はありますか?

「特に初対面だと緊張してうまく話せない……」「雑談が苦手でなかなか人と打ち解けられない……」「言いたいことが上手に伝わらない……」など、日々の生活のなかでコミュニケーションがうまくとれずに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

さまざまなコミュニケーションサービスを提供する株式会社JTBコミュニケーションデザインが、大学生以上を対象に行なった調査によれば、コミュニケーション全般に関して苦手だと感じている人は、およそ58%にものぼったのだそう。

苦手意識を持たれやすいコミュニケーション。できれば不必要な失敗は避けたいものですよね。今回は、コミュニケーションを成功させる4つの重要原則について紹介します。

【重要原則1】パーソナルスペース「142cm」を守れ!

たとえば電車やエレベーターがすし詰め状態のとき、普段よりイライラしたり、人と接触して「気持ち悪い」と感じたりしませんか。それは、自分の「パーソナルスペース」が侵されているからです。

パーソナルスペースとは、アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホール氏らが提唱したもの。相手が近くにいるときに不快に感じない、その人個人の守りたい適切な距離を指します。相手に警戒されないためには、このパーソナルスペースを意識して接することが必要なのです。

東洋学園大学人間科学部の相羽美幸氏の調査によると、相手から近寄られると、目を合わせない状態では「91cm」で不快感が、合わせた状態では「142cm」の距離間で不快感が生じることが判明しました(※ただし、男女の差、育った環境、性格との関係、相手との親密度などによって多少変わってくるとのこと)。対面で相手を見つめながら必要以上に距離を詰めると、圧迫感や不快感を抱かせてしまうので要注意ですよ

また、早稲田大学で発表された「座席配置が気分に及ぼす効果」の実験研究論文では、座る場所によって緊張度が変わることがわかっています。最も緊張度が低いのは横に座られた場合。次に斜めの座席、そして最も緊張を感じるのが正面とのこと。正面に座られた場合、相手から「見られている感じ」をより受けるため、緊張してしまうのだそう

それほど親しくない相手とテーブルを挟んで会話をするときは、正面よりも斜め横に座ってみるのもいいかもしれませんね。そして、相手との適度な距離を保つために、体の前で手を組んでスペースを確保したり、前のめりになりすぎないように注意したりしましょう。

コミュニケーションで失敗しない重要原則02

【重要原則2】アイコンタクトは1分あたり「32秒 」

相手と話すとき、つい視線をそらして下を向いていませんか。特に、相手がそれほど親しくなかったり初対面だったりすると、「相手の顔を見て話すのはなんだか気まずい」「視線を向けられると怖い」などと思い、視線のやり場に困るかもしれません。しかし、まったく視線を合わせないよりも、適度に視線を向けたほうが、相手にいい印象を与えられるかもしれませんよ。

日本大学芸術学部教授の佐藤綾子氏は、クライアントの心をつかむのに、1分間に32秒以上アイコンタクトをとるのが効果的だといっています。また、ロンドン大学の研究によれば、人を注視するのに適切な長さは「3.3秒」とのこと。これらを踏まえると、3秒程度視線を送ったら、そのあと3秒程度は手元の書類を見たり視線を宙に浮かせたりするのがちょうどよさそうですね。

しかし、アイコンタクトはその視線の方向性も大事。相手の瞳を中心に見つめられると、圧迫感や恐怖感を与えてしまい、逆効果となってしまいます。

前出の佐藤氏いわく、視線をやるのに好ましいのは、相手の両目と鼻筋上半分を囲った「二等辺三角形」の範囲内とのこと。そのあたりに目を向ければ、相手にもアイコンタクトが送られていると感じ取ってもらえるのだそう。

また、エディス・コーワン大学の研究チームによると、人は相手が自分の目を見ているときだけでなく、“自分の顔の方向に視線がある” だけでも、アイコンタクトとして認識するという研究結果を出しています(=アイコンタクトの錯覚)。あまり人と目を見て話すのが得意でない人は、相手の顔の額、鼻、口元のあたりにぼんやりと視線をやるだけでも、アイコンタクトとして相手に充分伝わるはずです。

コミュニケーションで失敗しない重要原則03

【重要原則3】「10回」を目安に接触回数を増やす

初めはその商品に興味がなかったのに、テレビCMを観るうちに次第に気になり始めて、つい買ってしまった……。テニスに興味はなかったのに、話題になる選手を見続けているうちにその選手が好きになってしまった……。こんな体験をしたことはありませんか。これは、その物(や人)に接触する回数が増えるたびに好感を持つ「ザイオンス効果(単純接触効果)」によるものです。

