フットインザドアテクニックとは? 交渉の基本テクを実践してみよう!

フットインザドアテクニックの実践1

フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは、心理学における「一貫性の法則」を利用した交渉術です。本題に入る前にワンステップ置くことで、相手に要求を承諾してもらえる確率を高められます。

営業の仕事でも日常生活でも、こちらのお願いを聞いてもらうのは簡単ではありません。フットインザドアテクニックの基本と活用のコツを解説するので、役立ててみてください。

心理学におけるフットインザドアテクニックとは

フットインザドアテクニックとは、心理学に基づく説得法です。説得や要請のとき、いきなり本題に入らず、簡単な要求から始めて徐々に要求の内容を膨らませていきます

フットインザドアテクニックという名称の由来は、英語の「put foot in the door」。「ドアに足をかけたらこちらのもの」という意味です。日本語では「段階的要請法」とも呼ばれます。

フットインザドアテクニックは、心理学における「一貫性の原理(一貫性の法則)」を利用したもの。人は無意識に、自らの態度や行動に一貫性をもたせようとします。そのため、最初に小さなお願いを聞いてもらえたら、次の大きいお願いも聞いてもらいやすくなるのです。

1966年、スタンフォード大学の社会心理学者ジョナサン・フリードマン氏とスコット・フレイザー氏は、フットインザドアテクニックの実験を行ないました。「安全運転を呼びかける看板を家の庭先に立てさせてほしい」と依頼したところ、いきなり本題に入ったときの承諾率は16.7%だったものの、別の小さいお願いを承諾してもらったあとでは47.4%にも上ったそうです。

このように、フットインザドアテクニックは交渉を有利に導きます。次に、実際の場面でフットインザドアテクニックを使う例を見てみましょう。

フットインザドアテクニックの実践2

フットインザドアテクニックの例

日常とビジネスシーンのそれぞれで、フットインザドアテクニックを利用した会話例を見てみます。

日常

休日、夫婦が自宅で過ごしています。スーパーマーケットに行こうとする夫に、妻がフットインザドアテクニックを使って頼み事をしました。

妻:どこに行くの?
夫:1丁目のスーパーに行こうかなって。
妻:なら、その隣のドラッグストアでマスクを買ってきてもらえない?
夫:あぁ、いいよ。
妻:本当に? ありがとう!
夫:ほかに買うものはないよね?
妻:あー……もしよければなんだけど、ついでに3丁目の電気屋さんでUSBケーブルも買ってきてもらえない?
夫:んー、しょうがないなぁ。

1丁目のスーパーマーケットに行こうというとき、いきなり3丁目で買い物するようお願いしたら、遠いからと断られそうですよね。そこで、立ち寄りやすい場所での買い物をお願し、承諾を得たら、離れた場所での買い物も頼むのです。

気をつけてほしいのは、隣の店での買い物という「小さな依頼」を受け入れてもらったとき、報酬を与えないこと。妻が「お礼に、お金をあげるからビールを買っていいよ」などと報酬を提示すれば、夫の心理は「妻のために頼みを聞いた」から「報酬のために頼みを聞いた」へと変化してしまうのです。

そうなると、「3丁目の電気屋で買い物をして」という「大きな依頼」も、タダでは聞いてもらえなくなるでしょう。フットインザドアテクニックを利用するときは、「小さな依頼」と「大きな依頼」のあいだに報酬を挟まないことが大事なのです。

ビジネス

営業や接客の仕事をしていると、お客さんに商品の購入やサービスの契約をすすめる場面があります。そんな場合も、もちろんフットインザドアテクニックが有効です。

店員:いらっしゃいませ! ごゆっくりご覧ください
来客:あ、どうも。

あるキャリアショップにお客さんが来ました。会釈のあと、展示されたスマートフォンを眺め出します。10分後、店員があらためて声をかけました。

店員:機種変更をお考えですか?
来客:はい、今月発売した機種が気になっていて。
店員:では、ぜひご説明させてください。あちらの席へどうぞ。
来客:あ、はい。

このとき、お客さんの心理には一貫性の原理が働いています。入店時に声をかけられたため、「店の商品を見ていってほしいという店員の依頼を受け入れた」と意識しているのです。そのため、「席に着いて話を聞いてほしい」という依頼も受け入れたくなります。

店員:――というサービスがございまして、いまご購入いただければ大変お得になっております。在庫もございますので、すぐにお渡し可能です。
来客:(ほかの機種とも比べてみたいけど……)
店員:いかがでしょうか?
来客:じゃあ……それでお願いします!

商品についての話を聞いたことにより、一貫性の原理がさらに強く働きました。お客さんは「自分は新しい機種に興味がある。そして、新商品についての話を店員からじっくり聞いた」と意識しています。この態度に一貫性をもたせようとすれば、「だから機種変更する」という決定に至るでしょう。

フットインザドアテクニックを使い、店や商品に対して前向きな態度を少しでもとってもらえれば、一貫性の原理によって購入や契約を勝ち取れる可能性が高まるのです。

フットインザドアテクニックの実践3

フットインザドアテクニックを使ってみよう!

