「資格試験に向けて覚えないといけないことが大量にある。どうすれば効率的に覚えられるだろうか……」
「いままで試験の前には丸暗記をしてきた。試験は乗りきったけど、あのとき覚えた知識はもう忘れた……」
このような方におすすめなのが、「関連づけ」をしながら勉強すること。
今回の記事では、関連づけの重要性と、関連づけをしながら勉強するのに役立つ「コンセプトマップ」の書き方についてご説明します。筆者が実際にコンセプトマップを書いて勉強し、実感できた効果もお伝えしますので、ぜひ最後までご一読ください!
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。
- 「関連づけ」が重要である理由
- ぜひ使いこなしたい「コンセプトマップ」の2パターン
- 1.「垂直方向」のコンセプトマップをつくりながら勉強してみた
- 2.「水平方向」のコンセプトマップをつくりながら勉強してみた
- 情報どうしが関連づけられ、ラクに思い出せるようになった!
STUDY HACKER|勉強家ほど要注意? “知識があるほど間違える” という問題は「遅く考える」ことで回避せよ
東洋経済オンライン|「東大生の記憶術」は意外と簡単にマネできる
幻冬舎ゴールドオンライン|記憶は「アウトプット」する人が強い! 記憶王が教える暗記法
一般社団法人FLAネットワーク協会(2022),『改訂版【公式】食生活アドバイザー3級テキスト&問題集』,日本能率協会マネジメントセンター.
「関連づけ」が重要である理由
勉強において関連づけが役に立つ理由は、脳の記憶のメカニズムにあります。それについて、関西大学総合情報学部教授の植原亮氏は以下のように語っています。
人間の記憶は、その内容が頭のなかにバラバラに収まっているのではありません。(中略)それぞれが関連づけられながらネットワークのようなかたちで存在します。
思い出すときにもひとつのものだけをポンと思い出すのではなく、関連づけられた多くの記憶を芋づる式に思い出す仕組みになっています。それが、いわゆる連想です。
(引用元:STUDY HACKER|勉強家ほど要注意? “知識があるほど間違える” という問題は「遅く考える」ことで回避せよ ※太字は筆者が施した)
もともと脳は、関連づけをしながら覚えているのです。ならば勉強する段階から、知識と知識の結びつけを意識しながら勉強すれば、より効率的に覚えることが可能になるはず。試験などで思い出すときにも、つながり合った情報をより多く引き出せるでしょう。
実際、東大生は関連づけを意識した覚え方をしているようです。
教育事業などを手がける株式会社カルペ・ディエム代表で、東大生の勉強法に関する著書をもつ西岡壱誠氏は、ペリーが日本に来航した年を覚えるケースを例にこう説明しています。
東大生はただ丸暗記しようとはしません。
どうして1853年だったのか? 1853年の前後には、どんな出来事があったのか? そういうことを考えて、少しでも「1853年」が覚えやすくなるように努力していくのです。
(引用元:東洋経済オンライン|「東大生の記憶術」は意外と簡単にマネできる)
個々の出来事が起きた年を丸暗記するよりも、前後に起きたほかの出来事と関連づけるほうが、覚えやすく思い出しやすいというわけです。たとえば、明治維新の年「1868年」を覚える際には、1867年の大政奉還や、1869年の版籍奉還などの前後の出来事と絡めることで、全体の流れが見えて覚えやすくなります。
暗記物の勉強というと、用語や数字などを単体で覚えようとしてしまいがち。ですが、ほかの情報とつなげればより効果的に覚えられるのです。
ぜひ使いこなしたい「コンセプトマップ」の2パターン
関連づけといっても、頭のなかでごちゃごちゃしてしまいそう……。そう思ったあなたに、関連づけをしやすくなるツールとしてご紹介したいのが「コンセプトマップ」。日本記憶力選手権大会で6回優勝した経験をもつ池田義博氏がすすめています。
池田氏によると、コンセプトマップには以下の2種類があるそう。
- 「垂直方向」のコンセプトマップ
中心となる概念から下位になる概念を書き足していく - 「水平方向」のコンセプトマップ
中心となる概念から連想する概念を周囲に自由に書いていく
(「幻冬舎ゴールドオンライン|記憶は「アウトプット」する人が強い! 記憶王が教える暗記法」よりまとめた)
こうしたコンセプトマップを使って情報を整理することのメリットを、池田氏はこう述べています。
