「仕事が速いだけの人」と「仕事が速くクオリティも高い人」を分ける、決定的な4つの差

仕事が速くクオリティも高い人のイメージ

どんなに仕事が速くても、クオリティの低さはマイナス要素になります。少しでも思い当たるならば、「仕事が速いだけの人」と「仕事が速くクオリティも高い人」の差を知っておきましょう。識者のアドバイスとともに4つ紹介します。

1. スピード主義より「正確さ」主義

『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)の著者である石川和男氏によると、簿記試験の合格率は電卓を叩く速さと比例しないそうです。

その理由は高スピードで電卓を叩く人が、確認のためにもう一度、あるいは何度も電卓を叩き直す傾向にあるから。そこでまた数字が合わないと焦りが生じ、ますますミスしやすい状況に陥ってしまうのだとか。

逆に電卓を叩くのが遅い人は、一度で正確な答えを出す傾向にあるそうです。だからこそ結果的に、電卓を叩くのが速い人よりも早く終わることがあるのだそう。

中国の散文選集『文章軌範』には、「仕事の出来がよくて完成が遅いより、出来が悪くとも完成は早いほうがいい(巧遅は拙速に如かず)」と説かれていますが、何度も何度もやり直し、結果的に終わるのが遅くなっていたら元も子もありません。石川氏は、「できるだけ早く行動をする」ことをモットーにしていたチームほど、残業が多かったという例も挙げています。

つまり「仕事が速くクオリティも高い人」は、「仕事が速いだけの人」のように瞬間的な速さだけにとらわれず、トータルで早く終わらせるための “正確さ” をより重視しているのです。

速さより正確さを大事に仕事をする会計士の男性

2.「メリットとデメリット」を書き出す

前項のように「行動は早いけれど “やり直し” が多々生じる状況」はよくありませんが、だからといって行動スピードが遅すぎるのも問題です。そのため前出の石川氏は、先に正しい判断を行ない、あとは行動のスピードを速めることが重要だと伝えています。

では、ではどうやって正しく判断するかといえば、まずは書き出してみるといいのだそう。頭のなかだけで考えていると問題を整理できないまま混乱し、判断が鈍ってしまうからです。 やり方としては、何かの決断で生じる(と考えられる)メリットとデメリットを、できるだけ多く書き出すのだとか。

たとえば仕事で文章をつくるタスクがあったとして、それを情感豊かにするか、論理的にするか、正しく判断したいとしましょう。その場合はこんなふうに書き出します(石川氏の説明を参考に、筆者が独自に書いたもの)。

  • 情感豊かにした場合のメリットは何か?
    ⇒心に訴えかけられる。想いが伝わる。本気度が伝わる。

  • 情感豊かにした場合のデメリットは何か?
    ⇒主観的になる。曖昧になる。現実味がない。

  • 論理的にした場合のメリットは何か?
    ⇒納得してもらいやすい。説得力がある。客観性がある。

  • 論理的にした場合のデメリットは何か?
    ⇒マニュアル的に聞こえる。他人事に聞こえる。心に訴えかけない。

こうして、あらゆる可能性を明確にすることで、たとえば上記の例なら「基本はロジカルな文章で、最初と最後だけは情感あふれる表現にしてみよう」などといった判断ができるわけです。

「仕事が速くクオリティも高い人」が、こうしたプロセスを経て良好に仕事を進める一方で、「仕事が速いだけの人」は頭のなかの不明瞭な情報だけで決断・実行するので、のちのち抜けもれや判断ミスが発覚しやすいのです。

正しい判断をせず見切り発車して大失敗したビジネスパーソン

3. 忙しいほど優先順位より「劣後順位」

経営・人材育成コンサルティング事業を行なう、株式会社AND CREATE代表取締役の清水久三子氏は、著書『1時間の仕事を15分で終わらせる』(かんき出版)のなかで、仕事をだいぶ進めてから “やらなくていいこと” に気づいても、一度失ってしまった時間は取り戻せないと注意を促します。これは「仕事が速いだけの人」が、いかにも陥りそうなミスではないでしょうか。

