程度の差こそあれ、他者の言葉にイラッとした経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。もちろん筆者にもたくさんあります。
しかし、それらの言葉は、のちのち自分の役に立っていることも多いようです。それなら2023年の締めくくりに、むしろ “ありがたい言葉” として振り返ってみましょう。
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STUDY HACKER 編集部
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くすりの博物館(エーザイ株式会社)|もうひとつの学芸員室-良薬は口に苦し
一般社団法人 日本経済団体連合会|第21回「経団連 Power UP カレッジ」
TOKYO FM|AIG損保 presents 「賢者の名言」
コトバンク|忠言は耳に逆らう
誰かの “ムカつく言葉” が役に立ったエピソード
まずは、イラッときた他者の言葉が、のちのち役に立ったいくつかのエピソードを紹介します。
1. 愛ある先輩の言葉
ずいぶん前、パソコンが一般的でなかった時代、会社員だった筆者は独立を目指してポートフォリオ(手描きのイラスト作品集)をつくりました。それを仲のいい会社の先輩に見せたところ、先輩は躊躇しながらこう言ったのです。
「あのね、〇〇ちゃん、もう少し……、ちゃんとしたキレイなファイルに入れたら?」
まだ若い筆者は、作品の出来そっちのけでケチをつけられたと感じ、ムッとしてしまいました。でも結果的にその言葉は、“ありがたい言葉” として記憶に残ることとなったのです。
なぜならば先輩の指摘が、のちのち “中身だけでなく、外身にも気遣う心構え” を育ててくれたから。それは、仕事の場にふさわしい態度をとったり、身なりを整えたりする際にはもちろんのこと、クライアントや取引先に資料やサンプルを見せる際や、名刺を出したり、取引先にお土産を手渡したりする際など、多くの場面に生かされる心構えです。
たとえば、薄汚れたケースから資料を出して説明を始めるより、印象のいい清潔なケースから資料を取り出したほうが、商品およびサービスに対する期待値が2割くらいは増すだろう、といった感じでしょうか。
なんにせよ、筆者が腹を立てると予想しながら、「これは伝えねば」と思いきって客観的な意見を言ってくれた先輩には、もはや感謝しかありません。
2. 嫌いな人の言葉
筆者がだいぶ前に仕事で出会ったAさんは、昔の職場でものすごく嫌いな人物がいたと教えてくれました。その人物は、Aさんが仕事で大きな悩みを抱えていたとき、こう言ったそうです。
「悩むな、考えろ」
いわゆる、よく知られた名言ですが、苦しんでいたAさんは、嫌いな相手に正論を叩きつけられムカ――ッときたのだとか。しかし、それからというもの、壁にぶつかるたびにその言葉を思い出すようになり、思考停止解除⇒思考開始のトリガーとなったそうです。
同氏いわく、あそこまで腹を立てなければ、こうはならなかったとのこと。
3. 面倒くさい人の言葉
また、筆者はある薬剤師さんと初めて接した際に、しばらくムカムカが収まらなかったことがあります。その理由は、終始このような言い回しだったから。
- 「あなたは〇〇をどう思いますか?」
- (筆者が答える)
- 「普通はそう思いますよね、でも△△なんです。では、なぜ△△だと思いますか?」
- (筆者が答える)
- 「それが違うんです。◇◇なので」
- (筆者がとりあえず驚いて見せる)
- 「はい、そうなんです。つまり、〇〇は◇◇なので△△なんですよ」
なんだかバカにされているようで、なおかつ「最初に結論を述べてくれ」とも思い、そのときはひどくイライラしましたが――いまとなっては、その薬剤師さんを思い出すたびに、心から感謝しています。
なぜならば、イライラ・ムカムカのおかげで指摘された内容を意識するようになり、からだの改善に役立つ習慣を取り入れることができたから。もしかしたら、自分にとって耳が痛い指摘もあったからこそ、余計にイライラしたのかもしれませんね。
故事・ことわざ・名言から学ぶ