情報を脳の中で自動的に体系化された記憶に変えることができます。それは、単に強い記憶になっただけではなく、応用が効く、使える記憶に変わったことにもなるのです。
(引用元:同上 ※太字は筆者が施した)
それに、頭のなかだけでなく紙の上で関連づけをすれば、視覚的にわかりやすいので、より楽に覚えられそうです。
1.「垂直方向」のコンセプトマップをつくりながら勉強してみた
筆者も実際に、2種類のコンセプトマップをつくりながら勉強してみました。勉強内容は食生活に関してです。(以下、コンセプトマップの書き方は前出の「幻冬舎ゴールドオンライン」記事を参照し、カギカッコ内は同記事より引用)
まずは、「垂直方向」のコンセプトマップです。
【Step1】「中心となる概念」を書きます。筆者は、“食物繊維”と書きました。
【Step2】中心に書いた “食物繊維” の「下位になる概念を書き足して」いきます。下位だけでなく「上位になる概念を上の方向に書き足していっても」かまわないそう。上位・下位の概念が書き終われば、垂直方向のコンセプトマップの完成です。
池田氏は垂直方向のコンセプトマップの特徴を「上に進めば抽象化、下に降りていけば具象化」と述べています。実際に筆者が書いたものもそうなりました。上から下に行くにつれ具体的な情報になり、一番下には野菜や果物の名前を書いています。
2.「水平方向」のコンセプトマップをつくりながら勉強してみた
続いて、「水平方向」のコンセプトマップです。
【Step1】「中心となる概念」を書きます。先ほどと同様、“食物繊維” と書きました。
【Step2】中心に書いた “食物繊維” から「連想する概念をランダムに周りに記入」していきます。「書く場所や順番に規則はありません」とのこと。
【Step3】【Step2】で「書き足した概念からさらに連想や想像が膨らめば、そこから線でつなげて新しい概念を追加」していきます。
【Step4】追加したすべての概念のなかで「新たな関連性が見つかれば、その概念同士を線で結」びます。
【Step5】「共通項」がある概念を枠で囲み、「その集合を表す見出し」をつけたら、水平方向のコンセプトマップの完成です。
中心に書いた ”食物繊維” という概念から始まり、さまざまな概念を連想して記入することができました。
情報どうしが関連づけられ、ラクに思い出せるようになった!
2種類のコンセプトマップを書いて勉強した結果、内容を思い出すときに “マップごと” 思い出せるようになりました。そのため、自然と情報を芋づる式に頭のなかから引き出せるようになったのです。
たとえば、以前は「もち麦は食物繊維を多く含む」という知識と「血糖値が上がると糖尿病のリスクがある」という知識を別々に覚えていました。ですがコンセプトマップを書いたことで「食物繊維といえばもち麦、もち麦といえば血糖値、血糖値といえば糖尿病……」といった具合に知識どうしがつながり、一度に引き出せる情報量が増えたと感じます。これは、垂直方向と水平方向のどちらのコンセプトマップでも共通して実感したことです。
そして垂直方向のコンセプトマップに関しては、テキストを読んだあとで書けば、内容を整理でき、思い出すときにも役立ちそうだと思いました。実際に書いてみると、テキストの文章を図にするような感覚があり、論理的なつながりを整理するのに向いていると感じたのです。
一方、水平方向のコンセプトマップは、テキストどおりではないオリジナリティあるマップが完成するのがメリット。正直、書いている途中は「本当に頭のなかが整理されるのだろうか……」と不安になりましたが、書き終わってみると、和食の良さを再認識するなど、食生活に関して自分なりの気づきを得ることができていました。気づきを得ながら勉強できたことで、単に情報を丸暗記していたときよりも記憶しやすくなったと感じます。
頭のなかを論理的に整理できる垂直方向のコンセプトマップと、自分なりの気づきを得ることができる水平方向のコンセプトマップ。どちらも書くことで、より確かな記憶になるはずです。みなさんも実践する際は、ぜひ2種類とも書いてみてくださいね。
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2種類のコンセプトマップを書いたことで、「関連づけ」の効果を実感することができました。みなさんの勉強にもコンセプトマップが役立てば幸いです。