では、あなたもフットインザドアテクニックを使ってみましょう。以下の例を、ご自身の場合に置き換えてみてください。

日常

あなたには、行きたい場所があるとします。しかし、ひとりでは心細いため誰か誘いたいのですが、その場所に興味のある人が周囲にいません。

ここでは、カラオケを例にしましょう。カラオケに行きたいけれど、カラオケ好きな人がまわりにいない場合です。しかし、食事などカラオケ以外の用事に付き合ってくれる人さえいれば、フットインザドアテクニックを使って解決できる可能性があります。

あなた:たしか、ラーメン好きだよね? すごくおいしいラーメン屋さんを見つけたから、帰りに食べに行こうよ!
同僚:いいね、行こう!

同僚がラーメン好きだと知っているため、断られる可能性の低い「ラーメン屋」に誘います。そして、ラーメンを食べ終わったらこう切り出すのです。

あなた:あのさ、せっかくだから向かいのカラオケに寄らない? 無理に歌わなくてもいいからさ!
同僚:そうだなぁ。そんなに歌は得意じゃないけど、長い時間でなければいいよ。

最初からカラオケに誘っていたら、同僚は応じてくれなかったでしょう。しかし、同僚の心理に「誘いを受け入れた自分を貫く」という一貫性の原理が働いたため、カラオケにも付き合ってくれたのです。

ビジネス

フットインザドアテクニックを学んだら、ぜひビジネスシーンで使ってみましょう。以下は、飛び込み営業でオフィス向けコーヒーサーバーをすすめる例です。

あなた:10分だけでかまいませんので、お話をさせていただけないでしょうか?
相手:まぁ、10分なら……。
あなた:ありがとうございます。弊社ではオフィス向けコーヒーサーバーを扱っておりまして、コーヒーの補充はもちろん、メンテナンスなどのサポートも手厚くしております。ぜひ御社に導入なさいませんか?
相手:コーヒーには困っていませんので、お金をかける予定は……。
あなた:じつは、3ヶ月の無料お試しキャンペーンを実施中なのですが、まずは3ヶ月、お試しだけでもしていただけませんでしょうか?
相手:無料ですか……。それなら、とりあえず試してみようかな。

まずは話を始めるため、“10分" という受け入れられやすい時間でお願いします。フットインザドアテクニックが成功すれば、あまり時間はかかりませんし、会話のなかで時間を引き伸ばすことも可能です。「30分」「1時間」のように無理なお願いは避けましょう。

商品やサービスにお金を払ってもらうのは簡単ではありません。そこで「無料」という切り札を使い、まずコーヒーサーバーを設置してもらいます。相手の心理に「自分はコーヒーサーバーを導入した」と刻み込まれるでしょう。

そして、無料期間が終わる頃、相手の心理は “自分はコーヒーサーバーを3ヶ月間利用した(ほかの社員に利用させた)" という状態です。一貫性の原理が働き、無料でなくなったからといってコーヒーサーバーを撤去することを嫌がります。「コーヒーサーバーがあることに慣れたから」「社員も喜んでいるから」のように正当化し、契約を継続してくれるでしょう。

あなた:3ヶ月お使いになって、いかがでしたか? よろしければ、継続してご利用いただけませんでしょうか。お得な料金プランもございます。
相手:そうだなぁ。もうコーヒーサーバーがある環境に慣れちゃったから、このまま利用させてもらおうかな。

「コーヒーサーバーを契約してもらう」という大きな要求であっても、フットインザドアテクニックを駆使して小さな要求から始めれば、成功の確率が高まるのです。

フットインザドアテクニックの実践4

フットインザドアテクニックとドアインザフェイステクニックの違い

最後に、フットインザドアテクニックと並べられることの多い「ドアインザフェイステクニック」について解説します。「譲歩的要請法」とも呼ばれる、人間心理を利用した説得法です。

ドアインザフェイステクニックという名称の由来は、「slam the door in the face」。「鼻先でドアを閉める」つまり「門前払い」という意味です。

まず、本題とは異なる「大きな要求」をし、相手に断らせます。そして、譲歩するかのように「では、これならどうでしょう?」と本題を提示。すると、相手の心理に「返報性の原理」が働き、「譲歩してくれたのだから、こちらも譲歩しなくては」という気になって、本題の「小さい要求」を受け入れてくれやすくなるのです。

フットインザドアテクニックとドアインザフェイステクニックは、交渉の相手によって使い分けるのがいいでしょう。たとえば、上司など目上の相手に大きすぎる要求をしては信用を損ないかねませんし、上司から部下には返報性の原理が働きにくいもの。そのため、目上の相手にはフットインザドアテクニックを使うほうが適切だと言えます。

***
フットインザドアテクニックは、多くの人間に共通する心理を利用するため、幅広いシーンで活用できます。説得が得意な人には、無意識にフットインザドアテクニックを使っている人も多いものです。

みなさんも、フットインザドアテクニックを実践し、話を有利に進めてみてください。

(参考)
たちばなエクール|説得の方法
フロンティアコンサルティング|マーケティング心理学とは?『現役の脳科学者』が本当に役立つ15個を厳選して徹底解説【保存版】
オージス総研|第19回 効果的な説得的コミュニケーションのあり方をめぐって(1)-依頼や要請の効果的方略の研究を参考に(1)-
日経Gooday|相手の「YES」を引き出すための交渉術
ITmedia エンタープライズ|転勤をすんなりと受け入れさせられる話し方

【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。

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