「コンパッショネイト・レター・ライティング」を実践してみたら、自分を許せるようになった話

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「失敗をすると、長い間引きずって、自分を責め続けてしまう」
「挫折すると、なかなか立ち直れない」
「自分はダメな人間だ……と劣等感を感じる」 

このように、自分を責めてしまう傾向がある人は、自分に対する寛容さが必要かもしれません。

セルフ・コンパッション」という言葉をご存じでしょうか? これは、失敗したり挫折したりした自分に、優しさや思いやりを向けるメソッドです。今回は、ビジネスパーソンがメンタルを良好に保ち、自分の気持ちをコントロールできるようになる方法として有効なセルフ・コンパッションをご紹介しましょう。

セルフ・コンパッションとは

セルフ・コンパッションは、社会心理学者のクリスティン・ネフ博士が発展させ、欧米で大きく注目されている概念。欧米のエグゼクティブや企業にも取り入れられ、ストレスマネジメントやメンタルヘルスケアにおいて高い効果を挙げているメソッドです。

ネフ博士は、セルフ・コンパッションを、「誰かが悩んでいたり、苦しんでいたりする際に思いやりや優しさを向けるのと同じように、自分に対して思いやりを向けること」と説明しています。以下の3つのポイントが、セルフ・コンパッションを構成する要素です。

1. 自分に対する優しさ

セルフ・コンパッションとは、失敗したときや「自分は力不足だ」と感じたときに、自分を批判したり痛みを感じていないフリをしたりするのではなく、自分自身に優しくあり、理解を示すことです。

セルフ・コンパッションを実践できている人は、「人生は完璧ではないし、失敗や困難は付き物だ」と自覚しているため、壁にぶつかったときに取り乱すことがありません。

2. 人間に共通する体験であると認識すること

つらいことが起きたとき、人は孤独を感じます。「なぜ、こんなにもつらいことが私の身に起きているのだろう」と、自分だけがつらい思いをしているような錯覚に陥りがちですが、実際にはすべての人間がつらい経験をしているのです。 

人間は完璧ではなく、弱く、いつかは死にます。それを理解し、つらいことが起こっても「自分だけに起きているのではなく、人間に共通する体験である」と自覚することが、セルフ・コンパッションの要素のひとつです。 

3. マインドフルネス

セルフ・コンパッションには、マインドフルネスな状態が必要となります。つまり、負の感情を無視するでもなく、大げさに捉えるでもなく、冷静で客観的、かつ正確に捉えようとする心がけが必要ということ。 

自分の痛みを無視してしまっていては、それに対してコンパッション(慈悲や思いやり)を示すことはできません。気持ちに蓋をせず、大げさに捉えて必要以上に嘆くこともせず、つらい出来事をそのまま受け入れ、冷静に向き合う姿勢がポイントなのです。

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セルフ・コンパッションは仕事にも勉強にも欠かせない 

スタンフォード大学の心理学教授であるキャロル・ドゥエック氏によると、セルフ・コンパッションは、失敗や挫折から立ち直らせてくれるだけでなく、成長のマインドセットも支えてくれるのだそう。

成長のマインドセットを持つ人は、努力をすれば性格や能力は伸ばせると考えることができます。その反対である、固定のマインドセットを持つ人は、性格や能力は変えることができないと考えてしまうのです。

カリフォルニア大学バークレー校の心理学教授であるセレナ・チェン氏は、セルフ・コンパッションと成長マインドセットの関係性を確認する実験を行ないました。一流大学の学生らを2つのグループに分け、難しい単語テストを受けさせたのちに、それぞれ違う言葉をかけるというものです。

ひとつめのグループには、「このテストが難しかったとしても、それはあなただけではありません。このテストを受けて苦戦するのは当然のことなので、結果は残念だったかもしれませんが、自分を責めないでくださいね」と、セルフ・コンパッションを促す言葉をかけます。一方で、ふたつめのグループには、「テストの結果が悪かったとしても、気を落とさないでください。あなたはこの大学に入れたのだから優秀なはずです」と伝えました。

その後、被験者らには、事前に単語のリストをわたして予習の時間を与えたうえで、別の単語テストを受けてもらいました。すると、セルフ・コンパッションを促す言葉をかけられたグループのほうが、予習にかけた時間が長かったそう。「結果が悪かったけれど、自分を責めずに思いやりを持って接するように」と言われた学生らのほうが、成長のマインドセットを持つ結果になったようです。 

