仕事では、人間関係の問題がつきもの。良好な関係を築くため、相手にいい印象を与えたい……そう望む人がすべきなのは、「人から悪く思われがちなクセ」を直すこと。
今回の記事では、なぜか「一緒に働きたくない」と思われてしまう人の、残念すぎる4つの共通点をお伝えします。当てはまるものがある人へ、改善法もご提案しましょう。
1. 否定グセがある
「いや、それは違うよ」「でも、それはうまくいかないと思うよ」――相手の発言や提案に何かしら意見を述べようと、こうした否定から入るクセはありませんか?
株式会社Rising Star代表取締役でビジネスコンサルタントの星渉氏は、人は “否定されること” に精神的なおびえがあると述べます。否定ばかりしてくる相手に傷つけられると、無意識にその人を避けるようになるというのです。
加えて、私たちは否定グセがある人物に対して悪い印象を抱きがち。これには記憶の仕組みが関係しています。星氏によれば、脳はすべてを記憶するわけではなく、「覚えるべきもの」と「忘れてもいいもの」を選別し、必要なものだけを記憶に残しているとのこと。
その選別基準のひとつとして挙げられるのが、「強い感情」がともなうかどうかです。忘れてしまいたい嫌な出来事でも、そこに強い感情が含まれれば、脳は「重要な情報」だと判断し、記憶に残してしまうのです。
このメカニズムから、人は否定されると強い負の感情をもつため、「この人は “自分を否定する人” だ」という印象が強く記憶に残ってしまうと星氏は述べます。もし周囲からこんな印象を抱かれてしまえば、「一緒に働きたくない」と思われて当然でしょう。
そんな最悪な否定グセをやめるには、単純ですが「絶対に否定しない」ことに尽きます。星氏によれば、人と関わるうえでは「相手の安心感」を満たすことが大切。その安心感の土台となるのが、絶対に否定をしないことです。
とはいえ、相手の話にすべて「YES」と言うのではありません。星氏いわく、
「絶対に否定をしない」というのは「相手の意見をすべて受け入れる」という意味ではありません。自分の意見は持ちながらも、「相手はこういう意見や考えを持っているのだ」と受け止めてあげるだけでいいのです。
(引用元:ウォーカープラス|あなたは“嫌いな上司”になっていませんか?「絶対に否定をしない人」に情報と人が集まるワケ)
とのこと。つまり、「全部受け入れる」のではなくて「まずは受け止める」ことが大切なのです。
星氏によると、相手の話を最後まで聞いて受け止め、安心感を与えたうえで、アドバイスや意見を述べるとよいのだそう。否定の言葉はグッと抑え、「その考えもいいね」と受け止めたあとで、自分の意見を述べるように心がけましょう。
2. 相手にも完璧さを求める
「仕事は完璧にこなしたい」と意識している人は少なくないでしょう。しかし、自分の厳格な完璧主義を相手に要求するのはNG。たとえば、「資料は完璧に仕上げなくてはならない」「納期前日の午前中までには終わらせるべき」という自分の主義を周囲にも当てはめ、これに沿わない人にイライラしてきつく注意する……こんなことに心当たりはないでしょうか。
臨床心理学者のアリス・ボーイズ氏は、自分と同じ高い基準を周囲に求める人は、相手との関係に傷をつけると指摘しています。“厳しさ” は仕事の質を高めるために大切ですが、そのせいで視野が狭くなり、不寛容になると、他人を遠ざけてしまいます。「あの人は仕事に対して厳しすぎるから、一緒のチームだとつらいんだよな」と思われかねません。
周囲に対し寛容になれない――そんな人に意識して使ってほしいのが、「まあいいか」という言葉。「まあいいか(oh well)」と許容範囲を広げる考え方を “オーウェル思考” といいます。人材育成コンサルタントで多くのビジネス書を手がける吉田幸弘氏によれば、日頃から「まあいいか」と考えるようにすると、イライラが減り、穏やかになれるそうです。
もし、あなたが「資料は納期前日の午前までに終わらせるべき」と考えているのなら、「間に合えば、当日でもまあいいか」と変えてみましょう。自分にも他人にも完璧さを求めてしまうことが減れば、周囲との関係はよくなっていくはずです。
3. 悪口を話したがる
愚痴や悪口。時にそれは気分を晴らしてくれ、同僚と共有できる話題にもなります。しかし、いつも他人の悪口を話したがる人は要注意。その言動は、回り回って自分に返ってきてしまいます。