なお、筆者はゴーヤやケールなど、苦味があって栄養豊富な野菜を家族に食べてほしいときに、「良薬は口に苦し」という言葉を引用しますが、こういった故事・ことわざにも、同様のことが示されています。
たとえば上記の言葉は中国の古い書物(『孔子家語※』,『説苑』)に由来しており、それらに書かれた
「良薬苦於口、而利於病、忠言逆於耳、而利於行」
といった孔子の言葉は、「よく効く薬は苦いが、よく病気を治す。真心から諌めた言葉は、快く聞き入れ難いものだが、有益である」といった内容を意味するそうです。
(カギカッコ内含む引用元:くすりの博物館(エーザイ株式会社)|もうひとつの学芸員室-良薬は口に苦し ※太字は筆者が施した)
また、古代中国で上記の言葉とよく一緒に使用されたという、「忠言は耳に逆らう」といった言葉もあります。こちらも『孔子家語※』に由来しているとのことで、同書には孔子の言葉として、このような内容が書かれているそうです。
「忠言は耳に逆らえども行いに利あり(忠告は聞き入れにくいものだが、行動を正してくれるという利点がある)」
(参考および引用元:コトバンク|忠言は耳に逆らう ※太字は筆者が施した)
さらに、19世紀に活躍したアメリカの詩人、ウォルト・ホイットマン氏も、以下内容の名言を残しています。
「君が教訓を学んだ相手は君を賞賛し、親切を施し、味方になってくれた人々だけだったのか。君を排斥し、論争した人々からも大切な教訓を学ばなかったか?」
(参考および引用元:TOKYO FM|AIG損保 presents 「賢者の名言」 ※太字は筆者が施した)
そして、住友生命保険代表取締役社長、同社代表取締役会長、生命保険協会会長を歴任した佐藤義雄氏の座右の銘は、「逆耳払心」という言葉なのだとか。これは中国古典にある言葉で、
耳に逆らう、すなわち耳が痛い話もしっかり聞き、ともすれば心から払いのけてしまいたくなるような状態こそが、己を磨く「砥石」のごとき働きをしてくれる
といった内容を意味するそうです。そうして佐藤氏は、人々の声をしっかり聞くよう心がけているとのこと。
(参考および引用元:一般社団法人 日本経済団体連合会|第21回「経団連 Power UP カレッジ」 ※太字は筆者が施した)
ここまでくると、なんだかイラッとさせられる言葉が、非常にありがたいものに思えてきました……。
※『孔子家語』は「孔子の言動や門人との問答・論議を記録した」もの。カギカッコ内引用元:前出の「くすりの博物館(エーザイ株式会社)」コラム
2023年の “ありがたい言葉” を振り返ってみた
では、人々から頂いた非常に “ありがたいムカつく言葉” をひたすらノートに書き、そこから何を学べたか、どう役立ったのか書き出しながら、2023年を振り返ってみることにします。
――そうして書き出したものがこちら。
まだまだごく一部ですが、実際に書いてみると、ほとんどの言葉から何かしら学びや気づきがあると知って驚きました。
でも、もしかしたら、こうして書き出すことで意味・意義が与えられ、建設的な見方ができるようになった部分もあるのかもしれません。
また、書き出したことで客観性が生まれたおかげか、腹立たしさを忘れ、自然と自分の弱点や強みと向き合うこともできました。
たとえば、今年筆者はこんな経験をしました。高圧的な態度で持論をまくしたててきた相手に対し、あまりにイラッとしたので反論したら相手の反感を買ったけれど、似たケースにおいて議論を辞退したときは、相手を軟化させることができたのです。そのことについて書き出していたら、筆者には “黙ることで相手をトーンダウンさせられる” という強みがあると気づけました。
今年1年を振り返り、あのとき○○さんに言われた言葉にまだムカムカしている……と感じたら、その言葉から何が学べるか、何を発見できるか、ぜひ考えてみてはいかがでしょうか。
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あなたはこの1年、誰かの注意・指摘・アドバイスに腹を立てましたか? その言葉を書き出してみると、意外な気づきがあるかもしれません……! それはきっと、新しい年をすっきりとした気持ちでスタートし、成功を目指して仕事に励んでいくための土台となってくれるはずです。