そうしたことから清水氏は、忙しいときほど「優先順位」よりも、「劣後順位」から決めたほうがスピードアップにつながると説きます。劣後順位とは、“何をやらないか決める” こと。その決め方は次の3通りがあるそうです。

  1. そもそもやる必要がないもの
    ⇒「これは何のためにやるのか」と自問し、やる必要がないものを見つける。

  2. 状況の変化で必要がなくなったもの
    ⇒要望・方針・工程の変化で、不要になったものはないか積極的に確認する。

  3. 過剰品質レベル
    ⇒要求以上の品質にこだわり、ムダな工程や作業が生じていないか確認する。

つまり、「仕事が速いだけの人」が見切り発車して、あとから “やらなくていいこと” に気づいて愕然としているその横で、「仕事が速くクオリティも高い人」は、忙しいときほどいったん立ち止まり、“やらなくていいこと” をあぶり出しているのです。

仕事が立て込んできたのでタスクに劣後順位をつけているビジネスパーソン

4. スピードより「タイミング」

株式会社ワンキャリア取締役の北野唯我氏の場合は、“どれだけ時間がかかるのか?” といった視点の「タイム」より、“いつやるのか?” といった視点の「タイミング」が重要だと強調します。それどころかビジネスの現場では、

「タイミングを制する者がスピードを制す」

(引用元:PRESIDENT Online|頭のよさは関係ない…周囲から「仕事が速い」と驚かれる人がこっそり意識している3つの法則

のだとか。

その理由は――たとえば勤務時間を増やして大変な仕事を乗りきるなど、タイムの問題が「自分だけの問題」であるのに対し、何かを提出するなどタイミングの問題は「他者が関わる問題」であるから。他者との関わりで成り立つビジネスの現場で、後者をより大切するのは当然のことです。

そのため北野氏はタイミングを制するテクニックとして、以下のとおり「すぐやる・すぐ出す・すぐ答える」ことを意識し、実践するようアドバイスしています。同氏はこれをタイミングの法則と呼ぶのだとか。

  • すぐやる:頼まれた当日に0.01%だけでも取りかかる。
  • すぐ出す:締め切りより早く提出する。
  • すぐ答える:まだハッキリしないことを質問されたとしても、必ずその場で暫定的に回答したうえで、たとえば1週間以内など期限を決めて回答する。

上記をふまえ、たとえば「確認が必要な内容について上司から質問を受けた」としましょう。その場合、各々の差はこう出るはずです。

  • 「仕事が遅いだけの人」――ずっと回答せず、催促されて初めて回答する
    ⇒正確な答えを得るために時間を要していたとしても信用度が下がる。

  • 「仕事が速いだけの人」――確認が不十分なまま回答し、あとで間違いを指摘される
    ⇒信頼を失う

  • 「仕事が速くクオリティも高い人」――「恐らく〇〇だと思われますが、まだ確定ではないので、月曜日◇◇さんに確認したのち、必ずご報告します」とすぐ答え、確実に実行する
    ⇒回答が後日になっても「仕事が丁寧で速い」と評判になる!

つまり、大急ぎでやろうとしなくても、抱え込んでじっくりゆっくり完璧にしようとしなくても、相手を不安にさせたりイライラさせたりしない早いタイミングでレスポンスを行ない、約束通りに実行することが何より大事なのです。

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「仕事が速いだけの人」と「仕事が速くクオリティも高い人」の決定的な4つの差を紹介しました。よろしければ参考にしてみてくださいね。

(参考)
PRESIDENT Online|頭のよさは関係ない…周囲から「仕事が速い」と驚かれる人がこっそり意識している3つの法則
リクナビNEXTジャーナル|残業だらけのチームは「スピード」ばかり重視する
清水久三子著(2016),『1時間の仕事を15分で終わらせる』,かんき出版.
コトバンク|巧遅は拙速に如かずとは

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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