ザイオンス効果の名前にもなっている、米国の心理学者ロバート・ザイオンス氏は、参加者に知らない言葉を繰り返し見せる実験をしました。すると、見せた回数が多いほど、その言葉の好感度も増すという結果が判明。しかも、接触する「時間」よりも「頻度」のほうが関係してくるらしいのです。

これはマーケティングでも活用されていますが、対人関係でも応用ができます。たとえば、日ごろから挨拶を心がけたり、臆さず質問をしたりすれば、相手との小さな接触の回数を増やせますよね。あるいは打ち合わせも、1回に長い時間をかけるよりも、短く区切って頻度を重ねて開いたほうが効果的でしょう。

さらに、日本ファシリテーション協会フェローの堀公俊氏は、次のように述べています。

この効果は、ニュートラルな人にポジティブ感情を抱かせることはできても、ネガティブ感情を持った人をポジティブにすることはできません。(中略)また、「接触すればするほど好感度が上がる」といっても、限界があります。10回くらいがよい頃合いであり、それ以上回数を増やしてもなかなか上がりません。「目標1000回!」なんて頑張りすぎると、「ウザい」と言われて、やはり好感度を下げてしまいます。

(引用元:NIKKEI STYLE|顧客開拓の鉄則 「とにかく10回会え」には根拠がある ※太字は筆者が施した)

たとえば、親しくなりたい相手に対して、「10回」を目安にこちらから声をかけてみては? 10回以上声かけて、相手の反応が変わらない、あるいは嫌悪感を漂わせ始めたら、続けても逆効果になるので、そこでいったん距離をおいてみるのもいいかもしれませんね。

コミュニケーションで失敗しない重要原則04

【重要原則4】簡潔に話す「15秒」話法

相手に伝えたいことを話すとき、つい早口になって、間を置かず一気に話してはいませんか。幹部育成選抜研修の企画等に従事してきた、株式会社TLCO代表取締役の田口力氏は、一文を「15秒」以内にまとめて簡潔に言いきることが、伝えるコツだと紹介しています。

1文の長さを10~15秒以内にする理由は、「サウンド・バイト」にも見られる、人の集中力という観点からも説明できます。

「サウンド・バイト」とは、テレビやラジオなどのニュースで放送するために、政治家や評論家などの発言を抜粋したもののことです。

(中略)

なぜ、10~15秒以内なのか。それは、人の集中力が長く続かないからです。

(引用元:東洋経済オンライン|「15秒話法」で"伝える力"は劇的に上げられる

実際に15秒に収まる長さというのは、目安として「60字程度」なのだそう。

たとえば、自分の手がいっぱいになり、同僚に助けを求めたいとき。「いま、A社の案件とB社の案件を同時に進行させていて、さらに作成しなければならない書類があって、会議の準備もしなければならなくて……。もし時間があったらでいいから少し手伝ってほしい」など、状況を長く説明してから結論をいうと冗長に感じますよね。

そこで、15秒に収まるよう「申し訳ないけれど、少し仕事を手伝ってほしい。いま、案件を2つ抱えていて手一杯なんだ」と、結論から先に述べて簡潔に伝えましょう。そのほうが、相手には格段に伝わりやすくなるのです。

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普段からちょっとした心がけをしておくだけで、よりよいコミュニケーションが取れるようになります。コミュニケーションの苦手意識を減らし、よい人間関係を構築していきましょう!

(参考)
株式会社JTBコミュニケーションデザイン|コミュニケーションは苦手、58%と過半数 主体的な発信は苦手、受け身のコミュニケーションは得意
YouTube|“パーソナルスペース”って何?”
山口創・鈴木晶夫 (1996),「 座席配置が気分に及ぼす効果に関する実験的研究」,『The Japanese Journal of Experimental Social Psychology.】Vol. 36, No. 2, pp219-229.(PDF
プレジデント ウーマン|アイコンタクトで心をつかむ「32秒」の法則
THE ROYAL SOCIETY PUBLISHING|Pupil dilation as an index of preferred mutual gaze duration
SAGE journals|Contact Is in the Eye of the Beholder: The Eye Contact Illusion
NIKKEI STYLE|顧客開拓の鉄則 「とにかく10回会え」には根拠がある
東洋経済オンライン|「15秒話法」で"伝える力"は劇的に上げられる

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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