もしもストレスでイライラしたり落ち込んだりしているならば、メンタリストのDaiGo氏も推奨する「より詳細なエクスプレッシブ・ライティング」がおすすめですよ。感情を吐き出すだけではなく、もう少し踏み込んだものです。筆者が実践しながら説明しましょう。
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自分のストレスサインを知る
ストレスとは「外部からの刺激で生じる緊張状態」のこと。たとえば人間関係や仕事のプレッシャーなどの刺激を受け緊張状態が続くと、私たちにはさまざまなサインが現れます。
厚生労働省の情報サイトによれば、ストレスサインには「食欲がない」「眠れない」「気分が落ち込む」「イライラする」「疲れやすい」といったものや、個人特有の「歯痛」「腰痛」「耳鳴り」などがあるそうです。
大切なのは自分に出やすいストレスサインを知って、それらが現れたら早めに休息をとり、気分転換を行なうこと。加えてストレスの軽減には、自分の感情を素直に書き出していくエクスプレッシブ・ライティングが役立ちます。
エクスプレッシブ・ライティングの手続き
もともとエクスプレッシブ・ライティング(expressive writing)は、心的外傷後ストレス障害への対処を目的に、アメリカの社会心理学者であるジェームズ・ペネベーガー氏らが1980年代に開発したものです。筆記開示法とも呼ばれています。
2020年の論文「筆記開示法の利用意欲を促進する要因の検討(感情心理学研究)」には、エクスプレッシブ・ライティングの具体的な手続きとして3~5日間連続で1日20~30分程度、自分のストレス経験に対する感情や思ったことを書き出すとあります。
また、教育学博士のJohn F Evans氏は、エクスプレッシブ・ライティングの一般的なルールとして次の内容を伝えています。
- 句読点、スペル、文法に注意を払う必要はない(正しい文章じゃなくてよい)
- 書くことがなくなったら、すでに書いたことを繰り返す
- 自分のために書く(他者に開示する必要はない)
- 書けないと感じたら書かない(自分を追い詰めない)
特に最初のうちは、エクスプレッシブ・ライティングを書いたあと少し悲しくなったり落ち込んだりするけれど、その感覚は1~2時間で消えるそうです。
エクスプレッシブ・ライティングの効果
ペネベーガー氏らが行なった実験では、エクスプレッシブ・ライティングを行なった人々の病院を訪問する回数が大幅に減少したのだとか。
リンパ球(白血球の一種)反応の優位な増加があったことから、免疫能力を高めるといった推測にもつながっています。
うつ病と診断された40人を対象とした予備研究(主研究に向けた試験的な小規模研究)では、日常的なエクスプレッシブ・ライティングがうつ病症状の軽減に効果的である可能性が示唆されました。
「より詳細なエクスプレッシブ・ライティング」とは?
そうしたなか、2019年3月12日に「Journal of Pacific Rim Psychology」で公開された北京大学・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの共同研究では、エクスプレッシブ・ライティングを行なう際に認知的単語(=洞察に満ちた因果的単語=経験的知識に基づいた言葉)を使用することで、起こった出来事への意味づけと、つらい出来事を経てポジティブな心理に変化していくこと(※)を促進する可能性が示唆されました(※PTG:心的外傷後成長)。
感じたまま書き出すにしても、たとえば「こんなに腹立たしいのは、以前〇〇に〇〇と言われたせいかも」「イライラしているけど〇〇が嫌いなわけじゃない」などと踏み込んでいくイメージです。
DaiGo氏もアメリカのジョージ・メイソン大学が行なった研究を挙げ、エクスプレッシブ・ライティングは「感情をなるべく詳細に表現したほうがいい」と述べています。
たとえば怒りについて書くならば、フツフツと湧き上がる怒りか、たまりにたまった爆発しそうな怒りか、思い出して再燃した怒りかなどを、詳しく書くのだそう。
では、ストレスだらけの筆者も、より詳細なエクスプレッシブ・ライティングに挑戦してみましょう。
詳細なエクスプレッシブ・ライティングをやってみた
DaiGo氏によれば、エクスプレッシブ・ライティングはできるだけ1日20分は行なったほうがいいとのこと。
そこで筆者も20分かけてネガティブな感情を素直に吐き出してみたところ、プチ犯罪現場らしきものが紙面にできあがってしまいました。他者に開示するものではないので内容はお見せしませんが、そもそもお見せできる代物じゃありません。
意外と20分が長く感じられ、退屈に感じてしまうこともありましたが、先に経験に基づく洞察に満ちた言葉を使い、詳細に書くことでより効果が高まると認識していたので、「もしかして〇〇だろうか?」「以前と同じ原因ではないか」などと推測する機会がスムーズに生まれました。
驚くべき現象は、いつの間にか「まったくネガティブではない気持ちの吐き出し」も行なっていたことです。おおむね20分間のエクスプレッシブ・ライティングで埋め尽くされたセミB5サイズのノート見開きの、約3割ほどは客観的な原因究明とポジティブな言葉でした。
しかも考察を深めるうち自分を高める意欲が湧き、最後には「さてどこから始めよう?」という前向きな言葉で締めくくる結果となったのです。
こうなった要因は、やはり「時間」と「より詳細な書き方」だと考えられます。
20分が長く感じられネガティブ情報への集中力が途切れたとき、頭に浮かんでくるのは「なぜイライラするのか?」「もしかしてこうではないか?」といった推測や分析でした。一概には言えませんが、少し退屈になるくらい自分にとって長めの時間で行なうと、感情の渦から離れやすくなるのかもしれません。
また、浮かんできた推測や分析を詳しく書き出すと客観性が生まれ、客観性が生まれて物事の輪郭が見えてくると、建設的な言葉へとつながりました。「ネガティブな感情」と「ポジティブな感情」はつながっており、それを媒介するのが経験的知識に基づいた思考(言葉)なのではないでしょうか。
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結果として「より詳細なエクスプレッシブ・ライティング」は頭の切り替えにも最適でした。ぜひお試しください!
(参考)
Cambridge Core|Journal of Pacific Rim Psychology|Effects of expressive writing and use of cognitive words on meaning making and post-traumatic Growth
大石彩乃(2020),「筆記開示法の利用意欲を促進する要因の検討」,日本感情心理学会,感情心理学研究,Vol.28,No.1,pp.1-10.
厚生労働省|みんなのメンタルヘルス|1.ストレスって何?
東洋経済オンライン |「感情を紙に書く」習慣でストレスは減らせる
Psychology Today|Expressive Writing
Wikipedia|James W. Pennebaker
Wikipedia|Writing therapy
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