「返報性の法則」をご存じでしょうか。誰かから親切にされたとき、その人へのお返しとして「親切をしてあげたい」という気持ちが働く心理です。精神科医の樺沢紫苑氏によると、この法則に当てはまるのは “好意” だけでなく、残念なことにネガティブな感情を返したくなる「悪意の返報性」も成り立つのだそう。
樺沢氏いわく、「本人がいないから大丈夫」と油断して悪口を話してばかりいると、周囲から「よく悪口を言う人」というネガティブな印象をもたれてしまうとのこと。誰しも自分の悪口を言われたくはないので、自分に矛先が向かうことを恐れ、悪口ばかり言う人のことを信頼しなくなるのだとか。
ですから、不平不満がたまったときは、悪口ではなく別のやり方で発散しましょう。問題解決の専門家でメンタルコーチの大平朝子氏は、文句や不満を「紙に書き出す」ことをすすめています。不満を紙に書き出して「見える化」すると、頭のなかで堂々めぐりしていたネガティブな思考をスッキリと整理できるそう。
あの人の悪口を言いたい……。そんな思いに駆られたときは、一度紙に自分の不満を棚卸ししてみましょう。嫌な相手に対する自分の言葉も、やわらかくなりますよ。
4. 過剰にほめる
相手をほめてあげれば、いい印象をもってもらえるに違いない。そういう理由で、大げさにほめてしまうことはありませんか? じつは、説得力に欠けるお世辞は裏目に出るということが研究で明らかとなっています。
メンタリストDaiGo氏によると、ユトレヒト大学が2017年、100件以上の文献データを調べ、悪い印象を抱かれる人のコミュニケーションの特徴を分析したそうです。そこで判明したのは、お世辞が下手な人ほど相手に悪い印象を与えるということ。
DaiGo氏は、相手に悪い印象を与えるNGなお世辞の代表例として「バックハンドコンプリメント」を挙げています。これは、“ほめ言葉を装った侮辱” のこと。かえって相手を見下げているようにとられかねない、説得力にいまひとつ欠けるお世辞です。
たとえば、ごく簡単な英文メールを作成したとき、「こんなこともできるんですか! 海外でも活躍できますね」などと派手に驚かれ、大げさにほめられると、一瞬「この人は嫌味が言いたいのかな?」と勘ぐってしまいますよね。
言った本人には自覚がなくとも、状況にそぐわない過剰なほめ言葉は、相手に皮肉や嫌味を感じさせてしまうもの。ほめるときは、事実に即して飾りすぎず伝えるのが好ましいでしょう。
またDaiGo氏によれば、人に好まれて成功した経営者や幹部たちには、ほめ言葉を言う前に「前置き」を入れる特徴があることが、ミシガン大学の研究で判明したのだそう。「恥ずかしがらせてしまうかもしれませんが……」「こんなことを言っては失礼かもしれませんが……」などの謙虚な言葉を先に伝え、お世辞に見せかけないようにしているのです。ひとつの工夫として、使ってみてはいかがでしょうか。
***
「一緒に働きたくない」と思われてしまう人の、残念すぎる4つの特徴を紹介しました。あなたに当てはまるものはあったでしょうか。普段のなにげない行動を意識して直してみると、あなたの印象も変わってくるはず。いい気持ちで働くための参考にしてみてください。
(参考)
ウォーカープラス|あなたは“嫌いな上司”になっていませんか?「絶対に否定をしない人」に情報と人が集まるワケ
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|完璧主義による自滅を防ぐ方法
マネー現代|仕事が早く終わる人の特徴、「オーウェル思考」とは何か?
東洋経済オンライン|よく悪口を言う人ほど「不幸になる」科学的根拠
NIKKEI STYLE|その愚痴や文句は不幸のもと 今すぐやめられる3カ条
Wiley Online Library|Impression mismanagement: People as inept self‐presenters
Mentalist DaiGo Official Blog|好かれるお世辞、嫌われるお世辞
Urban Dictionary|backhanded compliment
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。