セルフ・コンパッションは、決して自分を甘やかすものではなく、自分を許し、「もっとよくなりたい、よくなれるのだ」と考え、意欲をかき立てるもの。仕事や勉強に時間を割くモチベーションを上げてくれるものなのです。

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セルフ・コンパッションの精神を育む方法

セルフ・コンパッションの精神を育む方法はさまざまありますが、その中のひとつをご紹介します。第三者の視点で自分自身に手紙を書く、「コンパッショネイト・レター・ライティング」というものです。 

自分自身に思いやりの言葉をかけることに慣れていない場合も、第三者の立場から自分にメッセージを送りましょう。困難に直面したり、自分はダメだと感じたりと、気分が落ちていてモチベーションが上がらないときに試してみてください。

以下の3つのうちのどれかを選んでいただくと、イメージが湧きやすいかもしれません。

  1. 架空の友だちを想像しましょう。その人はとても賢く、人を愛することができ、思いやりがあります。その友だちになったつもりで、自分に手紙を書くのです。
  1. あなた自身が、大切な友だちに手紙を書くと想像してください。その友だちは今、あなたとまったく同じ悩みや苦しみを抱えています。 
  1. あなたの中にある「思いやり」を持つ人格から、「苦しみ」を感じている人格への手紙を書いてください。

手紙を書き終えたら、いったんそれを放置して、しばらく経ってから読んでみましょう。本当に必要になったときに、その「思いやり」の言葉を読むことで、あなたの助けとなりますよ。

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「コンパッショネイト・レター・ライティング」を実践してみた 

筆者がコンパッショネイト・レター・ライティングを実践してみました。 

自分へ

最近、何かと人間関係でストレスを感じることが多いですね。

先日は、10年来の友人と言い合いになってしまいました。親友だと思っていたけれど、月日が経ち、正直、最近は価値観が合わなくなってきたなと感じているのではないでしょうか? 無理して修復する必要もないと思います。今は悲しいと思いますが、人生のステージで付き合う人間関係が変化していくのは普通のことなので、そこまで思い詰める必要はありません。

昨日は、上司に怒られてしまいましたね。ミスをしてしまったこと、落ち込んでいるでしょう。誰だって間違いはするので、そこからどう修正するかがポイントです。あなたは自分のミスは自分で責任をもって修復しましたし、結果的にクライアントにも迷惑をかけずにすんだので、そこまで大きな問題ではないはずですよ。最近、スケジュールが過密だったから疲れていたのでしょう。今週末は、よく休んでくださいね。

コンパッショネイトな自分より

実践してみて感じたのは、手紙を書いている段階で、すでに気持ちが安らかになっているということ。頭でグルグルと考えていたことを、客観的に第三者目線で書き出すことで「それほど自分を責める必要はないな」と感じられました。

また、つらい気持ちが続くと投げやりになりそうになることもありますが、書いた手紙をあとから読むことで、誰かに励まされているような気持ちになり「また頑張ろう、自分なら大丈夫だ」と思えるようになりました。

同じ自分なのに、手紙を書くことと読むことで、もうひとりの優しい誰かが立ち直ることを後押ししてくれているような、不思議な感覚です。今後も、落ち込んだときや、やる気がなくなってしまいそうなときは、コンパッショネイト・レター・ライティングを実践したいと思いました。

***
自分自身へのコンパッション(思いやり)を持っていますか? セルフ・コンパッションは、失敗や挫折をしたり気分が落ち込んでいたりするときに、自分を励ましてくれるもの。そして、「自分なんてどうせダメだ」と投げやりになりそうなときに、「努力すれば現状は変えられる」というパワーを湧かせてくれるものです。ぜひセルフ・コンパッションの精神を取り入れてみてくださいね。

(参考)
石村郁夫(2019),『ストレスに動じない“最強の心"が手に入る セルフ・コンパッション』, 大和出版.
Self-Compassion|Definition of Self-Compassion
ハーバード・ビジネス・レビュー(2019年5月号),『セルフ・コンパッション』,ダイアモンド社.
Mindful.org|The Transformative Effects of Mindful Self-Compassion

【ライタープロフィール】
Yuko
大学卒業後、外資系企業に就職。現在は会社を辞め、ライター・翻訳家として活動中。趣味は散歩、ヨガ、カフェ巡り。

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